動画を見ていたら、画面の真ん中で丸いマークがくるくる回って止まってしまった。さっきまできれいだった画面が、急に粗くなった。そんな経験はありませんか?
「速度テストでは十分な数字が出ているのに、なんで止まるの?」「ライブ配信のときだけ止まる気がする…」
実は、動画は届いたそばから映しているのではなく、先に少し「ためてから」再生しています。動画が止まるのは、ためておいた分が尽きたときです。画質が勝手に落ちるのも、止まらないようにするための仕組みです。
そして YouTube のライブ配信では、この「ためる量」と「遅れ」が引き換えになっています。遅れを縮めた配信ほど、ためる量が少なくなり、止まりやすくなります。ライブだけ止まる、という人に関わる話で、YouTube 自身がヘルプに書いていることです。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、動画が止まる原因をバッファ(ためておく分)の仕組みから解説し、止まったときの対処法を手軽な順に紹介します。
目次
動画は、先に「ためてから」再生している(バッファとは)

YouTube や Netflix の動画は、1本まるごとを受け取ってから再生しているわけではありません。少しずつ届くデータを受け取りながら再生しています。
このとき、スマホやテレビの中の再生ソフト(プレーヤー)は、これから映す分を少し先に読み込んで、手元にためています。このためておく分をバッファと呼びます。YouTube のヘルプでは、ライブ配信の説明のなかで「先読みバッファ」という言葉が出てきます。
まるで、上から水が注がれ、下の蛇口から少しずつ出ていく水槽のようなものです。注がれる水がネットから届くデータ、出ていく水があなたの見ている映像です。
注がれる水の出どころは、動画サービスの元のサーバーとは限りません。Netflix と Google は、動画の写しを、あなたが契約しているプロバイダのネットワークの中に置く仕組みを持っています。このように、近くの写しから配る仕組みをCDNといいます。
ためた分を減らしながら、再生が進む
水槽に水がたまっていれば、上からの水が一瞬細くなっても、蛇口の水は止まりません。
動画も同じで、届き方が少し乱れても、ためてある分を使って再生を続けられます。YouTube は、ライブ配信の説明のなかで、この働きを「通常、視聴者側のプレーヤーは、ライブ配信データを追加で保持することにより、インターネット速度の変化に対応できます。」と説明しています。
なお、ネットワークの話では、ルーターなどの機器の中で、送り出す順番を待つデータの置き場所も「バッファ」と呼びます。こちらは道が混んだときにできる行列で、会議の声が遅れるような遅延の原因になり、その順番を入れ替えて大事な通信を先に通す仕組みの1つがQoSです。この記事の「バッファ」は、見る側の機械が先にためておく分のほうを指します。
動画が止まるのは、ためる速さが再生に追いつかないとき

水槽の水が減っていくのは、注がれる量より出ていく量のほうが多いときです。
動画でいえば、データが届く速さが、映像を見ていく速さに追いつかない状態です。この状態が続くと、ためておいた分がだんだん減り、やがて空になります。
空になった瞬間、映す映像がなくなるので、再生が止まります。再生の途中で出るくるくる回るマークは、もう一度ためているあいだの表示です。この、止まって読み込み直している状態を、ヘルプなどでは「バッファリング」と呼びます。
止まったからといって、すぐに故障とは限りません。まずは、水がどこで細くなっているかを疑います。
要るのは瞬間の速さではなく「持続的な速度」
ここで大事なのは、一瞬だけ速くても足りないということです。ためた分を減らさないためには、見ているあいだずっと、それなりの速さで届き続ける必要があります。
動画の配信サービスも、そろって「安定」や「持続」を挙げています。
- YouTube は、画質ごとの目安の表に「推奨される持続的な速度」という見出しを付けています
- Netflix は、最高画質で見るには「インターネットの安定した接続速度」を確保するよう勧めています
- TVer は「快適にご視聴いただくためには、安定したインターネット回線が必要です。」と書いています
