オフィスのネットワークはどうなっている?回線から自分の席までの1本道

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「社内のネットが遅いんだけど」と声をかけられて、返す言葉に詰まったことはないでしょうか。

机の下には小さな箱があり、壁にはLANケーブルの差込口が並び、見上げれば天井に白い円盤のような機器が付いています。どれが何をしているのか、説明されないまま何年も使っている方がほとんどです。

実は、オフィスのネットワークは家のネットワークと同じ並びでできています。違うのは、途中に「配る段」がいくつか増えていることだけです。

この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、オフィスのネットワークを回線から自分の席までの1本道としてたどっていきます。

先に、この記事の結論を3つ書いておきます。

  • ①並び回線 → ONU → ルーター → スイッチ → 自分の端末。家の並びに「スイッチ」が挟まっただけです(会社が大きいと、そのスイッチが何段かになります)
  • ②段の数 — 増える段の数は会社の規模で決まります。数十人なら1〜2段、数百人なら3〜4段です
  • ③境目いま実際に困っている方へ。自分で確かめられるのは自分の端末と、自分の席のケーブルまでです。その先は会社の設備で、触ってはいけません

なお、この記事は国土交通省が公開している官庁施設の工事基準と、ネットワーク機器メーカー・通信事業者の公開資料をもとにしています。会社ごとに機器の呼び方は違いますが、並びの考え方はどこでも同じです。

オフィスのネットワークは「回線 → ONU → ルーター → スイッチ → 端末」の1本道

オフィスのネットワークの並び。左から順に、回線、ONU、ルーター、スイッチ、パソコンが一列に置かれ、矢印でつながっているイラスト。

まず、全体の並びから見ていきましょう。オフィスのネットワークは社内ネットワークとも呼ばれます。よくある構成図を1本の線に伸ばすと、次のようになります。

ご家庭の場合、外から来た回線はONU(光回線終端装置)に入り、そこからルーターを通って、パソコンやスマホへ届きます。

オフィスも、ここまではまったく同じです。違うのは、ルーターの先にスイッチという「配る係」が入ることだけです。

水道にたとえると分かりやすいかもしれません。道路の下を通る太い本管が、建物の中で各階に枝分かれし、最後にそれぞれの蛇口へ届く——オフィスのネットワークも、これとまったく同じ形をしています。

これは筆者の思いつきではありません。国土交通省が定めた公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版には、国の庁舎を建てたときにネットワークが正しくつながったかを確かめる試験の手順が書かれていて、その区間の分け方がそのまま並びを表しています。

  • 幹線用スイッチ(コアスイッチ)からスイッチ間において、IPパケットを連続して送信し、受信できること」
  • スイッチから通信コネクタ又は無線LANのアクセスポイント間において、IPパケットを連続して送信し、受信できること」

難しい言葉が並んでいますが、言っていることは単純です。大もとのスイッチ → その先のスイッチ → 壁の差込口や天井のWi-Fi機器、という順に確かめなさい、ということですね。

ここで出てきた「通信コネクタ」が壁にあるLANケーブルの差込口、「無線LANのアクセスポイント」が天井の白い機器です。あなたの席から見えているものが、そのまま試験項目の名前になっているわけです。

上の図は有線でつないでいる場合の並びです。Wi-Fiでつないでいる方の道のりは少しだけ違うので、あとで別に説明します。

ひとつだけ注意があります。この仕様書は国が自分の庁舎を建てるときの決まりであって、民間のオフィスビルがこのとおりに作らなければならないわけではありません。ただ、公共の建物で標準とされている作りなので、目安としては十分に使えます

オフィスのネットワークを支える4つの箱と、その役割

オフィスのネットワークにある4種類の機器を2列2段に並べたイラスト。左上が細いケーブルのささる箱(外とつなぐ)、右上が盾を横に置いた平らな箱(内と外を仕切る)、左下が差込口の並んだ横長の箱(中で配る)、右下が電波の輪を出す円盤(電波にする)。電波の輪が出ているのは円盤だけ。

