社内のファイルサーバー(NAS)の保守が切れる、買い替えの見積もりが来た、在宅勤務の人から「家から共有フォルダを開きたい」と言われた。そんなとき、業者や上司から「いっそクラウドにしませんか」と持ちかけられたことはありませんか?
「クラウドに移すって、どこに移すの?」「移したら、いまのフォルダはそのまま使えるの?」
実は、ファイルサーバーをクラウドに移す道は、大きく分けて2通りあります。共有フォルダを丸ごとクラウドのファイル置き場に置き換える道と、ファイルサーバーを窓口として残し、中身をクラウドに預ける道です。とくにクラウドの置き場に置き換える道では、アドレス・リンク・アクセス権のように、そのままでは移らないものがあります。
この記事では、Microsoft と Google の公式の説明をもとに、移し先の選び方、回線の見積もり方、そのまま移らないもの、移す前に数えておくもの、古いファイルサーバーの扱いを、ITやネットワークの知識がない方にもわかるように解説していきます。各社の数字は2026年10月時点のものです。
ファイルサーバーとNASの違いや、自分の共有フォルダがどこにあるかの見分け方は、ファイルサーバーの記事で解説しています。会計ソフトの乗り換えは会計ソフトの記事、メールの移行はメールの移行の記事で扱っています。
目次
ファイルサーバーのクラウド移行とは?移し先は2通りある

ファイルサーバーのクラウド移行とは、社内のファイルサーバーやNASに置いていた共有フォルダの中身を、インターネットの先にあるクラウドに置き直すことです。
事務所の奥の書庫にたとえると、道は2つあります。書庫を空にして、書類を丸ごと外の貸し倉庫へ引っ越す道。もう1つは、事務所の書庫を受付として残し、奥の在庫だけを貸し倉庫に預ける道です。
この2つとは別に、クラウドの上にサーバーそのものを借りて、そこにファイルサーバーを建てる道(IaaS)もあります。この形では、サーバーの OS から上の管理が利用者の側に残ります。仕組みと、利用者が管理する範囲はIaaSの記事で解説しています。この記事では、上の2つの道を扱います。
クラウドのファイル置き場に置き換える(SharePoint・Google の共有ドライブ)
1つ目は、ファイルサーバーをやめて、クラウドのファイル置き場に置き換える道です。Microsoft 365 なら SharePoint(チームで使う共有の置き場)と OneDrive(一人ひとりの置き場)、Google Workspace なら共有ドライブが移し先になります。
Microsoft は、ネットワーク上のファイル共有から SharePoint・OneDrive・Teams へ移すための道具(Migration Manager)を用意しています。移す元として「移行するネットワーク ファイル共有の URL (ソース)」を指定する形です(Migration Manager を使用してファイル共有を Microsoft 365 に移行する(Microsoft))。同じ Microsoft の移行ガイドは、一人の人のファイルは OneDrive に、チームで使うファイルは共有ライブラリ(SharePoint)に移すよう案内しています。別のページでは、社員が自分でファイルを移すなら、同期しているフォルダーにドラッグするのが多くの場合いちばん簡単だ、とも書いています。
チームのファイルを共有の置き場に置くと、担当者が辞めてアカウントを消しても、ファイルは会社に残ります。この違いは退職者のアカウントの記事で解説しています。
Google Workspace に移す場合、Google は、パソコン版 Google ドライブで既存のファイルをドライブに取り込めると説明しています。移行のための道具としては、Google の移行サービスの一覧で、ファイル共有から移す道具に利用者の人数にかかわらず「Google Workspace Migrate」が挙がっています。ただし Google 自身が、この道具は「大規模なお客様の移行(1,001 ユーザー以上)を想定して設計されています」「インストールと設定が複雑である」と書いています。
