接続先の一覧を開いたら、家のWi-Fiの名前が1つしか出ていない。前は2つ並んでいた気がするのに——。
あるいは、速いはずの5GHzにつなぎたいのに、どうも遅い。選ぼうにも、名前が1つしかないので選びようがない。
「壊れたのだろうか」「設定を触ってしまったのかも」。そう思った方も多いはずです。
実は、これは故障ではありません。2つの電波を1つの名前でまとめて出す「バンドステアリング」という機能が働いている状態です。多くの機種が持っている機能で、はじめから有効になっているものもあります。
ルーターの設定画面でこの項目を見つけて、オンとオフのどちらがよいのかを決めたくて来られた方もいるはずです。その答えは後半の「そのまま使うか、1台だけ固定するか、名前を分けるか」にあります。ただし、その手前に設定画面でこの項目が見つからないときの注意といまどちらにつながっているかの確かめ方があります。そこまで読むと、後半の表がそのまま使えます。
バンドステアリングは、2.4GHzと5GHzを1つの名前でまとめて出し、どちらに乗せるかをルーターの側から誘導する機能です。名前が1つしか出ないのは、そのためです。
いま速度に不満がなければ、何もしなくてかまいません。名前が1つになっただけでは、実害はありません。
ただし、ルーターにできるのは誘導までです。挙げている理由はメーカーで違いますが、4社とも「端末によっては期待どおりにならない」という但し書きを置いています。
直したいときの選択肢は3つ。そのまま使う/その1台だけ帯域を固定する/名前を分ける。名前を分けるとつなぎ直しが起きるので、台数を数えてから決めてください。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、名前が1つになる理由、なぜ5GHzにつながらないことがあるのか、いまどちらにつながっているかの確かめ方、そして名前を分けるかどうかをどう決めればいいのかまでを解説していきます。
目次
5GHzにつなぎたいのに、2.4GHzにつながってしまう

まず、起きていることを言葉にしておきます。
多くのWi-Fiルーターは、2.4GHzと5GHzという2種類の電波を同時に出しています。この2つは性質が違い、近くなら5GHzが速く、離れた部屋や階が違うところでは2.4GHzのほうが届きます。
名前が2つ出ているときは、多くの機種で名前の中の「A」「G」が目印になります。「A」が5GHz、「G」が2.4GHzです。前のルーターで「〜-a」を選んでいた方は、5GHzを選んでいたことになります。
だから本来は、使う場所に合わせて選ぶのがいちばん良い使い方です。2つの電波の違いと選び方は、別の記事にまとめてあります。
ところが、接続先の一覧に名前が1つしか出ていないと、こちらからはどちらも選べません。「近くだから5GHzにしよう」と思っても、押せる名前が1つしかないからです。
選べないだけではありません。バッファローは、Wi-Fiルーターの選び方についてのよくある質問で、カタログに載せている接続台数の目安に次の注記を付けています。
5GHz/2.4GHzの両方に対応しているWi-Fiルーターは、接続する無線端末が5GHzと2.4GHzに分散されていることが前提です。
つまり「何台つなげるか」という数字は、機器が2つの電波に分かれていることを前提に置かれているということです。同社は別の節で、それぞれの帯域に分散させて接続するとより安定した通信が期待できるとも書いています。Wi-Fiルーターの選び方は、こちらの記事にまとめてあります。
そして、その振り分けを自動でやるための機能が、まさにいま働いているものです。「2.4GHzにつながってしまう」の答えは、この機能が何をどこまでやるのかを知ると見えてきます。次の章から順に見ていきます。
5GHzと2.4GHzを1つの名前で出す「バンドステアリング」

バンドステアリングは band steering と書きます。バンドは「周波数帯」、ステアリングは自動車のハンドル操作、つまり向きを変えることです。つなぎ先の電波を、どちらかへ寄せる機能だと思ってください。
NECは、Atermのマニュアルでこう説明しています(Aterm WX5400HP ユーザーズマニュアル)。
定期的に本商品の周囲の電波強度や対応帯域を判別し、2.4GHz帯と5GHz帯の混雑していない周波数帯へ自動で振り分ける機能です。
バッファローも同じ趣旨の説明をしています。
バンドステアリング・バンドステアリングLiteは、遠くまで届く2.4GHz帯と速度の速い5GHz帯の帯域切替を自動で行う機能です。
この機能によって、接続する帯域(バンド)を意識することなく、快適に通信を行うことが可能になります。
「意識することなく」というのが、この機能のねらいです。使う人が選ばなくて済むようにするために、選ぶための名前をあえて1つにしているわけです。
名前が1つになるのは、2.4GHz側の設定が5GHz側に合わせられるから
なぜ名前が1つになるのか。先ほどのAterm WX5400HPのマニュアルが、仕組みまで書いています。
本機能が有効なとき、プライマリSSIDおよびセカンダリSSIDの下記項目は、2.4GHz帯と5GHz帯とも5GHz帯の設定内容になります。(無効の場合は、2.4GHz帯、5GHz帯それぞれに異なるネットワーク名(SSID)が設定されています。)
