ルーターの説明書や契約の書類に、「LAN」と「WAN」という2つの言葉が並んで出てきます。
どちらもネットワークを指す言葉なのに、なぜ分けて呼ぶのでしょうか。
この2つを分ける線は、実はルーターの背面にある穴の並びとして、目に見える形で存在しています。そして、その線の内側と外側では「困ったときに誰に言えばいいか」が変わります。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、LANとWANの境目がどこにあるのか、そして境目の内と外で何が変わるのかを解説していきます。
目次
LANとWANの違いは「誰が用意して、誰が直すか」

先に結論から書きます。
LANは、自分(または会社)が用意して、自分で直す範囲のネットワークです。
WANは、通信事業者が用意して、事業者が直す範囲のネットワークです。
その境目に置かれているのがルーターです。
多くの解説では、この2つを「狭い範囲か、広い範囲か」で説明します。それも間違いではありません。
ただ、範囲の広さを知っても、読者の側でできることは増えません。「どちらの側の話なのか」が分かると、次にすることが変わります。自分で確かめられるのか、それとも問い合わせる相手がいるのか、という違いです。
この記事は、その線引きを中心に説明していきます。
ルーターの内側(LAN)は、自分の領域

LAN(Local Area Network)は、自宅やオフィスなど建物の中でつながっているネットワークのことです。
この記事で大事なのは、範囲よりも持ち主のほうです。LANの中にあるものは、基本的に自分の側で用意したものです。パソコンもWi-Fiルーターもケーブルも、自分で買ってつなぎました。だから、調子が悪ければ自分で挿し直せますし、買い替えることもできます。
会社であれば、用意したのは情報システムの担当者です。持ち主が自分でなくても、頼む相手が社内にいるという点は変わりません。小さな会社で担当者がいない場合は、その役を自分が引き受けることになります。
LANが何を指すのか、家のどこまでがLANなのかは、こちらでくわしく扱っています。
ルーターの外側(WAN)は、事業者の領域

WAN(Wide Area Network)は、離れた場所にあるネットワークどうしを結ぶ、建物の外に広がるネットワークです。毎日使っているインターネットは、その中でいちばん大きなものにあたります。
こちらは持ち主が違います。電柱の上の線も、道路の下を通る線も、その先の設備も、通信事業者のものです。自分で触ることはできませんし、触る必要もありません。
家の中まで入ってきている線も、例外ではありません。壁の光コンセントは、埋め込まれていても回線を提供している会社の持ち物です。そこにつながる光回線終端装置(ONU)も、契約している事業者から借りているものです。
LANとWANの違いを表で見る
2つの違いを並べると、次のようになります。
| 項目 | LAN | WAN |
|---|---|---|
| 範囲 | 建物の中(自宅・オフィスなど) | 建物の外(街から街、国から国へ) |
| 用意する人 | 自分(会社なら情報システムの担当者) | 通信事業者 |
| 直す人 | 自分。機器の挿し直し・買い替えができる | 通信事業者。こちらからは問い合わせる |
| つなぐもの | LANケーブル、Wi-Fiの電波 | 光ファイバー、携帯の電波など |
| 主な機器 | ルーター、ハブ(スイッチ)、無線アクセスポイント | 光コンセント、ONU、事業者の交換設備 |
| 住所(IPアドレス) | プライベートIPアドレス(家の中だけで通じる) | グローバルIPアドレス(世界で1つ) |
| お金の払い方 | 機器を買うときに一度だけ(下記の例外あり) | 毎月の利用料 |
お金の行には例外があります。LAN側の機器にも、借りているものが混じることがあるからです。回線事業者から貸し出されるホームゲートウェイはルーターの働きも兼ねていますし、機種によってはWi-Fiを使うために月額のカードを追加する必要があります。この場合、LAN側にも毎月の支払いが発生し、買い替えもできません。
ここに「速度」と「セキュリティ」の行が無いことを、不思議に思われたかもしれません。よく見かける表では、LANは速くて安全、WANは遅くて危険、と書かれているからです。
当サイトでは、この2つを表に入れていません。どちらも条件つきで、LANとWANのどちらの側かでは決まらないからです。
速さは経路のいちばん遅いところで決まるので、外側か内側かでは決まりません。1Gbpsの光回線を契約していても、家の中の有線LANが100Mbpsで止まっていることがあります。
安全のほうも、守っているのはLANという仕組みではなくルーターの働きです。どちらも詳しくはLANの記事で扱っています。
LANとWANの境目はどこにあるのか