並びが分かったところで、それぞれの箱が何をしているのかを見ていきましょう。役割は4つだけです。

外とつなぐ箱 — ONUとホームゲートウェイ

いちばん外側にあるのが、回線の入口です。多くのオフィスでは光回線が引き込まれていて、その受け口がONUになります。

NTT東日本の解説は、ONUについて「光信号をパソコンなどの端末で読み取れるよう、デジタル信号に変換する役割を担っています」と説明しています。光を電気に翻訳する係、と考えてください。

同じ解説には「オフィスなどでインターネットを使用する際にはONUの下部にルーターを接続して使用されます」ともあります。つまり、家でやっていることと変わりません。

なお、ONUとルーターの機能が1台にまとまったホームゲートウェイが置かれていることもあります。この場合、箱の数は減りますが、中でやっている仕事は同じです。

ちなみに、オフィスの回線が必ず光とは限りません。拠点どうしを結ぶ専用の回線を引いている会社もあります。入口の箱が何かは、会社が結んだ契約で決まります。

内と外を仕切る箱 — ルーター

次がルーターです。役割はひとことで言えば「社内」と「インターネット」の境目に立つことです。

仕様書はルーターを「IPアドレスによりデータパケットを転送するもの」と定義しています。届け先の住所を見て、社内で済ませるか、外へ出すかを判断している、ということですね。

会社によっては、ルーターの隣にファイアウォールという別の箱が置かれています。仕様書はこれを「転送されるパケットを失うことなく、他のネットワークから不正アクセスを防ぐことができる機能及びアクセスの履歴を残すロギング機能を有するもの」と定めています。

注目したいのは後半です。通信の記録を残すことは、そもそも機器に求められている機能のひとつだということですね。何が記録され、どう扱われるかは会社ごとに違うので、気になる方は自社の規程を確かめてください。

中で配る箱 — スイッチ

そして、オフィスならではの箱がスイッチです。スイッチングハブと呼ばれることもあります。

やっている仕事は、ご家庭で使う数千円のスイッチングハブと同じです。受け取ったデータを、宛先の機器にだけ渡す。それだけです。

違うのは規模です。仕様書は、公共施設に入れるスイッチについて「ポートごとに複数かつ装置全体で1,000以上」のMACアドレスを覚えられることを求めています。MACアドレスは機器につけられた番号のことで、要するに1台で1,000件以上の番号を覚えられる必要があるということです。

もうひとつ、見落とされがちな仕事があります。スイッチが配っているのは、インターネットへ出ていく通信だけではありません。仕様書も、スイッチやルータなどの機器を「端末との接続又は構内情報通信網装置を相互に接続するもの」と定めています。

社内の共有フォルダを開く、複合機やプリンターで印刷する——こうした社内どうしのやりとりの多くは、インターネットへ出ずに社内で折り返しています。「外は見られるのに共有フォルダだけ開けない」ということが起きるのは、この2つが別の道だからですね。

この「社内で折り返している側」——共有フォルダ・社内ポータル・勤怠システムをまとめてイントラネットと呼びます。在宅勤務でVPNが要るのは、こちら側に入るためです。

もうひとつ、家のスイッチにはない機能があります。VLANです。仕様書はこれを「装置間をまたがるグループ化を行う」機能として、スイッチの基本機能に挙げています。

つまり、席が離れていても同じグループにまとめたり、隣どうしでも別のグループに分けたりできるということです。フロアが違う同じ部署をひとまとめにする、といった使い方をします。

電波にする箱 — 無線アクセスポイント

最後が、天井に付いている白い機器です。これは無線LANアクセスポイントといって、有線で届いた通信を電波に変えて飛ばしています。

「電源は取れているのだろうか」と思われたかもしれません。天井裏にコンセントがあるようには見えませんよね。

答えはPoEという仕組みです。LANケーブル1本で、通信と電気の両方を送っています。先ほどの公共建築工事標準仕様書は、1ポートあたりに送れる電力を、イーサネットの規格に沿って次のように分類しています。