Netflix は、再生中に止まって読み込みが始まる原因として、「インターネットの接続が弱いか不安定である」ことを挙げています。
目安の数字は、YouTube が推奨する速度でいえば、1080p(HD)で 5 Mbps です。Netflix は最高画質で見るための目安として、高画質(HD・720p)で 3 Mbps以上、フルHD(1080p)で 5 Mbps以上、超高画質(4K)で 15 Mbps以上を挙げています。画質ごとの目安と、速度テストの数字の読み方は、次の記事で解説しています。
同じ家で同時に見ると、1台あたりの速さが減る
家の回線は、家族みんなで分け合っています。YouTube のヘルプにも「同じネットワーク上で複数のデバイスを使用すると、1 台あたりの受信速度は低下する可能性があります。」とあります。
速度テストの数字は、測った1台に届いた速さです。リビングのテレビで動画、子ども部屋でゲームのダウンロード、という時間帯には、1台あたりに届く分が減り、水槽に注がれる水が細くなります。
速度テストでは十分なのに止まるとき
速度テストの数字は、測ったそのときの値です。TVer は「ご利用のプロバイダや地域、時間帯によって通信速度が低速化する場合もあります。」と書いています。昼に測って十分でも、夜に見ると足りないことがあります。
夜だけ遅くなる理由はPPPoEとIPoEの違いの記事で、ルーターから離れた部屋や2階で弱くなる理由はWi-Fiが壁や2階で弱くなる理由の記事で解説しています。
動画が止まる前に、画質が先に落ちることがある

動画が止まる前に、画面が急に粗くなることがあります。これは故障ではありません。
画質の自動調整は、止めないための仕組み
画質を下げると、必要な速さが下がります。YouTube が推奨する速度の目安でいえば、1080p(HD)の 5 Mbps に対し、480p なら 1.1 Mbps です。蛇口から出ていく水を減らせば、注がれる水が細くても水槽は空になりにくくなります。
配信サービスは、これを自動でやっています。YouTube は「YouTube の動画は、快適に視聴できるよう環境に応じて画質が自動で調節されます。」と説明しています。
Netflix は、その目的をもっとはっきり書いています。
Netflixでは、映像が中断されることがないよう、お使いのインターネット速度に合わせて作品を再生します。そのため、インターネット速度が遅かったり不安定だったりすると、画質が低下してしまう場合があります。
出典: ベストな画質で視聴するには(Netflixヘルプセンター)
つまり、再生の途中で画質が落ちたら、届く速さが足りていない(か、不安定な)ことが多い、という合図です。止まらずにすんでいるのは、画質を下げてしのいでいるからです。ただし、画質は画面の大きさや、元の動画の画質などでも変わります。
再生を始めた直後だけ粗いこともあります。Netflix は「Netflixで再生を開始した直後は解像度が低いことがありますが、その後すぐに高画質に切り替わります。」と書いています。
画質を手で上げて固定すると、止まることがある
YouTube と TVer は、画質を「自動」のほかに手で選べます。Netflix は、再生設定のデータ使用量で「自動」以外を選べます。
ただし、画質を高いほうで固定すると、届く速さが落ちたときに画質でしのげなくなります。Netflix は、速さが変わりやすい回線で「自動」以外を選ぶと画質が上がる場合があるとしたうえで、「これによりバッファリングやフリーズが起きるようであれば、設定を[自動]に戻してください。」と案内しています。
逆に、止まるのが気になるときは、画質を1段下げてみるのが手軽です。
画質によって1時間のデータ量がどれだけ変わるかは、動画のデータ量の記事で、YouTube と Netflix の公式の数字をもとに計算しています。
ライブ配信で動画が止まるのは、遅れを縮めてためる量が減るとき

録画の動画は平気なのに、ライブ配信だけ止まる。そう感じている人もいるはずです。その理由の1つが、YouTube のヘルプに書かれています。