SSID(エスエスアイディー)は、接続先の一覧に出てくるWi-Fiの名前のことです。名前の見かたや、ふだん2つ出ている理由はこちらにまとめてあります。
この機種では、2.4GHz側が5GHz側に合わせられる項目は次のとおりです。
- ネットワーク名(SSID)
- リモートワークWi-Fi(ネットワーク分離機能)
- 暗号化モード
- 暗号化キー
- 暗号化キー更新間隔
- ESS-IDステルス機能(SSIDの隠蔽)
名前だけでなくパスワード(暗号化キー)まで5GHz側に揃えられるので、端末から見ると2つの電波の区別が付かなくなります。これが「1つに見える」正体です。
⚠ 揃えられる項目は機種で違います。同じNECでもAterm WG2600HP3では呼び名が「オーナーSSID」で、項目も8つあります。作り方もメーカーで違い、バッファローは利用者が2.4GHz側と5GHz側に同じ値を設定する形です。
メーカーによって、機能の名前が違う
ここで先に、設定画面で迷わないための注意を1つ。
この機能は、メーカーによって別の名前で載っています。TP-Link と ASUS では「スマートコネクト(Smart Connect)」です。役割は同じです(ただし、何を見て振り分けるかは、あとで見るとおりメーカーで違います)。
TP-Linkはスマートコネクトの案内でこう説明しています。
スマートコネクトを有効にすると、ルーターの2.4GHzと5GHzのネットワークは同じSSIDとパスワードを共有します。ユーザーが手動で切り替える必要なく、デバイスはシームレスに接続されます。
ASUSも同じ名前で案内しています(スマートコネクトの設定方法)。複数の周波数帯を1つのネットワーク名にまとめ、端末がつなぐ帯域を自動的に切り替える、という説明です。
つまり、設定画面で「バンドステアリング」が見つからなくても、この機能が無いとは限りません。「スマートコネクト」という名前でも探してみてください。
はじめから有効かどうかは、機種によって違う
「自分で設定した覚えはないのに」と思われたかもしれません。買ったときから有効になっている機種があります。
NECのマニュアルで工場出荷状態を9機種ぶん見ると、同じメーカーの中でも割れていました。
| 機種(NEC Aterm) | 工場出荷状態 |
|---|---|
| WX11000T12 | 有効 |
| WX7800T8 | 有効 |
| WX5400HP | 有効 |
| WX3600HP | 無効 |
| WX1500HP | 無効 |
| WG2600HP4 | 有効 |
| WG2600HP3 | 無効 |
| WG1200HP3 | 無効 |
| IPoE対応ルーター 01 | 無効 |
新しい機種だから有効、というわけでもありません。WX5400HP は有効ですが、同じ時期の WX3600HP は無効で、あとから出た WX1500HP も無効です。
もうひとつ、機種によって違うことがあります。WX5400HP のように、メッシュWi-Fi機能と一体になっていて、この機能だけを切れない機種があります。
自分の機種がどうなっているかは、設定画面で見るしかありません。機種名はルーター本体の側面や底面のシールに書かれています。設定画面の開き方は、あとの章に出てきます。
ルーターにできるのは誘導まで。5GHzを選ぶかは端末が決める

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
バンドステアリングが有効でも、2.4GHzにつながったままになることがあります。しかもそれは不具合ではなく、メーカーが最初からそう書いています。
NECのマニュアルには、注意書きとしてこうあります。
本機能は、IEEE802.11k、IEEE802.11vに対応した子機でのみご利用になれます。
ただし、端末の機能や仕様により周波数帯が切り替わらない場合があります。
バッファローも、機能の比較表の下に一行だけ、同じことを書いています。
一部の端末はバンドの優先度が固定されているため、期待通り誘導されない場合があります
ASUSはさらに踏み込んで、うまく動かないことがあると注意書きを置いています。
注意:スマートコネクトのデフォルト設定では、スマートフォンなどの接続するデバイス側のWi-Fiネットワーク設定によっては、スマートコネクト機能がうまく動作しない、頻繁に切断されるなどの問題が発生する場合があります。
「誘導」という言葉が使われている点に注目してください。ルーターは命令しているのではなく、お願いしているのです。
そのやり取りを手順として書いている資料があります。ヤマハのWLX313 技術資料です。会社や店舗で使う業務用の機器についての説明なので、家庭用ルーターがそのまま同じ動きをするわけではありませんが、やり取りの形はよく分かります。
2.4GHzに接続されている無線端末が条件を満たしている場合、APはこの端末に対してチャンネルの変更要求を出します。
端末はこの要求を受け取ると、APから指定された新しいチャンネルに再接続します。