1ポートあたりに供給する電力規格呼び名(参考)
15.4W以下ISO/IEC/IEEE 8802-3PoE
30.0W以下同上PoE+
90.0W以下同上PoE++

電力の値を決めているのは国ではなく、イーサネットの国際規格のほうです。仕様書はそれを引いて分類しているだけですね。

どの段の電力を使うかは機器によって違いますが、いずれもLANケーブル1本で送れる範囲です。おかげで、天井にコンセントを増やさずに済むわけですね。同じ仕様書ではIP電話機も、この仕組みで電源を取ることになっています(ACアダプタとの併用も認められています)。

置き場所にも決まりがあります。仕様書は「アクセスポイントは、電波干渉によって通信品質が低下しないように配置を調整する」としています。天井の機器がやけに離れて付いているように見えるなら、それは電波の干渉を避けるために置き場所を調整した結果かもしれません。

自分の席から上流をたどる — 壁のLANポート・島のハブ・天井の白い機器

オフィスの席のまわりにあるものを左から並べたイラスト。差込口が2つ付いた四角いプレート(壁のLANポート)、ケーブルが数本生えた小さな箱(島のハブ)、電波の輪を出す円盤(天井の機器)の3つ。

ここからが本題です。あなたの席から、上流へ向かって順にたどってみましょう。

実際に目で見えるのは、次の3つです。そのあとで、Wi-Fiでつないでいる方の道のりも見ておきましょう。

①壁のLANポート — その先は遠くない

壁や床にあるLANケーブルの差込口は、ふつうLANポートLANコンセントと呼ばれます。仕様書での呼び名は「通信アウトレット」「情報用アウトレット」で、現場では「情報コンセント」と言うこともあります。

この穴の先がどこへ行っているかは、仕様書が定めるケーブルの長さから逆算できます。ここから先も公共の建物についての決まりですが、考え方の目安になります。

仕様書が定めているケーブルの長さ

「フロア配線盤から通信アウトレットまでのケーブル長は、90m以内とする」

「パッチコード(又はジャンパコード)は5m未満とし、パッチコード(又はジャンパコード)、機器コード及びワークエリアコードの長さの合計は10m未満とする」

「フロア配線盤」というのは、その階のケーブルが集まってくる盤のことです。スイッチはたいていここに入っています。

ここで大事なのは90mという上限があること自体です。大きな建物で、地下から全部の席まで1本ずつ引こうとすると、この長さでは届かない席が出てきます。だからフロアごとに配線盤を置いて、そこで折り返すことになります。

あなたの席のLANポートの先にあるのは、遠く離れた場所ではなく、同じ階か、近い階にある扉つきの盤だということですね。90mが縛っているのは「階」ではなく「長さ」なので、小さな建物なら2つの階を1つの盤でまとめていることもあります。

もうひとつ、覚えておくと役に立つ決まりがあります。仕様書は「通信アウトレットには、接続先が認識できるように表示する」と定めています。

壁の穴の脇に貼られた「3F-12」のような番号は、飾りではありません。配線盤のどこにつながっているかを示す住所です。トラブルを人に伝えるとき、この番号を読み上げるだけで話がぐっと早くなります。

ただし、壁に穴があるからといって、必ず生きているとは限りません。使う予定で先に作っておいただけ、という穴もあります。差しても反応がないときは、まずこれを疑ってください。

