この記事では、ネットワークに何らかの問題があり通信できない場合の調べ方を説明します。
ただし、ノンネットワークエンジニアを前提にしていますので、ネットワークエンジニア向けではありません。
ノンネットワークエンジニアの人は詳しい人に上手に頼りましょうという考えで書いています。ネットワークエンジニア向けの踏み込んだ内容は、ここでは扱いません。
自分で調べるところまでと、分からなかったときに何を渡せば話が早いか——その両方を書きます。
目次
ノンネットワークエンジニアがネットワークトラブルを解決するにはどうしたらいいか?
先に流れだけ書きます。トラブル調査は、次の4つの順で進めます。
- 状況の確認
- 問題箇所の切り分け
- 原因の対策
- 対策結果の確認
ノンネットワークエンジニアは、ネットワークトラブルを全て自分で解決することはできません。
ではどうするのか?
ネットワークに詳しい誰かの協力を得ながら問題を解決することになります。
しかし、常に助けてもらうのは気が引けます。
ですから、できるところまでは自分で調査しましょう。
全ての場合が上に挙げた4つの手順に当てはまるわけではありませんが、ノンネットワークエンジニアの方目線だと、このパターンで解決できることが多いと思います。
この中でノンネットワークエンジニアでは対応できない可能性があるのが3です。⚠ ただし3の中でも、ケーブルの差し込みや設定の確認までは自分でできます。触ってよい範囲は職場の決まりに従ってください。
ここは知識と経験が必要かもしれません。
逆に言うと、他の1、2、4はノンネットワークエンジニアでもなんとかできるはずです。
このできる部分をやるかやらないかで、協力してくれる人から奪う時間が大幅に違います。
また、できる部分を自分でやるだけでも、自分自身に知識と経験がついてきます。
後々の差はこういう部分でできてきます。
やるべきことは、逃げずにやりましょうね。
ネットワークトラブル時の調べ方
ここでは、次の図の様に、自分のパソコンとファイルサーバーで通信できない場合を例に、ネットワークトラブルの調べ方を説明していきます。
⚠ この図は間にルーターを2つ挟む構成を例にしています。自分の会社が同じ形とは限りません。同じフロアにサーバーがあるなら後で使う「tracert」の結果は1行だけになりますが、考え方は同じです。

状況の確認
ネットワークに関する状況を伝えるのは難しいです。
相手または自分が慣れていない場合は、何ができて、何がどこまでできていないのか、正確に理解するのはとても難しいことです。
ネットワークトラブルの時は、必ず自分の目と手で状況を確認しましょう。
意外に初歩的なミスであることも多いですよ。
ノートパソコンなら「WiFiがつながっていないだけだった!」なんてこともしばしばあります。
今回の様に、ファイルサーバーにつながらない場合は次の事を確認しましょう。
- 自分のパソコンがインターネットにつながっているか。
- 自分のパソコンからメールは送受信できるか。
つながらなければ、自分のパソコンのWiFiが接続されていない可能性があります。
まずは自分のパソコンを確認しましょう。
自分のパソコンが問題なさそうなら、ネットワーク経路の問題箇所の切り分けを行いましょう。
問題箇所の切り分け
ファイルサーバーと通信できない場合、様々な原因が考えられます。
例えばこの様な原因です。
- LANケーブルが抜けてしまった。
- ルーターが故障した。
- ハブが故障した。
- パソコン側の設定に問題がある。
- サーバー側の設定に問題がある。
その他にも様々な原因が考えられます。
そんなときは、まず単純に、自分のパソコンとファイルサーバーがネットワークで通信できているかどうかを調べましょう。
ここで必要になるネットワークコマンドは「ping」です。
「ping」で自分のパソコンとファイルサーバーが通信できた場合、ネットワークの通り道は通っています。問題はファイルサーバーか、その上で動いているサービスの側にあります(共有の設定や、アクセスの許可など)。
「ping」で自分のパソコンとファイルサーバーが通信できなかった場合、問題はネットワークか、自分のパソコンにあります。
⚠ ただし1つ注意があります。ping が返らないことには、届いていない場合と、届いているのに返事を止められている場合があります。セキュリティソフトやファイアウォールが ping だけを止める設定になっていることがあるからです。ping が返らないのに共有フォルダは開ける、という状態も起こります。

