遅延(レイテンシ)とは?回線が速いのに重い理由をわかりやすく解説

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オンライン会議で、相手と話し出すタイミングがぶつかってしまう。画面の向こうの返事が、なんとなくワンテンポ遅れて聞こえる。

気になって速度テストをしてみたら、数字は十分に出ていた——そんな経験はないでしょうか。

実は、ネットワークの「速い・遅い」には2つのものさしがあります。ひとつは速度テストに出る回線の速度、もうひとつが遅延(レイテンシ)です。

この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、遅延とは何か、どこで生まれるのか、そして自分の数字が大丈夫なのかを判断する方法までを解説していきます。

先に結論だけ書いておきます。

  • 回線の速度(Mbps)を上げても、遅延はほとんど減りません
  • 相手が遠いほど距離の占める割合が大きくなり、その部分だけは誰にも縮められません
  • 速度テストに出る数字と、国際規格が示す目安は別物です。読み替えれば、数十ミリ秒は十分なことがほとんどです

ネットワークの遅延(レイテンシ)とは?

速度と遅延の違いを表した図解。速度は道路の幅、遅延は目的地までの距離にあたる。

遅延とは、データを送り出してから相手に届く(そして返事が返ってくる)までにかかる時間のことです。

英語ではlatency(レイテンシ)と呼びます。速度テストの結果に「レイテンシ」と出てくるのが、まさにこの値です。

単位はミリ秒(ms)。1ミリ秒は1000分の1秒です。数字が小さいほど良いと覚えてください。

回線の速度と混同しやすいのですが、この2つは測っているものがまったく違います。

 何を測っているか単位
速度1秒間にどれだけの量を運べるかMbps
遅延ひとつのデータが往復するのにかかる時間ms

速度テストに出る「レイテンシ」も、pingが表示する数字も、この往復にかかる時間です。呼び方が違うだけで、同じものだと考えて構いません。

イメージとしては、速度が道路の幅、遅延が目的地までの距離にあたります。次の章でくわしく見ていきましょう。

速度の単位についてはbpsの記事でくわしく解説しています。

回線を速くしても遅延は減らない

道路を広げても距離は縮まらないことを示した図解。車線を増やしても目的地までの時間は変わらない。

「速度」は道路の幅、「遅延」は目的地までの距離

インターネット回線は、よく道路にたとえられます。回線の速度は道路の幅、つまり何車線あるかにあたります。

車線が多ければ、一度にたくさんの車を通せます。大きなファイルのダウンロードや、家族が同時に動画を見るときに効いてくるのはこちらです。

いっぽう遅延は、目的地までの距離にあたります。

ここで想像してみてください。東京から大阪まで走るとき、道路を2車線から8車線に広げても、大阪が近づくわけではありません

回線を1Gbpsのプランに変えても同じです。運べる量は増えますが、往復にかかる時間はほとんど変わりません。

動画は平気なのに、WEB会議だけ重くなる理由

「動画はきれいに見られるのに、会議だけカクつく」というのも、よくある食い違いです。

これは、動画が遅延に強いからです。

動画を見るとき、私たちの端末は先に数秒ぶんをためこんでから再生しています。これをバッファと呼びます。バケツに水を貯めてから流すようなものです。

だから到着が多少遅れても、視聴者は気づきません。

ところが会話はためこめません。相手の返事を待っているのですから、貯めた時点でそれは遅れそのものになります。

つまり、動画が見られることは、会議が快適なことの証明にはならないのです。同じ回線でも、遅延が効く場面と効かない場面があります。

遅延はどこで生まれるのか

遅延が生まれる4つの場所。相手までの距離、通り抜ける機器の数、混雑による順番待ち、無線の区間。

遅延はひとつの原因で決まるものではなく、いくつかの要素が積み上がったものです。順に見ていきましょう。

① 距離 — 光ファイバーの中でも光は本気を出せない

相手が遠いほど効いてくるのが距離です。そして、この部分だけは誰にも縮められません。

国際的な通信規格を決めているITU-T(国際電気通信連合の部門)は、ネットワークを設計するときの目安として、光ファイバーの伝送を1kmあたり5マイクロ秒という値で示しています。1マイクロ秒は100万分の1秒です。

