「ネットが遅いんですけど」と声をかけられて、返事に困ったことはないでしょうか。
会社に情報システムの専任(社内で「情シス」と呼ばれる担当)がいないと、この一言はたいてい総務や事務の席に飛んできます。自分は配線も設定も触れないのに、なぜか最後に受け止めるのは自分、という立場です。
実は、この立場でやることは「直すこと」ではありません。どこに渡すかを決めることです。
連絡先は、症状ではなく「そこが誰の持ち物か」で決まります。
だから最初にやるのは、原因を探すことではなく遅いのがどこまでの範囲かを決めることです。範囲が決まると疑う区間が絞れ、その区間の持ち主が連絡先になります。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、範囲の確かめ方、持ち主から連絡先を決める表、電話の前にそろえるもの、そして直るまで社員にどう伝えるかを解説していきます。
目次
「会社のネットが遅い」と相談されたら、まず確かめる4つのこと

相談を受けた直後にやりがちなのが、その人の席へ行って機器を見に行くことです。
ですが、1台のパソコンをいくら見ても、それがその人だけの話なのか、会社ぜんぶの話なのかは分かりません。そして連絡先を分けるのは、まさにその違いです。
窓口という立場には、困っている本人にはできないことが1つあります。ほかの人に聞けることです。これを先にやります。
- ①ほかの席でも起きているか — 別の島の人に2〜3人、声をかけます
- ②有線の人にも、Wi-Fiの人にも起きているか — 片方だけなら、そこから先を疑えます
- ③社内のものも遅いか、外のサイトだけか — 共有フォルダや複合機は社内、検索やニュースは外です
- ④いつからか — 今日だけなのか、毎日この時間帯だけなのかを聞きます
③がいちばん効きます。社内のものは平気で、外のサイトだけが遅いなら、建物の中の機器ではなく、外に出ていく部分が怪しいと分かるからです。
逆に、共有フォルダを開くのも遅いなら、外に出る前のどこかが詰まっています。
④は、そもそも電話をかけるかどうかを分けます。今朝から急に、なら何かが変わった可能性があります。いっぽう毎日決まった時間帯だけ遅いなら、壊れているのではなく、その時間に使い方が重なっているのかもしれません。そうだとすれば、外に連絡しても止まりません。先に社内の使い方を見るほうが近道です。
ところで、この4つは「頼む側が添える4つ」として別の記事に書いたものと同じです。違うのは立場のほうで、窓口は1人に聞くのではなく、何人かに聞いて範囲そのものを確定できます。同じ4つでも、集まる答えの確かさが変わります。
会社のネットが遅いとき、連絡先は「誰の持ち物か」で決まる

会社のネットワークは、外から入ってきた1本の線が、機器を通りながら自分の席まで届く1本道です。
この道を、持ち主で区切って見るのがこの記事の要点です。道路にたとえると分かりやすいと思います。同じひと続きの道でも、国道と市道と私道では、陥没したときに連絡する先が違いますよね。会社のネットワークもこれと同じで、区間ごとに持ち主がいます。
先ほどの4つで絞った範囲を、この道に当てはめます。外のサイトだけが遅いなら外に近いほう、社内のものまで遅いなら建物の中、聞いた人には起きていないならその席のまわり、という具合です。
| 遅い・止まっている場所 | 持ち主 | 連絡する先 |
|---|---|---|
| インターネットにつなぐ契約(プロバイダ) | プロバイダ | プロバイダ。回線と同じ会社のこともある |
| 建物に入ってくる線と、その先のONU | 回線の会社(借りている) | 回線を契約している会社 |
| 社内のルーター・スイッチ・無線アクセスポイント | 自社(買った・入れてもらった) | 入れた業者、または買った販売店 |
| 1台のパソコンだけ | 自社の備品 | 社内の資産の管理者、機器のメーカー |
| メール・会議・ファイル置き場などのクラウドのサービス(道の外) | サービスの提供元 | そのサービスの窓口と障害情報 |
上の4行は1本の道の上に並んでいますが、いちばん下のクラウドのサービスだけは道の外、図でいえば雲の向こう側にあります。メールや会議だけが遅いときの見方は、あとの節で扱います。
回線の会社とプロバイダの違いがあいまいなら、先にそちらを読んでおくと表が読みやすくなります。
何年も前に入れた機器だと、業者が廃業していたり、誰が入れたのか分からなかったりします。その場合は本体のシールでメーカー名と型番を控えて、そのメーカーのサポートを当たることになります。
借り物か、自分の持ち物か。この線引きは、家庭のインターネットでも同じ形で出てきます。
いちばん間違えやすいのは「NTTに電話する」
