いまこのページを、家のWi-Fiで読んでいるとします。そのとき、あなたの手元の端末はすでにLANの中にいます。
LANは、機器を買ってきて構築する特別なものではなく、ルーターをつないだ時点で家の中にできあがっているものです。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、LANとは何を指す言葉なのか、自分の家ではどこからどこまでがLANなのか、そして「LANは速くて安全」という説明をどこまで信じてよいのかを解説していきます。
目次
LANとは? 建物の中でつながっている範囲

LANとは、Local Area Network(ローカル・エリア・ネットワーク)の略です。日本語では「構内ネットワーク」と呼ばれます。読み方は「ラン」です。
自宅やオフィス、学校など、限られた範囲の中で機器どうしをつないだネットワークのことを指します。
「限られた範囲」というのは、だいたい1つの建物の中だと考えてください。家なら家1軒、会社ならフロアや建物1つぶんです。それを超えて街や国をまたぐ広いネットワークは、LANではなくWAN(広域ネットワーク)と呼び分けます。
自分の家では、どこからどこまでがLANなのか

言葉の意味だけではぼんやりしているので、実物で線を引いてみます。
ルーターより内側が、すべてLANです。
Wi-Fiでつないでいるスマートフォン、パソコン、テレビ、ゲーム機、スマートスピーカー。ケーブルでつないでいるプリンターやレコーダー。これらは全部、同じLANの中にいます。
ルーター自身は、内でも外でもありません。内と外にまたがって置かれ、あいだのやり取りを取り次いでいる機器です。
意外に思われるかもしれませんが、Wi-Fiでつないでいる機器もLANの一部です。「LAN=ケーブルでつなぐもの」という印象がありますが、電波でつないでいるものは無線LANと呼ばれ、こちらもLANです。
一度、家の中でネットにつながっているものを数えてみてください。スマートフォン、パソコン、テレビ、ゲーム機……と数えていくと、思ったより多いはずです。その全部が、1つのLANの中にいます。
そして、そのLANの出口に立っているのがルーターです。ルーターの向こう側から先は、もう自分の持ち物ではありません。
LANを作っている機器は3種類
LANの中には、役割の違う機器が3種類あります。
- ルーター … 外との出入り口。1本の回線を家じゅうで分け合えるようにする
- ハブ(スイッチングハブ) … LANケーブルの差込口を増やす。届いたデータを宛先の機器だけに渡す
- 無線アクセスポイント … Wi-Fiの電波を出す
家庭では、この3つをWi-Fiルーター1台が兼ねていることがほとんどです。「ハブを買った覚えがない」のは、ルーターの背面に並んだLANの穴がその役目をしているからです。差込口が足りなくなったときに、はじめてハブを足すことになります。
LANがあると何ができるのか

LANを作る目的は、大きく2つに分けられます。
① 1本の回線を、家じゅうの機器で分け合える
ふだんいちばん恩恵を受けているのは、こちらです。
契約している回線は1本しかありません。それなのに、家族4人がそれぞれのスマートフォンで別々の動画を見られます。LANが1本の回線を分け合う仕組みを作っているからです。
この分け合いを実際に取り仕切っているのはルーターで、機器ごとに家の中だけで通じる番号(プライベートIPアドレス)を配り、外とのやり取りを取り次いでいます。
② 機器どうしが、直接やり取りできる
もう1つは、インターネットを経由せずに、家の中の機器どうしでやり取りできることです。
- パソコンやスマートフォンから、離れた部屋のプリンターで印刷する
- スマートフォンの画面や動画を、テレビに映す
- レコーダーで録った番組を、別の部屋のテレビやタブレットで見る
- 家族で使うファイル置き場(NAS)に、写真をまとめて保管する
どれも、同じLANの中にいる機器どうしだからできることです。外出先のスマートフォンから家のプリンターで印刷できないのは、そのスマートフォンが家のLANの外にいるからです。
有線LANと無線LAN、2つのつなぎ方