これは速さに直すと秒速20万km。真空中の光の速さ(秒速およそ30万km)の3分の2ほどしかありません。ガラスの中では、光も本気の速さでは進めないのです。

この数字で計算すると、往復にかかる時間はこうなります。

区間おおよその距離往復にかかる時間
東京 ⇔ 大阪約400km約4ミリ秒
東京 ⇔ ニューヨーク約11,000km約110ミリ秒

しかも、これはこれ以上は速くならないという下限です。海底ケーブルは地図の上を一直線に敷かれているわけではないので、実際にはもう少しかかります。

海外のサーバーを使うサービスが、どうしても国内より反応が鈍いのはこのためです。

ただし、あわてる必要はありません。ニューヨークまでの往復110ミリ秒は、片道に直せば55ミリ秒です。あとで出てくる国際規格の目安(片道150ミリ秒)には収まっています

② 通り抜ける機器の数だけ増える

データはまっすぐ相手に飛んでいくわけではありません。途中にあるルーターが、パケットの宛先を読んで次に渡す、という中継を何度も繰り返しています。

宅配便が営業所を経由するのと同じで、1か所ごとに仕分けの時間がかかります。

1台あたりはごくわずかですが、経路には十数台が並ぶこともあります。何台を経由しているかはtracertというコマンドで見ることができます。

③ 混雑すると順番待ちが起きる

回線が混んでくると、機器の中で順番待ちの行列ができます。

ここが、速度と遅延がいちばん強くつながる場所です。道路の幅が足りずに渋滞すれば、距離が同じでも到着は遅れます。

「夜になると重い」「家族が動画を見ると会議が乱れる」というのは、たいていこの行列が原因です。

そしてここは、回線を太くすると効く可能性がある唯一の場所でもあります。自分が当てはまるかどうかは、次の2つで見分けられます。

  • 重い時間帯と、空いている時間帯で測って比べる — 夜だけ大きくなるなら混雑が疑わしい
  • 大きなダウンロードを流しながら測る — 数字が跳ね上がるなら、回線が埋まったときに遅延が出るということ

逆に朝も夜も同じ数字なら、混雑ではありません。距離や経路の側なので、プランを上げても変わらないと考えてよいでしょう。

音声や映像を先に通すQoSという機能が役に立つのも、まさにこの場面です。行列に割り込みの権利を与える仕組み、と考えるとわかりやすいでしょう。

④ Wi-Fiは「ゆらぎ(ジッター)」が出やすい

Wi-Fiは電波を共有して使うため、同時に話さないよう順番を譲り合っています。有線に比べて遅延が増えやすく、しかも測るたびに値がばらつきます

このゆらぎを、専門用語ではジッターと呼びます。平均は同じでも、ときどき大きく遅れる回線のほうが、会話は聞き取りにくくなります。

テザリングやモバイルルーターは、通る区間がさらに増えるぶん、ゆらぎも大きくなりやすくなります。

大事な会議の前だけ有線でつなぐと安定するのは、この差によるものです。

遅延の目安は? 国際規格が決めている

遅延の目安。国際規格ITU-T G.114は、口から耳までの片道150ミリ秒より下ならほとんどの用途で問題にならないとしている。

「15ミリ秒以下が理想」といった目安を見て、自分の数字と比べて不安になった方もいるかもしれません。

ただ、こうした目安はどこから来た数字なのかが示されていないことがほとんどです。

そこで、根拠のはっきりしたものさしを1つ紹介します。ITU-Tが定めたG.114という勧告です。電話の品質を保つために、どれだけの遅れまでなら許されるかを決めたものです。

  • 片道150ミリ秒より下なら、音声でもそれ以外でも、ほとんどのアプリで遅れを感じさせない
  • 片道400ミリ秒を超えないことが勧告されている(ネットワークを設計するうえでの上限)
  • ただし反応の速さを競う用途(ビデオ会議や対戦ゲームなど)は、100ミリ秒を下回る遅れでも影響を受けることがあるとも書かれている

2003年の勧告ですが、いまも通信機器やネットワークを設計するときの基準として使われ続けています。

ここで注意したいのが、この150ミリ秒と、速度テストに出る数字は同じものではないということです。

 測っている範囲向き
G.114の150ミリ秒口から耳まで(機材の処理も含む)片道
速度テスト・pingの数字ネットワークだけ往復

読み替えてみましょう。ping(ピング)の結果が往復40ミリ秒だったとします。片道に直すと、おおよそ20ミリ秒です。

ここにマイクの取り込みや音声の圧縮といった機材側の処理が乗りますが、それでも150ミリ秒まではかなりの余裕があります。

つまり数十ミリ秒という数字は、それだけで会議が重くなる原因にはなりません。まずは安心してください。

むしろ体感を悪くしているのは、平均値よりもゆらぎ(ジッター)データの取りこぼしのほうです。

取りこぼしはパケットロスと呼ばれ、運んでいたパケットが途中で失われることを指します。音声なら、その一瞬が丸ごと欠けて聞こえます。次の章で、この2つを見分ける方法を説明します。