置き換えると、「\\」で始まるファイルサーバーのアドレスは使わなくなります。代わりに、ブラウザで開くか、パソコンに同期したフォルダから開きます。同期したフォルダの場所は、Microsoft の例では「C:\Users\JaneDoe\OneDrive – Contoso\…」のように、パソコンの中のユーザーのフォルダの下になります(ファイル パスの長さ制限とは何ですか?(Microsoft))。パソコン版 Google ドライブは、Windows での標準の場所が「G:」です(組織にパソコン版ドライブを設定する(Google))。
Box など、ほかのクラウドのファイル置き場に移す場合も、この記事の「そのまま移らないもの」と「数えておくもの」の考え方は同じです。容量や文字数の上限は、サービスごとに確かめてください。
ファイルサーバーを残して、中身をクラウドに預ける(クラウドゲートウェイ)
2つ目は、社内のファイルサーバーを窓口として残し、中身をクラウドと結ぶ道です。社員はいままでどおり「\\」のアドレスで開き、裏でクラウドに預けます。この仕組みをクラウドゲートウェイと呼びます。
Microsoft の Azure File Sync はこの形の一つで、Microsoft は「オンプレミスのWindowsファイルサーバーの柔軟性、パフォーマンス、互換性を維持します」と説明しています。移すときも「ファイル構造、権限、アクセスパターンはそのまま維持されています」としています。
ただし、Azure File Sync を入れられるのは Windows Server 2016〜2025 で、ファイルを置く場所も直接つないだ NTFS のボリュームに限られます(Azure File Syncのデプロイメントを計画してください(Microsoft))。Windows Server ではない NAS は、そのままではこの道に乗れません。ほかのゲートウェイの製品や仕組みは、クラウドゲートウェイの記事で比べています。
どちらにするかは「\のアドレスのまま使い続けたいか」で分かれる
2つの道は、どちらが上というものではありません。分かれ目は、いまの「\\」のアドレスやドライブの文字(Z: など)を、これからも使い続けたいかどうかです。
| 会社の事情 | 向く道 |
|---|---|
| 業務ソフトや Excel のリンクが「\\」や Z: のアドレスでファイルを開いている | 残して預ける(アドレスが変わらない) |
| 社内にサーバーの機器を置いておきたくない | 置き換える(窓口のサーバーが要らない) |
| 社外からも、VPN を使わずに開けるようにしたい | 置き換える(会社の設定が許していれば、インターネットから開ける) |
| いまのファイルサーバーが Windows Server ではない NAS | 置き換えるか、NAS に合うゲートウェイを探す |
社内のファイルサーバーを社外から開くには、ふつうはVPNで会社のネットワークに入る必要があります。置き換えたクラウドの置き場は、もともとインターネットの先にあるので、会社の設定が許していれば、この手間がなくなります。
クラウドに移すと、ファイルを開く通り道がインターネット回線になる

社内のファイルサーバーは、同じ事務所の中にあります。ファイルを開くとき、データは社内のLANの中を行き来するだけで、インターネット回線は通りません。
クラウドに置き換えると、ファイルを開くのも保存するのも、インターネット回線を通ります。書庫が事務所の奥から町の外の貸し倉庫に移るので、ブラウザで開くときも、同期で取ってくる・送るときも、その道を通ります。残して預ける道でも、ファイルサーバーとクラウドのあいだの行き来は回線を通ります。
最初に全部を送り込む日数は、回線の「上り」の速さで決まる
移行の最初の山は、いまのファイルを全部クラウドに送り込む作業です。会社からクラウドへ送る向きなので、効くのは回線の上り(アップロード)の速さです。速度テストで大きく出る下りの数字ではありません。
計算は「送る量(ビット)÷ 上りの速さ」です。たとえば 1TB(テラバイト)のファイルを、上り 100Mbps で送る場合、1TB は 8,000,000Mb(メガビット)なので、8,000,000 ÷ 100 = 80,000秒、約22時間です。上りが 10Mbps しか出ていなければ、約9日かかります。