壁から出ている線も、机の下のONUも、NTTのロゴが入っていることがあります。そのため、つい局番なしの「113」に電話してしまいがちです。
ところが、ドコモ光やソフトバンク光のように、他社が販売している光回線があります。これを「光コラボレーション」と呼びます。NTT東日本の一覧には取り扱う事業者が50音順でずらりと並んでおり、契約先がNTTではないことは珍しくありません。
NTT東日本は、光コラボレーション事業者の一覧を載せたページで、次のように案内しています。
ご契約内容については、ご契約の光コラボレーション事業者さまへお問い合わせください。
出典は「光コラボレーション事業者さま」及び「お取り扱いサービス」一覧 | 光コラボレーションモデル | NTT東日本です(2026年8月23日確認)。
NTT西日本も、【NTT西日本】お問い合わせ一覧で「ユーザーサポートなどの各種お問い合わせにつきましては、各光コラボレーション事業者さまの窓口へ直接お問い合わせください」と書いています。東と西の両方が同じことを案内しているので、エリアによる例外は考えなくてよいでしょう。
光コラボレーションでは、NTTの機器を使いながら、契約はよその会社という形になります。箱に書かれた会社名は、契約先を教えてくれません。
連絡する前に、手元にそろえておくもの

連絡先が決まったら、すぐに電話をかけたくなります。ですが、ここで会社ならではの壁に当たります。
契約しているのは自分ではない、という壁です。名義は社長や前任者になっていて、自分の名前はどこにも載っていない、ということが少なくありません。
事業者の窓口は、契約の内容を誰にでも話すわけではありません。@niftyは法人向けの窓口について、次のように書いています。
お問い合わせ内容により、契約法人情報の確認(所属確認:お名前、契約担当者名、ご住所・お電話番号・その他の登録情報など)をさせていただく場合がございます。なお、ご契約内容のご案内については、契約法人に所属されている社員様に限らせていただきます。
出典は会員サポート > お問い合わせ窓口:電話でのお問い合わせ(すでに会員の方) : @niftyです(2026年8月23日確認)。
裏返すと、契約者本人でなければ話ができない、というわけではありません。同じページでは、法人の問い合わせに「法人契約管理番号」を用意するよう案内しています。これは1社の書き方なので、求められるものは事業者によって違います。それでも、その会社の社員であることと契約を特定できる番号がそろっていれば、話を始められる形が多くなります。
そこで、電話の前に次の順でそろえます。
- STEP
「開通のご案内」を探す
契約したときに事業者から届く書類です。契約者名・お客さまID・サービス名が1枚にまとまっています。総務の書類棚か、前任者の引き継ぎファイルにあることが多いものです。
- STEP
お客さまIDを控える
光回線には契約ごとの番号が振られています。BIGLOBEは自社の説明で、この番号を「お客さまID(CAF/COP番号)」と呼び、CAFで始まる英数13桁、COPで始まる英数11桁だと案内しています。
- STEP
契約者の名義を確かめる
会社名なのか、個人名なのかを見ておきます。個人名で、その人がもう退職しているなら、手続きの前に社内で名義の確認が要ります。
- STEP
先に決めた「範囲」をメモにする
ほかの席でも起きているか、有線と無線の両方に起きているか片方だけか、社内のものも遅いか、いつからか。この4つは、相手に必ず聞かれます。
お客さまIDの呼び名は事業者によって違います。BIGLOBEの例はBIGLOBE光 コラボ回線の「お客さまID」「アクセスキー」の確認方法 | よくある質問(FAQ) | BIGLOBE会員サポートにあります(2026年8月23日確認)。
前任者の引き継ぎファイルにも書類棚にも無い、ということはよくあります。探す場所は1つではありません。
- 経理に「インターネットの支払先」を聞く — 毎月の請求書には契約先の会社名が載っています
- 過去の稟議や契約書を探す — 契約したときの決裁が残っていることがあります
- 手続きをした人に聞く — 在籍していれば、いちばん早い道です
会社名さえ分かれば、そこから先はその事業者のページで調べられます。書類が無いことを理由に、止まらなくて済みます。
この番号は、書類が見つからなくても取れることがあります。NTT東日本は法人向けに「マイページ」を用意していて、登録すると契約の内容をWebから見られます。ただし登録にも「開通のご案内」が要るので、書類を探す手間は結局どこかで発生します(法人のお客さまマイページ|ソリューション|法人のお客さま|NTT東日本・2026年8月23日確認)。
会社のネットが遅い原因が外にあるかを、電話の前に確かめる