ライブ配信では、ためる量を増やすほど、映像が遅れて届きます。YouTube は、ライブ配信の遅延を「カメラが映像を捉えた時点から視聴者に表示されるまでの遅れ」と説明し、「先読みバッファ量は、ライブ配信で遅延が発生する主な要因」だと書いています。ためる分が多いほど、いま起きていることから遅れて見ることになります。
遅れを縮めるほど、先読みが小さくなる
チャットでコメントに答えながら配信する人は、遅れを小さくしたいはずです。YouTube も「視聴者とチャットを行ってコメントや質問に返答する場合は、遅延が小さいほうが適しています。」と書いています。そのすぐあとには、こんな注意が添えられています。
注: 遅延を小さくすると、視聴者側の再生バッファリングが増加する可能性があります。
出典: ライブ配信の遅延について(YouTube ヘルプ)
ここでの「再生バッファリング」は、止まって読み込み直すことです(英語版のヘルプでは playback buffering)。ためる量が増える、という意味ではありません。
なぜ止まりやすくなるのか。同じページには、「遅延を小さくすると、動画プレーヤーの先読みバッファが小さくなります。」とあります。
水槽でいえば、小さな水槽に取り替えるようなものです。水が注がれてから出ていくまでの時間は短くなりますが、上からの水が少し細くなっただけで、すぐ空になります。
この遅れの設定は、配信用のソフトや機材(エンコーダ)で配信する場合に、配信する側が YouTube Studio で選びます。「低遅延」なら「通常は遅延が 10 秒未満」、「超低遅延」なら「通常は遅延が 5 秒未満」になると、同じページに書かれています。ウェブカメラやスマホからの配信は、遅延を設定できないとされています。
そのため、同じ家の同じ回線でも、遅れを縮めた配信だけが止まる、ということが起こりえます。
ライブを見る側にできること、できないこと
遅れの設定は配信する側が選ぶもので、見る側がこれを変える方法は、YouTube のこのヘルプには書かれていません。
しかも、原因が配信する側にあることもあります。YouTube は超低遅延について、「この設定では、ネットワーク上でライブの取り込みの問題が発生したときに、視聴者が受ける影響が大きくなります。」とも書いています。ここでいうネットワークは、配信する側の回線です(英語版では、配信者に向けて your network と書いています)。配信する側の上りの速さについては、上り速度の記事で解説しています。
見る側でできるのは、自分の側に原因がないかを確かめることです。同じ時間に、録画の動画やほかのライブも止まるなら、見る側の回線を疑えます。確かめ方は、次の「動画が止まるときの対処法」の節にまとめました。そのライブだけが止まるなら、配信の設定や配信する側の回線が関係しているのかもしれません。
会議はさらに「ためられない」
WEB会議やビデオ通話は、この引き換えのいちばん端にあります。会話は相手の返事を待つので、何秒もためてから再生するわけにはいきません。そのため、動画はきれいに見られるのに会議だけカクつく、ということが起きます。会議の切り分け方は、次の記事で解説しています。
動画が止まるときの対処法|手軽な順に確かめる4つ

ここまでの仕組みがわかると、止まったときに何を確かめればいいかも見えてきます。
試す前に、「止まるのは1台だけか、家じゅうか」を見ておくと、あとの判断が楽になります。Netflix も、プロバイダに問い合わせるときに伝えることとして「問題が一つのデバイスでだけ起こっているか、もしくは同じネットワークを使用している他のデバイスでも起こっているか。」を挙げています。
スマホをモバイル回線で見ているなら、速度制限も確かめます。TVer は「通信速度制限がかかっていると正常に再生できない場合があります」と書いています。
そのうえで、手軽なものから順に試します。
- STEP
画質を1段下げてみる
下げて止まらなくなれば、届く速さが足りていなかった(か、不安定だった)ということです。YouTube も、速度が足りるかを確かめる手順のなかで「より快適に利用するため、動画の画質を変更することもできます。」と案内しています。