ただし、この数字は「どんなに順調でも、これより早くは終わらない」という最短の目安です。実際にはもっと延びます。
- Microsoft は、移行のように裏で動く処理に対して「平日の昼間に…より厳しい調整制限を実装しました」と書いています。夜間と週末は、より多く処理する準備があるとしています(SharePoint および OneDrive の移行パフォーマンス ガイド(Microsoft))
- 同じページは、速さを左右するものとして、ファイルの数と大きさ、ディスクの速さ、ウイルス対策ソフト、ネットワークの速さなどを挙げ、大きなファイルは小さなファイルより速く移るとも書いています
- Google ドライブは「各ユーザーは 24 時間以内に 750 GB をドライブにアップロードまたはコピーできます」としています(Google Workspace のストレージとアップロードの上限(Google))。1人のアカウントで 1TB を送るなら、少なくとも2日に分かれます
見積もりに使う上りの数字は、契約書の数字ではなく、会社の回線で実際に測った数字にしてください。測り方は速度テストの記事で解説しています。送り込みのあいだは、同じ回線を使う社員全員の上りが細くなるので、Microsoft の調整の話と合わせて、夜や週末に送るのが現実的です。
量が多すぎて回線では間に合わないときのために、Microsoft はデータを機器にコピーして送り返すサービス(Azure Data Box)も案内しています。
移したあとも、毎日の開け閉めや同期が回線を通る
送り込みが終わっても、回線の出番は続きます。パソコンに同期したフォルダで使う場合、Microsoft は、同期アプリが使う帯域は「主にファイルのアップロードとダウンロードのトラフィック」で、ファイルの数・大きさ・変更の多さで決まると説明しています。
とくに気をつけたいのは、切り替えの直後です。同じページは「ユーザーが初めて場所をダウンロードすると、帯域幅の使用量が急増します」と書き、ファイルを開いたときだけ取ってくる設定(Files On-Demand)で避けるよう勧めています。全員のパソコンが一斉に全部を取りにいくと、その日は回線が詰まります。
パソコン版 Google ドライブも、ファイルを必要なときに取ってくる「ストリーミング」で、同期に要る帯域を減らせると説明しています。どちらも、同期の速さを抑える設定を管理者が入れられます。
ファイルサーバー移行の注意点|そのまま移らないもの

移行の道具はファイルを運んでくれますが、何もかもを元どおりにはしてくれません。Microsoft の移行ガイドは、ファイル共有から移すときに「移行されないもの」として、次のようなものを挙げています(ファイル共有を SharePoint および OneDrive に移行する(Microsoft))。
- コンテンツ内に埋め込まれた URL の変換
- 明示的なアクセス許可の拒否
- 現在の SharePoint の制限事項と制約事項から逸脱するファイルまたはフォルダー
言いかえると、ファイルの中に書かれたアドレス、「この人には見せない」という設定、クラウドの決まりに合わない名前のファイルです。順に見ていきます。
ここからの3つは、主に SharePoint・OneDrive や Google の共有ドライブに置き換える道の話です。残して預ける道では、窓口のサーバーが残るのでアドレスは変わりません。Microsoft は Azure File Sync について、権限も「そのまま維持されています」と説明しています。
\から始まるアドレスと、Excelなどのファイルどうしのリンク
共有フォルダは、エクスプローラーで「\\nas\共有」のようなアドレスか、Z: のようなドライブの文字で開いていることが多いはずです。Microsoft の移行ガイドも、ファイル共有は「”Z ドライブ” と呼ばれることが多く」と書いています。
困るのは、このアドレスがファイルの中や設定の中に書き込まれている場合です。代表がExcelのリンクです。売上の集計表が、別のブックのセルを数式で参照している、という使い方をしていませんか?