ここまでの準備ができたら、電話をかける前にもう1つだけやることがあります。
事業者の側で、すでに把握されている不具合ではないかを見ることです。回線の会社は、工事や故障の情報を誰でも見られる形で公開しています。
NTT東日本の故障情報のご確認|サポート|フレッツ光公式|NTT東日本は、地域ごとに青と赤で状況を示しています。青が「故障情報なし」、赤が「故障情報あり」です。
NTT西日本にも同じものがあります。こちらはフレッツサービスの工事・故障情報、加入電話/INSネットの故障情報、通信ケーブルの工事情報が、別々に並んでいます。
さきほど「契約先はNTTではないことがある」と書いたのに、NTTのページを見るのは変に思えるかもしれません。ですが、光コラボレーション事業者自身がそう案内しています。
ドコモ光の工事・故障情報掲載一覧 | ドコモ光 | インターネット回線・固定電話 | NTTドコモには、自社の情報と並べて「NTT東日本(フレッツ)/工事故障情報」「NTT西日本(フレッツ)/工事故障情報」へのリンクが置かれています。
ソフトバンクの障害・メンテナンス情報 | インターネット・固定電話 | ソフトバンクにも、「SoftBank 光、Yahoo! BB 光 with フレッツ/…のお客さまは、あわせて下記のWEBサイトもご確認ください」として同じ2つが挙がっています(どちらも2026年8月23日確認)。
整理すると、申告する先は契約先、情報を見に行く先は契約先とNTT東西の両方です。
NTT東日本は同じページに、次の注意書きを添えています。
故障情報の掲載がない場合でも、一部のお客さまにおいて、電柱からお客さま宅へ引き込んでいる回線(引き込み線)の切断などにより、ご利用いただけない場合がございます。
青だったからといって、回線の線を容疑者から外してはいけない、ということです。青は「大きな故障は出ていない」までしか意味しません。
回線の状態は、電話をかけなくても調べられる
もう一段ふみこんだ確認もできます。NTT東日本の故障受付 Web113|NTT東日本|フレッツ光は24時間受け付けているWebの窓口で、次の3つを続けて行えます。
- 契約確認 — 契約のIDや電話番号から契約を特定する
- 通信確認 — NTTビルから建物までの回線の状況を調べる
- 修理・交換手配 — 訪問修理や機器の配送を予約する
NTT西日本にも【NTT西日本】設定・トラブルサポートWeb 113という同じ呼び名のしくみがあり、「ご契約者名や電話番号、お客さまID等を入力」してから回線状態の確認へ進む、という同じ3段です。前の手順で番号をそろえておくのは、ここで効いてきます。
ただし、これはNTT東西と契約している場合の窓口です。光コラボレーション事業者と契約しているなら、同じことは契約先の窓口で行います。
もう1つ。3つ目の修理・交換の手配まで自分で押すかどうかは、会社によります。窓口の仕事は渡す先を決めるところまで、と先に決めておくと、あとで「なぜ勝手に手配したのか」と言われずに済みます。
工事の予定は、あとから調べるより先に受け取る
故障と違い、工事は前もって決まっています。つまり、窓口の側で先に知っておけるということです。
NTT東日本は工事・故障情報 | 公開情報 | 企業情報 | NTT東日本のページで「メール情報配信」を案内していて、工事情報をメールで受け取れます。NTT西日本も「工事・故障お知らせメール」という名前で同じものを提供しています。
法人向けのマイページを登録しているなら、そちらでも「ご契約サービスの利用エリアにおける工事や故障情報」を見られます。
登録しておけば、「今日の午後は一時的につながらなくなるかもしれません」と相談される前に社内へ流せます。窓口の仕事としては、これがいちばん効きます。
NTT西日本は【NTT西日本】工事・故障情報のページで、このサイトのURLと、お知らせメールの送信元アドレスを2026年11月4日の午前から変更すると告知しています(2026年8月23日確認)。
すでに受け取っている場合は、受信の設定を見直しておいてください。上のリンクもその日に変わる予定なので、開けなくなったらNTT西日本のトップから辿ってください。
会議やメールだけが遅いなら、疑うのは回線ではない
周りに聞いた③で「社内のものは平気、外のサイトも平気、でも会議だけ重い」となることがあります。
このときに回線の会社へ電話しても、話は進みません。疑うのは、そのサービスの側だからです。表のいちばん下、クラウドのサービスがこれにあたります。
各社が稼働状況を見られるようにしています。MicrosoftはMicrosoft 365 サービス正常性を確認する方法 – Microsoft 365 Enterprise | Microsoft Learnで、次のように書いています。