LANの中での機器のつなぎ方は、2種類あります。どちらか一方ではなく、1つの家の中に両方が混ざっているのがふつうです。
| 有線LAN | 無線LAN(Wi-Fi) | |
|---|---|---|
| つなぐもの | LANケーブル | 電波 |
| 向いている機器 | 動かさないもの(デスクトップパソコン、テレビ、ゲーム機) | 持ち歩くもの(スマートフォン、ノートパソコン、タブレット) |
| 置き場所 | ケーブルが届く範囲にかぎられる | 電波が届けばどこでもよい |
| 通信の安定 | まわりの影響を受けにくい | 壁や他の電波の影響を受けることがある |
有線LAN
LANケーブルで機器とルーターをつなぐ方法です。線を挿す手間はありますが、途中に電波の乱れが入らないぶん、通信が安定しやすくなります。
ただし、ケーブルなら必ず速いというわけではありません。古い規格のケーブルや、古い機器の差込口が混じっていると、そこで頭打ちになります。
無線LAN(Wi-Fi)
電波で機器とルーターをつなぐ方法です。線が要らないので置き場所を選ばず、いまは家庭のLANの大部分がこちらになっています。
そのぶん、電波が届く範囲では誰でも受け取れる状態にあります。だからWi-Fiにはパスワード(暗号化キー)が設定されていて、知らない人がつなげないようになっています。
「LANは速くて安全」をそのまま受け取らない

LANの説明では、たいてい「高速で安定していて、セキュリティも高い」と書かれています。当サイトでは、この言い方をおすすめしていません。どちらも条件つきだからです。
速さは、いちばん遅いところで決まる
かつては外につながる回線が細かったので、家の中のほうが速いのが当たり前でした。その時代の説明が、いまも残っています。
現在は、外の回線が1Gbps(1000Mbps)という家も珍しくありません。いっぽうで、家の中の有線LANが100Mbpsで止まっていることがあります。古いケーブルや古い差込口が1か所でも混じっていると、そこが上限になるからです。
つまり「LANだから速い」とは限らず、速さは経路のいちばん遅いところで決まります。遅いと感じたときに家の中を疑えるかどうかで、原因にたどり着く早さが変わります。
守っているのは、LANではなくルーター
「LANの中だから安全」という言い方も、正確ではありません。
たしかに、家の中の機器は外から直接名指しされにくくなっています。ただしそれは、LANを作ったからではありません。IPv4という従来の方式で外に出ている場合、ルーターがアドレスを付け替えている(NATと呼ばれる仕組み)ことの副産物としてそうなっています。しかも守っているのは通信の向きだけで、中身の良し悪しまでは見ていません。
新しいIPv6で外に出ている家では、この付け替えが起きないことがあります。その場合は別の仕組みが守りを受け持つので、「LANの中だから安全」とは、なおさら言えません。
自分から外へ出ていく通信は、ふつうに通ります。だからLANの中にいても、あやしい添付ファイルを開けば被害は起きますし、家族の1台がウイルスに感染すれば、同じLANの中にいる他の機器が狙われることもあります。
LANは、速さと安全を約束する仕組みではありません。
機器どうしをつないで、1本の回線を分け合うための土台です。速さは使っている機材で決まり、守りはルーターやセキュリティ対策ソフトが受け持ちます。
まとめ

- LANは建物の中でつながっている範囲のネットワーク。ルーターより内側が全部LAN
- Wi-Fiでつないでいる機器もLANの一部(無線LAN)
- できることは2つ。1本の回線を分け合うことと、機器どうしが直接やり取りすること
- 「LANは速い」は条件つき。速さは経路のいちばん遅い場所で決まる
- 「LANは安全」も条件つき。守っているのはルーターの仕組みであって、LANそのものではない
- LANを作っているのはルーター・ハブ・無線アクセスポイントの3種類。家庭ではWi-Fiルーター1台が兼ねている
LANという言葉を覚えること自体が目的ではありません。自分の家のどこまでが自分の領域なのかが分かると、調子が悪いときに手の出しどころが見えてきます。