自分の遅延を測って原因を切り分ける

pingで切り分ける手順。まず家のルーターまで測り、次にインターネットの先まで測って差を見る。

いちばん手軽なのは速度テストです。結果に「レイテンシ」や「ping」として表示されます。

もう一歩踏み込んで、家の中とその外のどちらに原因があるかを切り分けるには、pingコマンドを使います。

  1. STEP

    家のルーターまでを測る

    コマンドプロンプトで、ルーターのアドレス(多くは192.168.1.1や192.168.0.1)にpingを実行します。有線なら1〜数ミリ秒、Wi-Fiなら10ミリ秒台まではよくある範囲です。アドレスが違うときはipconfigの「デフォルト ゲートウェイ」で確認できます。

  2. STEP

    インターネットの先まで測る

    次に、外にあるサーバーへ実行します。ここでは公開されているDNSサーバー(8.8.8.8)を使います。

  3. STEP

    2つの差を見る

    ルーターまでで既に数十ミリ秒あるなら家の中(Wi-Fiや機器)、ルーターまでは数ミリ秒なのに外で100ミリ秒を超えるなら、回線から向こうが原因です。

外まで測るときのコマンドは次のとおりです。

遅延を測るpingコマンド
ping 8.8.8.8

筆者の環境で実行した結果です。

>ping 8.8.8.8
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=117
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=117
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=117
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =8ms TTL=117
8.8.8.8 の ping 統計:
  パケット数: 送信 = 4、受信 = 4、損失 = 0 (0% の損失)、
ラウンド トリップの概算時間 (ミリ秒):
  最小 = 8ms、最大 = 8ms、平均 = 8ms

ここで見るのは平均だけではありません。次の3つを合わせて見てください。

  • 損失が0%か — 何度測っても0%にならないなら、遅延より先にこちらが問題です
  • 最小と最大の開き(ゆらぎ) — 数ミリ秒なら気にしなくて構いません。30ミリ秒以上ひらくようなら、平均が小さくても会話は聞き取りにくくなります
  • 「要求がタイムアウトしました」が混ざらないか — 混ざるなら電波か機器を疑います

ただし既定の4回では、ときどき起きるゆらぎを捕まえられません。会議が重いと感じるなら、回数を増やして測ってください。

20回測ってゆらぎを見る
ping -n 20 8.8.8.8

筆者の環境では、20回に増やすと最大が11ミリ秒になりました(平均は8ミリ秒のまま)。3ミリ秒の開きなので、問題のない範囲です。

ちなみに、同じ環境から国内の有名サイトへ測ると17ミリ秒でした。8ミリ秒は片道4ミリ秒、距離に直せば800km分しかありませんから、どちらも国内から返ってきています

それでも2倍の差がつくのは、通る経路や途中の機器が違うからです。遅延は距離だけでは決まらないという、良い例だと思います。

数字が大きかったときに試す価値があるのは、次の3つです。

  • パソコンを有線でつなぐ — ゆらぎがはっきり減ります
  • 同時に使っているものを止める — 大きなダウンロードや動画は行列を作ります
  • イヤホンを有線に替えてみる — ワイヤレスの場合、機材側の処理そのものが遅れを生んでいることがあります

3つ目は見落としやすいところです。ワイヤレスイヤホンの遅れはコーデック(音の圧縮方式)によって変わり、回線とは別のところで起きています。

ここまで測っても直らないときは、社内の情報システム担当や回線事業者に相談してください。そのとき平均・最小と最大の開き・損失の3つを伝えると、話が早く進みます。

まとめ

この記事では、ネットワークの遅延(レイテンシ)について、その正体から測り方までを解説しました。

あらためて要点をまとめると、次のとおりです。

  • 遅延は往復にかかる時間。速度(Mbps)とは別のものさし
  • 道路を広げても距離は縮まらない。プランを上げても遅延はほとんど減らない
  • 遅延は距離・機器の数・混雑・無線が積み上がったもの
  • 国際規格では片道150ミリ秒より下なら遅れを感じさせないとされている(速度テストの数字は往復なので、半分にして比べる)
  • 数字は平均だけでなく、ゆらぎ(最小と最大の開き)と損失を見る

速度テストの数字が十分なのに重いと感じたら、疑う先を変えてみてください。原因は道路の広さではなく、距離や行列のほうにあるかもしれません。

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