ファイルサーバーと通信できないことがわかったら、次に使うコマンドは「tracert」です。
「tracert」を使うとファイルサーバーまでのルーター一覧を表示し、さらにどこまで通信できているかわかります。
ルーター2まで通信できてファイルサーバーと通信できていない場合、次の問題の可能性が考えられます。
- ルーター2とファイルサーバーの経路に物理的な問題がある。
- ルーター2の設定に問題がある。
- ファイルサーバーの設定に問題がある。

ルーター1まで通信できてルーター2と通信できていない場合、次の問題の可能性が考えられます。
- ルーター1とルーター2の経路に物理的な問題がある。
- ルーター1の設定に問題がある。
- ルーター2の設定に問題がある。

ルーター1と通信できていない場合、次の問題の可能性が考えられます。
- 自分のパソコンとルーター1の経路に物理的な問題がある。
- 自分のパソコンの設定に問題がある。
- ルーター1の設定に問題がある。

この様に、「tracert」を使うことで、問題の箇所がある程度特定できます。
⚠ ただしハブは「tracert」の結果に出てきません。上の原因リストにある「ハブが故障した」は、この方法では「その区間のどこか」までしか絞れないということです。区間が分かったら、その間にある機器を目で追ってください。
原因の対策
通信経路の問題箇所がある程度しぼられると、次はもう少し詳しく調査を行います。
ノンネットワークエンジニアが必ず確認しておきたいのは、「Ethernetケーブルが差し込まれていなかった」という基本的なミスです。
ハブやルーターへの差し込みが甘いと、見た目は差し込まれていても通信できないということが、現実にあります。
差し込み口にランプがある機器なら、そこが手がかりになります。ただしランプの名前も色も意味も機種ごとに違います。点いている・消えているだけで決めつけず、判断できないときはその機器の取扱説明書を確認してください。
物理的な接続に問題がない場合、ネットワーク設定に問題がある可能性があります。
確認するべき箇所は
です。
現状の設定がどうなっているのか確認しておきましょう。
設定を確認するには「ipconfig」コマンドを使います。
ここまでの結果を元に自分で考えてわからない場合は、ネットワークに詳しい人に聞いてみましょう。
そのとき、ここまでで調べたことをそのまま渡せば、その場で問題らしき箇所をいくつか教えてくれるはずです。何を添えて渡すかは、この記事の後半にまとめました。
教えてもらったことは自分の手で変更、確認し、自分の知識にしていきましょう。
対策結果の確認
原因を見つけ、対策したら、必ず確認しましょう。
時々、「これが原因だ!」と思い込んでしまい、修正後の確認を怠る人がいます。
ネットワークに限ったことではありませんが、確認は必ず必要です。
確認することは2つあります。
- 同じコマンドをもう一度打って、結果が変わったか
- 実際にやりたかったこと(共有フォルダを開くなど)ができるか
1だけで終えないでください。ping が返るようになっても、共有フォルダが開かないことはあります。上で書いたとおり、通り道が通ったことと、やりたいことができることは別です。
調べた結果を詳しい人に渡すとき
この記事は冒頭で「詳しい人に上手に頼りましょう」と書きました。頼るときに何を渡すかで、返ってくる答えの速さが変わります。ここまで進めたなら、手元にはコマンドを打った結果があります。それをそのまま渡せば、相手は同じ調査をやり直さずに済みます。
結果に添える4つ
結果だけを送ると、相手は「それは何をした結果ですか」と聞き直すことになります。次の4つを添えてください。
- 何を確かめようとしたか — 宛先が何で(例: 「共有フォルダのあるファイルサーバー」)、どのパソコンから打ったか
- 何を打ったか — 打ったコマンドの行をそのまま
- 何が返ってきたか — 画面に出た文字を丸ごと。要約しない
- いつ実行したか — 今も同じ状態なのかが分かる
1つ目は落としやすいところです。「192.168.1.50 に ping が返りません」と書いても、その番号が何なのかを知っているのは打った本人だけです。宛先の正体と、どの席のパソコンから試したかを添えてください。