②机の島にある小さなハブ — もう一度、分けている

次に、机の下や島の端に置かれた小さな箱です。ランプがいくつも並んでチカチカしているあれですね。

これもスイッチングハブです。置かれている理由は単純で、壁の穴の数より、席の数のほうが多いからです。

壁の穴が2つしかない島に4人が座っていれば、そこでもう一度分けるしかありません。こうしてスイッチをつなぎ足していくことをカスケード接続(多段接続)と呼びます。

「そんなに重ねて大丈夫なの?」と思われるかもしれません。パナソニックEWネットワークスは、この質問にはっきり答えています

スイッチングハブは何段まで重ねられるか

Q. スイッチングハブは最大何段までカスケード接続できますか。

A. カスケード接続に規格上の制限はありません。

段数そのものは心配しなくて大丈夫、ということですね。

ただし、会社の島のハブを自分の判断で足すのはやめてください。空いている口どうしを何気なくつなぐとができてしまい、フロア全体の通信が止まることがあります。

家であれば自分が困るだけですが、会社では隣の島も止まります。ハブを増やしたいときは、必ず管理している部署に相談しましょう。

③天井の白い機器 — 線は天井裏を通っている

3つめが、先ほど出てきた無線アクセスポイントです。

ここまで来ると、疑問がひとつ残ります。その機器につながるケーブルは、どこを通っているのでしょうか。

答えは、天井板の裏と、床板の下です。仕様書には「二重天井内配線」「二重床内配線」という項目があり、そこを通すことが前提になっています。オフィスの床が少し高くなっていて、パネルを外せるようになっているのは、このためですね。

なお、そこには電気の配線も走っています。仕様書は床下について「データ伝送用配線と電力用ケーブルは、直接接触しないようセパレータ等により処置を施す」と定めており、天井裏についても強い電流の線と接触しないよう敷設するとしています。通信の線と電気の線は、わざと離して通してあるわけです。

ここまでで、自分の席から回線までが1本につながりました。端末 → 島のハブ → 壁のLANポート → 配線盤 → 大もとのスイッチ → ルーター → ONU → 回線。これが、有線でつないでいる場合の全体像です。

④Wi-Fiでつないでいる人の道のり

「自分は無線だから、この話は関係ないのでは」と思われたかもしれません。ところが、そうでもないのです。

天井のアクセスポイントは、LANケーブルで配線盤につながっています。先ほどのPoEを思い出してください。あの1本のケーブルが、電気と一緒に通信も運んでいます。

つまり、無線の道のりはこうなります。端末 →(電波)→ 天井のアクセスポイント → 配線盤 → 大もとのスイッチ → ルーター → ONU → 回線

電波なのは、あなたと天井のあいだだけです。そこから先は有線に戻り、あとは同じ道を通ります。これが分かると、次の章の切り分けが一気に楽になります。

家のネットワークと、オフィスのネットワークは何が違うのか

家とオフィスのネットワークを上下に並べて比べたイラスト。上の家は箱が3つ、下のオフィスは同じ並びに、差込口の並んだ横長の箱が2つ足されて5つになっている。

ここまで読んで、「思ったより家と変わらないな」と感じた方も多いはずです。実際、そのとおりです。

それでも、決定的に違う点が3つあります。

違い①:人数で「段の数」が決まる

いちばん大きな違いがこれです。会社が大きくなるほど、間に入る段が増えます。

ネットワーク機器メーカーのヤマハは、規模ごとの構成例を公開しています。人数と段の数の関係が、はっきり出ています。

規模従業員・端末の数ヤマハが挙げている構成例
SOHO5〜20名・端末約50台ルーターに、スイッチとアクセスポイントを直接つなぐ
小規模20〜100名・約200台フロアスイッチでまとめる(コアスイッチも置く例が併記されている)
中規模100〜250名・約500台大もとにコアスイッチを置く
大規模250名以上・500台以上コアスイッチの下に、さらに建屋ごとのスイッチを挟む

人数が増えるほど、束ねる係が1段ずつ足されていくのが読み取れます。この表で段を数えると、数十人の会社なら1〜2段、数百人なら3〜4段です。自分の会社の人数を当てはめれば、机の下から回線までにいくつ箱があるかが、だいたい見当がつきます

