PoE給電とは?仕組みとデメリット、導入前に確かめる4つのこと

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オフィスの天井に、白くて丸い機器が付いているのを見たことはありませんか。Wi-Fiの電波を出しているアクセスポイントです。

あの位置に、電源のコンセントはありません。それでも動いているのは、LANケーブル1本で、通信と電気の両方を届けているからです。この仕組みを PoE(ピーオーイー)と呼びます。

この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、PoEがどんな仕組みで、どこで使われていて、使うときに何に気をつけるのかを解説していきます。

PoEとは? LANケーブル1本で電気も送る仕組み

LANケーブルの差込口のアイコンに、稲妻のマークが重なっている図(PoEとはの節の扉絵)

PoE は Power over Ethernet の略で、日本語にすると「イーサネットに電力を乗せる」という意味です。

ふつう、ネットワーク機器を設置するには2本の線が要ります。通信のためのLANケーブルと、電気のための電源ケーブルです。PoE なら、LANケーブル1本で両方をまかなえます。

PoEに必要な2つの機器

電気を送る側 … PoE対応のスイッチングハブ、または「PoEインジェクター」という機器

電気を受ける側 … PoE対応の無線アクセスポイント、ネットワークカメラ、IP電話機など

両方が対応していないと使えません。片方だけがPoE対応でも、電気は流れません(通信はふつうにできます)。

電気を流すといっても、特別なケーブルは要りません。ふだん使っているLANケーブルの、中の線を使って送っています。どの線の組み合わせを使うかには2通りの方式がありますが、機器どうしが自動で合わせるので、使う側が意識することはありません。

PoEはどこで使われているのか

白い人形が2体、青とピンクのLANケーブルをそれぞれ引いているイラスト(使われている場所の節の扉絵)

PoE が向いているのは、コンセントを用意しにくい場所に機器を置きたいときです。

  • 天井の無線アクセスポイント … オフィスや店舗でいちばんよく見る例
  • 防犯カメラ・ネットワークカメラ … 屋外の壁や駐車場の柱など
  • IP電話機 … 机の上の電源タップを1つ減らせる
  • デジタルサイネージ … 電源工事のできない壁面など

いずれも「電気工事をせずに機器を増やせる」ことが決め手になっています。電源ケーブルが不要になるぶん、配線も減ります。

いっぽう家庭ではあまり出番がありません。家庭用のWi-Fiルーターはコンセントのある場所に置くのがふつうで、PoE対応のハブも一般向けにはあまり売られていないためです。会社で見かける仕組み、と考えておけば足ります。

PoEの規格 — 送れる電力は規格で決まる

両端にコネクタの付いたオレンジ色のLANケーブルが1本、輪を描いているイラスト(規格の節の扉絵)

PoE には、送れる電力の大きさによって規格が分かれています。機器の箱や仕様表には、この規格名か「PoE+」のような呼び名が書かれています。

規格呼び名送る側の最大受ける機器が使える電力
IEEE 802.3afPoE(タイプ1)15.4W約12.95W
IEEE 802.3atPoE+(タイプ2)30W25.5W
IEEE 802.3btPoE++(タイプ3)60W51W
IEEE 802.3btPoE++(タイプ4)90W71.3W

PoE と PoE+ の数値は、ネットワーク機器メーカーのパナソニックEWネットワークスによるPoE規格の解説(2026年8月15日確認)から引きました。同社は 802.3af について「1ポートあたり最大15.4Wの電力供給が可能で、実際に受電機器が利用できる電力は約12.95Wです」と書いています。

PoE++(802.3bt)の数値は、資料によって食い違います。「タイプ4は最大100W」と書かれていることがありますが、規格の上限は送る側90W・受ける機器71.3Wです。当サイトでは、規格の内容を解説した記事(「4ペアでPSE最大90W、PD最大71.3W」)にそろえています。

オフィスの設計で使われる公共建築工事標準仕様書も、PoE++ を「90.0W以下」として分類しています(この仕様書についてはオフィスのネットワークの記事で扱っています)。

表を見るときの注意

「送る側の最大」と「受ける機器が使える電力」は別の数字です。ケーブルを通るあいだに一部が熱として失われるためで、機器の必要電力と比べるときは右側の数字を見ます。

カタログに「最大◯W」とだけ書かれているときは、どちらの数字かを確かめてください。

PoEのデメリットと、使う前に確かめること

便利な仕組みですが、制約もあります。導入を検討するときは、次の点を先に確かめてください。

PoEのデメリット

① 機器が高くなる … PoE対応のスイッチングハブは、同じポート数の非対応品より高価です

② 距離の上限がある … PoE も通常の有線LANと同じく1本100mまで。それを超えるなら中継する機器(PoEエクステンダー)が要ります

③ 送れる電力に上限がある … 消費電力の大きい機器は、規格が合っていないと動きません

④ ハブ全体の合計にも上限がある … 1ポートずつの上限とは別に、ハブが同時に供給できる電力の合計が決まっています。全ポートに最大電力を送れるとは限りません

⑤ 熱を持つ … 電気を流すぶんケーブルも機器も発熱します。何十本もまとめて束ねる配線では、熱がこもらないように設計する必要があります

④は見落としやすいところです。たとえば8ポートすべてにカメラをつなぐつもりでも、ハブの合計値が足りなければ、後からつないだ機器が動きません。カタログでは「総給電電力」「PoE給電能力」といった項目に書かれています。

100mを超えるときは「PoEエクステンダー」

②の距離の上限を延ばす機器が PoEエクステンダー です。あいだに挟むと、そこから先へさらに100m延ばせます。

便利なのは、この機器自身も、送られてきた電気で動くことです。中継地点にコンセントを用意する必要がありません。段数を重ねればさらに延ばせる製品もあります。

ただし、中継するたびに、その先で使える電力は減ります。エクステンダー自身が動くぶんを消費するためです。カメラを遠くに置きたいときは、届く距離だけでなく、届いた先で足りるかも確かめてください。

導入前に確かめる4つ
  • つなぐ機器がPoEで受電できるか(対応していない機器には電気を送れない)
  • その機器が必要とする電力に、規格が足りている
  • ハブの合計の給電能力が、つなぐ台数ぶん足りているか
  • ケーブルの長さが100m以内

まとめ

  • PoEは、LANケーブル1本で通信と電気の両方を送る仕組み。送る側と受ける側の両方が対応している必要がある
  • 使いどころはコンセントを用意しにくい場所。天井のアクセスポイント、防犯カメラ、IP電話機など。家庭では出番が少ない
  • 規格は PoE(15.4W)/PoE+(30W)/PoE++(60W・90W)。⚠ 受ける機器が使える電力は、これより小さい(12.95W/25.5W/51W/71.3W)
  • 制約はコスト・100mの距離・電力の上限・ハブ全体の合計・発熱の5つ

天井や壁で静かに動いている機器の多くが、この仕組みで電気をもらっています。「電源が無いのに、なぜ動いているのか」——その答えがPoEです。

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