Microsoft によると、Excel のブックどうしのリンクは「可能な限り相対的な方法で」保存され、同じフォルダーやその下のフォルダーにあるブックなら、位置関係が変わらない限り、一緒に移してもリンクは切れません。一方、別のドライブにあるブックへのリンクは「絶対パス」で保存されます。例として挙がっているのは「H:\folder\source.xlsx」です(Excel でのブックのリンクの管理とストレージの説明(Microsoft))。
つまり、デスクトップに置いた集計表が Z: の売上ファイルを参照しているなら、そのリンクには「Z:\…」が書き込まれています。ファイルをクラウドに移しても、リンクは古い場所を指したままです。住所録に旧住所を書いたまま引っ越すようなものです。この保存の仕組みは Excel 自体のものなので、移し先が SharePoint でも Google ドライブでも変わりません。
同じドライブの中でも、別々のフォルダーにあるブックどうし(Z: の中の「経理」と「総務」のような形)は、「サーバー相対パス」で保存されます。Microsoft はこの形を、リンク元のブックが同じ場所に残る場合に向くとしており、両方を別の場所へ移しても保てるとは書いていません。
ほかにも、次のものは移したあとも古いアドレスを指したままになります。
- ショートカットのファイル(Microsoft の道具は、ファイル共有から移すときショートカットを「そのまま移行」します)
- Word や Excel の中に貼った、共有フォルダのファイルへのリンク
- 業務ソフトの設定に書いた、データの保存先のアドレス
- 図面ソフトなど、ほかのソフトで別のファイルを場所(アドレス)で参照しているもの
置き換える道を選ぶなら、移す前にこれらを書き出し、移したあとに新しい場所へ付け替える作業が要ります。業務ソフトの保存先を変えられるかは、ソフトの会社に確かめてください。残して預ける道なら、窓口のアドレスが変わらないので、この作業はほぼ要りません。
Excel の場合、ブックの中のリンクは[データ]→[クエリと接続]→[ブック リンク]で一覧にでき、移したあとは同じ画面の[リンク元の変更]で、新しい場所のブックに付け替えられます。ただし Microsoft は「ブック内のすべてのブックのリンクを自動的に検索する方法はありません」とも書いており、数式のほか、名前の定義・図形・グラフの中のリンクは個別に確かめる必要があります(ブックのリンクを管理する(Microsoft))。
クラウドで使えない名前と、長すぎるパス
ファイルサーバーでは使えていた名前が、クラウドでは使えないことがあります。Microsoft は、OneDrive と SharePoint では、「~$」で始まる名前、「desktop.ini」、「_vti_」を含む名前が使えず、名前の先頭と末尾のスペースも使えないとしています。「#」と「%」は、組織によってはまだ使えません。「” * : <> ? / \ |」の文字も使えません(OneDrive と SharePoint の制限事項と制約事項(Microsoft))。
もう1つが、パス(フォルダーの階層をたどったファイルの住所)の長さです。OneDrive と SharePoint は、ファイル名を含めたパス全体を400文字までとしています(SharePoint の制限(Microsoft))。
見落としやすいのは、パソコンに同期したときの長さです。Microsoft によると、Word・Excel・PowerPoint のデスクトップ版は、パス全体が260文字を超えるファイルを開けません。同期したファイルのパスは、Microsoft の例の「C:\Users\JaneDoe\OneDrive – Contoso\…」のように、パソコンのユーザーのフォルダーから始まるので、ファイルサーバーでの「\\nas\共有\…」より頭が長くなります。共有のライブラリへのショートカットを OneDrive に追加して同期すると、ブラウザでは問題なく開けても、パソコンの中のパスは「すぐに 260 文字を超えることがあります」。
しかも、移せなかったファイルがあっても、移行の作業は「完了」と表示されることがあります。Microsoft の道具は、対応していないファイル(400文字を超えるパスのものなど)を1件ずつのエラーにします。そのうえで、失敗したのが対応していないファイルだけなら、その作業は「引き続き “完了” としてマークできます」と書いています。「完了」の表示だけで、全部が移ったと思わないでください。
誰がどのフォルダを開けるか(アクセス権)