テレビの YouTube アプリなら、動画プレーヤーで [設定] を選び、[画質] から選びます(YouTube のヘルプの手順)。
- STEP
同時に使っている機器を止める
家族の動画やゲームのダウンロード、パソコンの大きな更新などを止めて、止まり方が変わるかを見ます。変われば、家の回線を分け合って足りなくなっていたということです。
一人暮らしでも、マンションの光回線は、建物までの1本を住人で分け合っていることがあります(マンションの光回線の配線方式の記事)。その場合は、自分の機器を止めても変わらないことがあります。
- STEP
Wi-Fiなら、ルーターに近づく
- STEP
時間帯を変えて速度を測る
止まる時間帯と、止まらない時間帯の両方で速度テストをして比べます。夜だけ大きく下がるなら、家の外(回線やプロバイダの側)が混んでいる可能性があります。
テレビの Netflix アプリなら、メニューの [ヘルプ] から [ネットワークを確認] を選ぶと、テレビそのものの接続速度を確かめられます。
確かめた結果の読み方
確かめた結果と、次に疑うところを並べます。続きは、「次に読む記事」の欄に挙げた記事で解説しています。
| 確かめた結果 | 疑うところ | 次に読む記事 |
|---|---|---|
| 1台だけ止まる | その機器・アプリ・置き場所の電波 | Wi-Fiが繋がらないときの切り分け(1台だけか家じゅうか) |
| ほかの機器を止めると止まらない | 家の回線を分け合って足りない | QoSが効く場面・効かない場面 |
| ルーターのそばでは止まらない(速度が高い) | 家の中の電波(距離・壁・床) | Wi-Fiが壁や2階で弱くなる理由 |
| 夜だけ速度が大きく下がる | 家の外の混雑(入り方で変わることがある)。マンションなら、建物の中での分け合いも | 夜だけ遅い理由(PPPoEとIPoE)/マンションの光回線の配線方式 |
| 家じゅうで、時間帯を問わず止まる | 回線やルーターの側 | Wi-Fiが繋がらないときに見る順番(家じゅうの場合) |
家じゅうで止まるときは、ルーターの電源の入れ直しも試せます。Netflix はモデムとルーターの電源コードを抜いて待つ手順を、TVer もルーターの再起動を、それぞれ挙げています。
なお、止まる原因はネットワークだけではありません。TVer は、アプリの再起動や広告をブロックする機能のオフ、端末の空き容量の確保なども挙げています。
パソコンの YouTube なら、ためている量が見える
パソコンで YouTube を見ているなら、プレーヤーを右クリックして [詳細統計情報] を選ぶと、再生の状態を表す数字が並んで出てきます(手順はYouTube のヘルプにあります)。
その中の「Buffer Health」が、手元にためている量です。YouTube は、ライブ配信の説明のなかで、プレーヤーがデータを追加で保持する働きを「統計情報では「Buffer Health」と呼ばれています」と書いています。
ここで見た YouTube のヘルプには、何秒あれば安心かの目安は書かれていないので、止まるときと止まらないときで数字を見比べてみてください。
まとめ
この記事では、動画が止まる原因を、バッファ(先にためておく分)の仕組みから解説しました。
- 動画は先にためてから再生しており、止まるのはためた分が尽きたとき
- 要るのは瞬間の速さではなく、見ているあいだずっと届く速さ(YouTube・Netflix・TVer がそろって「持続」「安定」を挙げている)
- 画質が勝手に落ちるのは、止めないための仕組み。再生の途中で落ちたら、届く速さが足りていない(か、不安定な)ことが多い
- YouTube のライブ配信は、遅れを縮めた配信ほど先読みが小さくなり、止まりやすい。原因が配信する側にあることもある(YouTube のヘルプより)
- 止まったら、1台だけか家じゅうかを見たうえで、画質を1段下げる・同時に使っている機器を止める・Wi-Fiならルーターに近づく・時間帯を変えて測る、の順に確かめる
くるくる回るマークが出たら、「水槽が空になったんだな」と思い出してみてください。どこで水が細くなっているのかを探せば、打つ手が見えてきます。