段が増えるのは、意地悪をしているわけではありません。1台のスイッチに挿せる口の数は決まっているので、人が増えれば束ねる係が必要になる、というだけの話です。

違い②:1本の回線を、全員で分け合っている

2つめは、家では起きにくい問題です。

家であれば、回線を使うのは家族数人です。オフィスでは、同じ1本を数十人から数百人で分け合っています。

ここが「自分は何もしていないのに遅い」が起きる理由です。誰かが大きなファイルを送っていれば、その影響は席が離れていても届きます。

心当たりがあるとすれば、昼休みが明けた直後、全社への更新プログラムが配られている時間、WEB会議がいくつも重なる時間帯あたりです。どれも「1本を分け合っている」ことの当然の結果ですね。

とくに影響が出やすいのが、送る方向の通信です。会議で自分の映像を送る、クラウドへファイルを上げる、といった場面ですね。

違い③:自分では、何も足せない・変えられない

3つめが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

家のネットワークなら、遅ければルーターを買い替えられます。置き場所も変えられます。開通した日に自分で配線した方なら、なおさら勝手が分かるはずです。

しかしオフィスでは、壁から先はすべて会社の設備です。

Wi-Fiの電波が弱いからといって、自分で中継機を持ち込むわけにはいきません。天井のアクセスポイントは、本来は電波が干渉しないように置き場所を調整するものだからです。勝手に電波を足せば、周りの席が巻き添えになります。

なお、この記事が扱っているのはオフィスにいるときの話です。自宅から会社のシステムにつなぐ場合は、この1本道の途中にVPNという別の入口を作る話になり、道のりが変わります。

できることが少ないぶん、「どこまでが自分の範囲か」を知っておく価値が大きいとも言えます。次の章で、その線を引きましょう。

会社のネットが遅い・つながらないとき、どこまでを自分で確かめられるか

自分で確かめられる範囲と会社の設備の境目を示したイラスト。縦の破線をはさんで、左にノートパソコンとLANケーブル、右に扉のついた背の高い配線盤が置かれている。

境目は、はっきりしています。自分の端末と、自分の席のケーブルまでが自分の範囲です。

壁のLANポートは、その境目の目印だと思ってください。自分のケーブルを自分の席の穴に挿し直すのは自分の範囲、穴の向こう側は会社の設備です。島のハブは自分の席にあるように見えますが、隣の人とも共有している設備なので、こちら側ではありません。

つまり、確かめられるのは次の3つだけです。

  • 自分の端末 — 再起動する。機内モードやWi-Fiのオン・オフを一度切り替える
  • 自分の席のケーブルLANケーブルを挿し直す。爪が折れていないか見る
  • つなぎ方を入れ替える — 有線なら無線に、無線なら有線に変えてみる

3つめが、いちばん役に立ちます。有線に変えて直るなら電波の問題、どちらでも直らないなら壁から先の問題——これだけで、原因のある側がほぼ決まります。

ちなみに「差しても反応がない」かどうかは、パソコンの画面に出るネットワークのマークで見ます。有線なら、ケーブルを挿した瞬間にマークが変わるかどうか。変わらなければ、その穴か、そのケーブルか、そのパソコンのどれかです。パソコン側の差込口の脇にあるランプが光るかどうかも手がかりになりますが、ランプの無い機種もあります。

逆に、やってはいけないこともあります。島のハブのケーブルを抜き差しする、空いている口に別のケーブルを挿す、隣の席の穴に自分のケーブルを移す。どれも自分以外を巻き込みます。