ファイルサーバーでは、「人事のフォルダは総務の2人だけ」「この中の給与のフォルダは社長だけ」のように、フォルダごとに開ける人を決めていることがあります。置き換える道では、この設定(アクセス権)も、そのままの形では移りません。
Microsoft(SharePoint・OneDrive)に移す場合、Microsoft の移行ガイドは、移したあとの権限は、共有の権限と NTFS(Windows のファイルの権限)のうち「最も制限の厳しい」ほうで決まり、「高度な NTFS アクセス許可はすべて削除されます」と書いています。さらに、特定の人を拒否する設定については、親のフォルダの権限に従い「アクセス可能になる可能性があります」としています。「この人には見せない」という設定が外れて、見えてしまうことがあるということです。
Google の共有ドライブに移す場合は、考え方がそもそも違います。Google は「共有ドライブのメンバー全員が、その共有ドライブのすべてのファイルやフォルダを閲覧できます」とし、フォルダの管理者が特定のメンバーに絞れるとしています(共有ドライブのファイルへのアクセスの仕組み(Google))。フォルダの権限を細かく決めていた会社は、共有ドライブを部署ごとに分けるなど、移し先の単位に合わせて決め直すことになります。
移す前に「見せてはいけないフォルダ」を書き出し、移したあとに、見せてはいけない人のアカウントで本当に開けないかを確かめてください。
移す前に、ファイルサーバーの中身を数えておく

ここまでの話は、どれも「いまのファイルサーバーに何があるか」を知らないと判断できません。Microsoft も、移行の「最初のルールは移行元を知ること」とし、持っていかずに置いていけるものは何かを考えるよう促しています(SharePoint および OneDrive の移行パフォーマンス ガイド(Microsoft))。業者に頼む場合でも、次のものは社内で数えておくと話が早く進みます。
- 全体の量(GB・TB)— 送り込みの日数と、移し先の容量に収まるかを決める
- ファイルの数 — 同期できる数の目安や、置き場ごとの上限にかかる
- 長いパスと、使えない名前のファイル — 移す前に名前やフォルダーの階層を直す
- 見せてはいけないフォルダ — 移したあとの権限を決め直す
- 「\\」や Z: を指しているリンク・ショートカット・業務ソフト — 付け替える一覧にする
- しばらく誰も開いていないフォルダ — 持っていかない候補にする
量は、移し先の容量と比べます。Microsoft 365 の SharePoint の容量は、組織全体で 1TB に、ライセンス1つにつき 10GB を足した量で、20人分のライセンスなら約1.2TB です(SharePoint の制限(Microsoft))。Google Workspace は契約の種類で違い、Business Starter は「30 GB × エンドユーザー数」、Business Standard は「2 TB × エンドユーザー数」で、Gmail などと共用です(Google Workspace のストレージとアップロードの上限(Google))。20人の Business Starter なら 600GB に収める必要があります。
SharePoint は、容量が足りなければ買い足せます。Microsoft は「SharePoint ストレージは無制限に購入できます」としたうえで、上限を超えたまま使い続けると、追加や変更ができない「読み取り専用」モードになるおそれがあると書いています。
ファイルの数は、Microsoft が同期について「300,000 個以下」を勧めており、Google は1つの共有ドライブに入るアイテムを「最大 50 万個」としています(Google ドライブにおける共有ドライブの制限(Google))。量とファイルの数は、エクスプローラーでフォルダーを右クリックし、[プロパティ]を開くと確かめられます(OneDrive のヘルプも、ファイルの数をこの方法で確かめるよう案内しています)。
長いパスは、Microsoft がファイル パスの長さ制限のページで、パスの長さを調べる PowerShell のコマンドを案内しています。Microsoft の移行の道具には、移さずに中身を調べるだけの「スキャンのみを実行」という設定もあるので、業者にこの結果を見せてもらうのも手です(移行マネージャーの設定(Microsoft))。
移したあとも、古いファイルサーバーはすぐに捨てない