ここまで「境目」と書いてきましたが、それは頭の中だけの区切りではありません。ルーターの背面を見ると、実物として確かめられます。
ルーターの背面には、LANケーブルを挿す四角い穴が並んでいます。そのうち1つには「WAN」または「INTERNET」と書かれ、残りには「LAN」と書かれています。
この2種類の穴の名前が、そのままLANとWANの区切りになっています。穴の名前は、その先にどちらが広がっているかを表しているということです。
正確にいえば、境目そのものはルーターの中にあります。背面の穴は、その境目が外から見える形になったものだと考えてください。
WAN(INTERNET)と書かれた穴 … ここから先が事業者の領域。ONUや光コンセントへつながる
LANと書かれた穴 … ここから先が自分の領域。パソコン、テレビ、ハブなどをつなぐ
つまり、ルーターは2つの世界にまたがって置かれている機器です。片足を事業者の側に、もう片足を自分の側に置いて、あいだのやり取りを取り次いでいます。
このように、種類の違うネットワークの境目に立って出入り口の役割を果たす機器を「ゲートウェイ」と呼びます。ルーターはゲートウェイの一種です。
どの穴がどちらなのかを実物で見分ける手順は、回線をつなぐときの記事にまとめてあります。機器によって書かれている文字が違うことや、光コードがささる箱には「WAN」の穴が無いことまで扱っています。
なお、ホームルーターやモバイルルーターのように、WAN側に線を挿さない機器もあります。この場合は外とのやり取りが携帯電話の電波になっているだけで、境目がルーターの中にあるという点は変わりません。
そのぶん、外側の様子は見えにくくなります。線をたどって確かめることができないからです。
つながらないとき、LAN側とWAN側のどちらを疑うか
境目が分かると、トラブルのときに調べる場所を絞れます。
手がかりは「何台がつながらないか」です。
| 症状 | 疑うところ | できること |
|---|---|---|
| 自分の1台だけつながらない | LAN側(その1台か、そこまでの経路) | ケーブルの挿し直し、Wi-Fiのつなぎ直し、その機器の再起動 |
| 家じゅうがつながらない(家庭) | ルーターか、その外側(WAN側) | 事業者の障害情報・工事情報を確認する |
| 部署やフロアだけつながらない(会社) | そこまでの配線やスイッチ=会社のLAN側 | 情報システムの担当者に、どの範囲がだめかを伝える |
| 時々つながらなくなり、しばらくすると戻る | この表だけでは決まらない | 起きた時刻と、そのとき何台がだめだったかを控えておく |
| 特定のサイトだけ開かない | どちらでもなく、相手側のことが多い | 別の機器でも同じか試す |
「1台だけ」ならLAN側なので、自分の手で試せることが残っています。全員がだめなら、まず「どの範囲までがだめか」を確かめてください。会社で部署だけが落ちているなら、外の回線ではなくその部署までの配線やスイッチが怪しく、これも会社の中の話です。
3行目の「時々つながらなくなる」は、その場では切り分けられません。起きた時刻と、そのとき何台がだめだったかを控えておくと、あとで範囲が見えてきます。
なお、機器のランプで判断したくなりますが、ランプの名前も色も機種ごとに違います。同じ色が別のことを表す機器もあるので、当サイトでは判定の手がかりに使っていません。手元の機器の取扱説明書で確かめてください。
この切り分けができるだけで、待ち時間はずいぶん変わります。自分で直せない場所を1時間いじっても、状況は良くならないからです。
まとめ
LANとWANの違いを、境目という切り口で見てきました。
- LANは建物の中のネットワーク。自分で用意して、自分で直せる
- WANは建物の外のネットワーク。通信事業者が用意して、事業者が直す
- 境目はルーターの中にあり、背面の「WAN」「INTERNET」と書かれた穴として外から見える
- よくある表の「速い・安全」は、LANとWANのどちらの側かでは決まらない
- つながらないときは「どの範囲までがだめか」で、どちらの側かを絞れる
2つの言葉を覚えること自体が目的ではありません。目の前の不調が、自分の手の届く側にあるのかどうか。それが分かることが、この区別を知る値打ちです。