3つ目の「要約しない」がいちばん大事です。この記事のはじめに書いたとおり、何がどこまでできていないのかを正確に伝えるのは難しいことです。要約すると、相手が見たかった1行が落ちます。丸ごと渡してしまえば、どこを見るかは相手が決めてくれます。
会社で頼むなら、症状の側も添えると話が早く進みます。自分だけか周りもか、いつからか、といった聞き方はオフィスのネットワークの記事にまとめてあります。
見せる前に消しておくもの
コマンドの結果には、相手に渡す必要のないものが混ざります。社内の担当者に見せるだけなら気にしなくて構いませんが、掲示板やSNS、付き合いのない業者に出すなら、次の3つは消してください。
- パソコンの利用者名 —
C:\Users\〇〇>のように、コマンドを打つ行の左に出ています。⚠ 消すのは>の左側だけで、その右にある打ったコマンドは残してください - MACアドレス — 機器ごとに違う番号で、
ipconfig /allの結果に出ます。⚠ ただし保守業者から求められたら渡して構いません(機器の特定に使います)。先回りして出す必要はない、という意味です - IPv6アドレスのうち、どこかに
ff:feが入っているもの — 下で説明します
3つ目には理由があります。IPv6アドレスには、その機器のMACアドレスから作られたものがあります。作り方は決まっていて、MACアドレスの真ん中に「ff:fe」を挟むというものです(RFC 4291 Appendix A)。手順が決まっているということは、逆にたどればMACアドレスが分かるということです。
ただし、今はこの作り方を使わないほうがよいとされています(RFC 8064)。ですから「IPv6アドレスにはMACアドレスが入っている」と決めつけることもできません。見分けがつかないときは、ff:fe が入っているかどうかだけを見て、あれば消す。それで足ります。
逆に、192.168 で始まるアドレスは消さなくて構いません。家庭のルーターが配る住所で、どの家でも同じ範囲を使っています。会社のパソコンの場合は、社内の決まりに従ってください。
画面ではなくファイルで渡す
結果を渡す方法は2つあります。画面の文字をマウスで選んでコピーするか、はじめからファイルに書き出すかです。
ファイルに書き出すには、コマンドのうしろに > とファイル名を付けます。
ping 192.168.1.50 > result.txt
tracert 192.168.1.50 >> result.txt
この形で実行すると、画面には何も出ません。結果はすべて result.txt に書き出されています(筆者の環境で実行して確認しました)。ファイルができる場所は、コマンドを打つ行の左に出ているフォルダです。
⚠ 2つ目からは >> と2つ重ねます。> のままだと、前に書き出した内容が消えて最後の1つだけが残ります。
⚠ もう1つ落とし穴があります。コマンドの名前を打ち間違えたときだけは、画面にエラーが出て、ファイルは空になります。送る前にファイルを開いて、中身があることを確かめてください。
⚠ そして、ping や tracert の結果に日時は入りません。上で挙げた「いつ実行したか」は、メールの本文に「〇月〇日〇時ごろ」と書き添えてください。
ファイルにしておくと、上で挙げた消すものを送る前に落ち着いて確認できます。画面のコピーは、貼り付けてから気づくことになりがちです。
まとめ
この記事では、ネットワークに何らかの問題があり通信できない場合の調べ方を説明しました。
ノンネットワークエンジニアを対象としているので、極端な例として手順を説明しています。
見つかった問題の対策は、ノンネットワークエンジニアには難しいかもしれませんが、それ以外はノンネットワークエンジニアでもできます。
問題箇所の切り分け、対策後の確認は自分の手でやりましょうね。
そのうえで自分では分からなかったら、調べた結果をそのまま渡してください。何を添えるか、何を消すか、どうやって渡すかは、この記事の後半に書いたとおりです。要約せずに丸ごと渡すのが、いちばん早く答えが返ってくる形です。
逃げずにがんばることで自分の知識と経験が増えていきますよ。
この記事では「ping」と「tracert」を使いましたが、調べたい内容によって使うコマンドは変わります。困りごとから選べる一覧と、それぞれの書式をまとめてあります。
なお「つながらない」ではなくつながるけれど重い・途切れるという症状なら、確かめる場所が変わります。