移行が終わったら、古いファイルサーバーはどうすればよいのでしょうか(ここは置き換える道の話です。残して預ける道では、ファイルサーバーを窓口として使い続けます)。まず知っておきたいのは、移行は引っ越しではなくコピーだということです。Microsoft は「コンテンツを Microsoft 365 に移行すると、ファイルがコピーされます。 ソース ファイルは削除されません。」と書いています。
コピーなので、移したあとに古いほうと新しいほうの両方で書き換えが起きると、どちらが新しいのか分からなくなります。Microsoft の移行ガイドは、裏で少しずつ移したあと、ネットワーク上のファイル共有を無効にして全員を新しい場所へ切り替える日(カットオーバー)を、全員で1回にするよう勧めています。理由は「ユーザーがコンテンツの重複したコピーを更新できないようにする」ためです(ファイル共有を SharePoint および OneDrive に移行する(Microsoft))。
つまり、やることは2つです。
- 切り替えの日を1日に決め、その日から古いファイルサーバーには書き込ませない(共有を止める方法は、管理する人や業者に決めてもらう)
- 中身はすぐに消さない。移せなかったファイルは、古いほうにしか残っていない
2つ目の理由は、「クラウドで使えない名前と、長すぎるパス」で見たとおり、移せなかったファイルがあっても作業が「完了」と表示されることがあるからです。移したあとにファイルの数を数え比べ、足りないものが無いと確かめてから、古いファイルサーバーを片付けてください。数え比べ方と、確かめてから解約する順番は、クラウドの乗り換えの記事で解説しています。
なお、クラウドに移しても、ファイルの控え(バックアップ)が要らなくなるわけではありません。同期でつながった場所では、消した操作もつながった先に伝わります。この違いはクラウドストレージの記事で解説しています。
まとめ
この記事では、ファイルサーバーをクラウドに移すときの、移し先の選び方、回線の見積もり方、そのまま移らないもの、移す前に数えておくもの、古いファイルサーバーの扱いを解説しました。
- 移し先は主に2通り。クラウドの置き場(SharePoint・Google の共有ドライブ)に置き換えるか、ファイルサーバーを残して中身をクラウドに預けるか(Azure File Sync は Windows Server が前提)
- 分かれ目は「\\」や Z: のアドレスを使い続けたいか。業務ソフトや Excel のリンクがそのアドレスで開いているなら、残して預ける道が向く
- 移すと通り道がインターネット回線になる。最初の送り込みは「量 ÷ 上りの速さ」が最短の目安で、Microsoft の昼間の調整やファイルの数で延びる
- 置き換える道でそのまま移らないのは、ファイルの中に書かれたアドレス(Excel のリンクなど)、クラウドで使えない名前と長すぎるパス、「この人には見せない」というアクセス権
- 移す前に、量・ファイルの数・長いパス・見せてはいけないフォルダ・古いアドレスを指すものを数えておく
- 置き換える道では、移行はコピー。切り替えの日を1日に決めて古いほうには書き込ませず、移せなかったファイルが無いと確かめるまで中身は消さない
- いまの中身を数える(量・ファイルの数・長いパス・使えない名前。「スキャンのみを実行」の結果を見せてもらえるか)
- 道を選ぶ(「\\」や Z: のアドレスを使い続ける必要があるか。いまのファイルサーバーが Windows Server か。Windows Server ではない NAS なら、合うゲートウェイがあるか)
- 移し先の容量と、送り込みの日数を見積もる(会社で測った上りで。夜や週末に送れるか)
- (置き換える道なら)「\\」や Z: を指すリンク・ショートカット・業務ソフトの設定を、誰がいつ付け替えるか
- (置き換える道なら)見せてはいけないフォルダの権限をどう決め直すか。移したあと、誰のアカウントで開けないことを確かめるか
- 一部の人やフォルダで試しに移す(Microsoft の移行ガイドの手順は、少数のユーザーで試す「パイロット移行」から始まります)
- (置き換える道なら)切り替えの日を1日に決め、その日から古いファイルサーバーに書き込ませない方法
- 移ったファイルの数を数え比べ、移せなかったものの一覧をもらう。移したあとのバックアップをどうするか。(置き換える道なら)古いファイルサーバーを片付ける日
「クラウドにしませんか」と言われたら、まずは「業者と決めること」の最初の項目、いまの中身を数えるところから始めてみてください。量と、「\\」や Z: を指すリンクがどれだけあるかが分かれば、どちらの道が合うかと、業者に聞くべきことが見えてきます。