クラウド サービスで問題が発生している場合は、サービスの正常性をチェックして、サポートを呼び出すか、トラブルシューティングに時間を費やす前に、解決が進行中の既知の問題であるかどうかを判断できます。
この記事でここまで書いてきたことと、同じ考え方です。
Microsoftのこの画面は管理者アカウントでサインインして開きます。同じページは「サービス サポート管理者とヘルプデスク管理者ロールが割り当てられているPeopleは、サービス正常性を表示できます」とも書いており、窓口の担当者に権限が無ければ、社内で管理者になっている人に頼むことになります。
いっぽうGoogle Workspace ステータス ダッシュボードは、サインインなしで開けます(2026年8月23日確認)。
なお、サービス側に障害が出ていないのに会議だけが重い、という場合は別の切り分けになります。症状ごとの見方は次の記事にまとめてあります。
直るまでのあいだ、社員に何と伝えるか

連絡がすんだら、次は社内への案内です。ここでいちばん困るのは「いつ直りますか」でしょう。
結論から言うと、その時点では答えられません。原因がどの区間にあるかがまだ決まっていないからです。区間が違えば、直す人も直し方も変わります。
ですが、答えられないことと、何も言えないことは違います。次の3つは、その時点で分かっていることとして伝えられます。
- 範囲 — 「聞いた範囲では、ほかの島でも同じです」「Wi-Fiの人だけのようです」。これだけで、社員は自分が待つ側かどうかを判断できます
- どこに連絡したか — 「回線の契約先に出しました」。動いている、と伝わります
- 次に分かる時点 — 「折り返しが来たら流します」。時刻ではなく、きっかけで区切ります
夕方の連絡は、事業者によって扱いが違う
夕方に気づいて連絡した場合、その日のうちに直るかどうかは契約先の案内によります。NTT東日本と西日本は、それぞれ次のように案内しています。
NTT東日本は2025年1月10日のお知らせで、夜間帯(17時~翌9時)の受付方法を「Webおよび録音による受付」から「Webによる受付」へ変更したと告知しました(故障受付「113」の受付方法変更について | お知らせ・報道発表 | 企業情報 | NTT東日本)。夜間は電話ではなくWebから、ということです。
NTT西日本は【NTT西日本】お問い合わせ一覧で、ひかり電話とフレッツサービスの故障を「24時間受付(音声ガイダンスによる録音受付)」としたうえで、「故障修理などの対応については午前9時~午後5時とさせていただきます」と書いています。
NTT東日本のほうは受付の方法(電話かWebか)の話、NTT西日本のほうは修理の対応時間の話です。「NTTは夜は動かない」と一つにまとめて覚えないでください。
そして、あなたの会社の契約先が光コラボレーション事業者なら、受付の時間はその会社の案内が正になります。
止まっているあいだ、スマートフォンの回線を使って急ぎの作業だけ通す、テザリングという手もあります。会社の規程で許されているかは先に確かめてください。
まとめ
この記事では、情報システムの専任がいない会社で「ネットが遅い」と相談されたとき、窓口の側が何をするのかを解説しました。
あらためて要点をまとめると、次のとおりです。
- ①窓口の仕事は直すことではない — 渡す先を決めることです
- ②先に範囲を決める — 相談してきた人ではなく、周りに4つ聞きます
- ③連絡先は「誰の持ち物か」で決まる — プロバイダ・回線・社内の機器・パソコン、そして道の外にあるクラウドのサービス。会議やメールだけが遅いなら、回線ではありません
- ④機器のロゴで決めない — 光コラボレーションなら、NTT東西とも「契約した事業者へ」と案内しています
- ⑤電話の前に、開通のご案内とお客さまIDをそろえる — 求められるものは事業者によって違いますが、契約者が自分でなくても、社員であることと番号がそろっていれば話を始められる形が多くなります
- ⑥工事情報は先に受け取れる — メールやマイページに登録しておけば、相談される前に社内へ流せます
- ⑦落ち着いたら、1枚にまとめておく — 契約先・お客さまID・契約者の名義を紙1枚にしておけば、次は探すところから始めずに済みます
この立場は、詳しくないのに矢面に立たされる、割に合わない役回りに感じられるかもしれません。ですが、範囲を1つに決めて、持ち主に渡す。この2つができる人が社内にいるかどうかで、話の進み方はまるで変わります。
参考: 「光コラボレーション事業者さま」及び「お取り扱いサービス」一覧 | 光コラボレーションモデル | NTT東日本
参考: 故障情報のご確認|サポート|フレッツ光公式|NTT東日本
参考: 【NTT西日本】お問い合わせ一覧