その代わりにできることはあります。空いている席や会議室へ移って試すことです。設備には触らずに、別の穴・別のアクセスポイントを試したのと同じ意味になります。

症状から、1本道のどこが怪しいかを絞る

ここまでで、回線から自分の席までの並びが頭に入っているはずです。それを使うと、症状から怪しい区間を絞れます。

症状1本道のどのあたりが怪しいか
自分だけ(隣は使えている)自分の端末・自分のケーブル・自分の席のLANポート。この順に確かめる
島の何人かだけその島のハブか、島と壁をつなぐ1本
フロア全体その階の配線盤の中のスイッチか、そこから上へ向かう線
全社大もとのスイッチより先(ルーター・ONU・回線そのもの)
無線だけ(有線なら平気)端末と天井のアクセスポイントのあいだ=電波の区間
社内のものだけ(外は見られる)壁から先の社内側。共有フォルダやサーバー本体の側も含む
外だけ(社内は平気)ルーターより外。回線の混雑や、契約している回線の側

この表は、原因を言い当てるためのものではありません。直せるのは会社の設備を預かっている人だけです。ただ、どのあたりを見ればよさそうかを添えて頼めれば、話が一往復で済みます

「いつからか」も同じように効きます。今朝から急になら、その前に何かが変わった可能性があります。毎日決まった時間だけなら、混み合う時間帯と重なっていないかを疑えます。ずっと前からなら、そもそも設備が今の使い方に足りていないのかもしれません。

人に頼むときは、この4つを添える

自分の範囲で直らなければ、ここから先は頼むしかありません。そのとき「ネットが遅いです」とだけ伝えると、相手は何も動けません。

次の4つを添えるだけで、切り分けが一気に進みます。

  • 自分だけか、周りもか — 隣の人に一言聞く。ここで話が半分に割れます
  • 有線か、無線か — 入れ替えて試した結果まで伝えます
  • いつからか — 今朝からなのか、毎日この時間なのか
  • 全部か、特定のものだけか — 社内のファイルサーバーだけ遅いのか、外のサイトも遅いのか

ここに、壁のLANポートに貼られた番号を添えられれば完璧です。相手は配線盤のどこを見ればいいかが、その場で分かります。

答えを上の表に当てはめれば、怪しい区間まで一緒に渡せます。「3階の何人かが、今朝から、有線でも無線でも、社内も外も遅いです」——ここまで言えれば、相手はすぐ動けます。

速さを数字にできると、さらに話が早くなります。自分の席と別の階で測って比べれば、それだけで場所の差が示せます。

なお、遅さの正体が「速度」ではなく遅延——つまり反応の鈍さであることもあります。速度を測っても数字は出ているのに、WEB会議だけ調子が悪いといった症状は、こちらを疑ってください。

まとめ

この記事では、オフィスのネットワークがどうなっているのかを、回線から自分の席までの1本道としてたどりました。

あらためて要点をまとめると、次のとおりです。

  • 並びは回線 → ONU → ルーター → スイッチ → 端末。家の並びに「配る係」が挟まっただけ
  • 箱の役割は4つだけ。外とつなぐ・内と外を仕切る・中で配る・電波にする
  • 公共の建物ではケーブルの長さが90m以内と定められており、壁のLANポートの先は同じ階か、近い階の配線盤になる
  • LANポートの番号は住所。公共の建物では、接続先が分かるように表示することが定められている(なお、使われていない穴もある)
  • 間に入る段の数は人数で決まる。数十人なら1〜2段、数百人なら3〜4段
  • Wi-Fiも、電波なのは天井までの数メートルだけ。そこから先は有線に戻って同じ道を通る
  • 自分で確かめられるのは自分の端末と、自分の席のケーブルまで。有線と無線を入れ替えるのがいちばん効く

オフィスのネットワークは、天井裏や床下に隠れているせいで、大がかりで難しいもののように見えます。

でも、順にたどってしまえばただの1本道です。次に「ネットが遅い」と言われたら、自分の席から順に上流をたどってみてください。どこまでが自分の話なのか、すぐに見当がつくはずです。

この記事の主な出典は、国土交通省が公開している公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版(PDF)です。本文で引用した「90m以内」や「通信アウトレットには、接続先が認識できるように表示する」も、すべてこの資料に書かれています。

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