ただし端末の機能や仕様によっては、再接続を行わない場合があります。
APはアクセスポイント。家庭用ルーターでいえば、Wi-Fiの電波を出している親機にあたります。要求は出せる。けれど、それに従うかどうかは端末が決める——NEC・バッファロー・ヤマハ・ASUS の但し書きは、どれも結果を左右するのが端末の側だと言っています。
中継機やメッシュWi-Fiを入れても近いほうに切り替わらない、という話をご存じの方は、同じ言い回しに気づいたかもしれません。
ただし、2つは別の選択です。中継機の話はどの機器につなぐか(親機か、中継機か)。この記事の話は同じ機器の、どちらの電波に乗るかです。
そもそも対象外の機器がある(802.11k / 802.11v)
先ほどのNECの注意書きに、IEEE802.11k、IEEE802.11vという言葉が出てきました。ここは飛ばさずに読んでください。あなたの家の「あの1台だけ遅い」の理由になっているかもしれないからです。
この2つは、Wi-Fiの追加の決まりごとの名前です。NECは、この2つに対応した機器でしか使えないと書いています。ヤマハも、動作条件の中にこの2つを挙げています。対応していない機器は、そもそも誘導の対象になりません。
つまり、対応していない機器は最初から蚊帳の外ということです。手元のテレビやプリンターが2.4GHzにつながったままでも、機能が壊れているわけではありません。
⚠ 自分の機器が対応しているかを調べる方法は、この記事では案内できません。仕様表に書かれていないことがあるためです。「対応していない機器もある」という前提で、後半の3つの道から選ぶのが現実的です。
何を見て振り分けているかは、メーカーによって違う
もうひとつ、押さえておきたいことがあります。「離れたら2.4GHzに戻してくれる」とは限らないということです。
バッファローは、同社の2つの実装で切り替えの基準が違うことを表で公開しています。
| バンドステアリング | バンドステアリングLite | |
|---|---|---|
| ステアリング設定 | 優先接続バンド設定可能 | 自動のみ |
| 対象SSID | すべてのSSID | 共通SSIDのみ |
| 混雑状況モニター | 〇 | - |
| 帯域切り替え基準 | 電波強度 混雑状況 接続台数 | 電波強度 |
同じメーカーでも、実装によって見ているものが違います。名前に「Lite」が付くほうは、電波の強さだけです。
メーカーをまたぐと、さらに揃いません。NECは「電波強度や対応帯域を判別し、混雑していない周波数帯へ」、TP-Linkは「最も高速な通信が可能な」帯域へ、と書いています。名前が同じ「バンドステアリング」でも、メーカーが違えば何を見ているかは分かりません。
さらに、判断の材料を書いている4社(NEC・バッファロー・TP-Link・ヤマハ)のうち、どの値でどちらへ動かすのかまで書いているのは業務用機のヤマハだけでした。先ほどの資料には、動作条件がこう並んでいます。
本機能が有効になる無線端末は、下記の条件をすべて満たす必要があります。
ただし端末の機能や仕様により、条件を満たしていても周波数帯が変わらない場合があります。
- 2.4GHzおよび5GHzの両方の周波数帯に対応している。
- 802.11kをサポートしている。
- 802.11vをサポートしている。
- APとの通信状態が良好である。
- 受信信号強度(RSSI): -65dBm以上(show airlink station listコマンドで確認するときは30以上)
- 送信レート: 50Mbps以上
この業務用機の場合、誘導は2.4GHzから5GHzへの一方向で、しかも電波が良好なときだけ働きます。裏返すと、電波が弱い場所では「誘導しない」だけであって、2.4GHzへ引き戻してくれるとは書かれていません。
-65dBmという数字の読み方は、電波の強さの記事にあります。
もうひとつ、機能が及ばないところもあります。バッファローは、対応機種の一覧のうち2機種(WNR-5400XE6P・WNR-5400XE6)にだけ、次の注記を付けています。
6GHz帯への切替、および6GHz帯からの切替には対応していません。端末自身の動作によって、6GHz帯から2.4GHz帯/5GHz帯(またはその逆)に切替が行われる場合があります。
同じ一覧には、6GHzを持つ機種が注記なしで何台も並んでいます。同じメーカーの中でも、この2機種だけ事情が違うということです。
そしてこの2機種の注記でも「端末自身の動作によって」と書かれています。機能が届かないところでは、動いているのは端末のほうです。
デメリットは「効かないこと」と「切断されることがあること」
ここまでを、デメリットの形でまとめておきます。2つあります。
① 効かないことがある。対応している機器でも、端末が従うとは限りません(4社に共通です)。さらにNEC・ヤマハの機種では、802.11k / 802.11v に対応していない機器はそもそも対象外です。「近くなら5GHz、離れた部屋なら2.4GHz」という使い分けを、この機能に任せきりにはできません。
② 切断されることがある。ASUSは、端末側のWi-Fiの設定によっては「うまく動作しない、頻繁に切断されるなどの問題が発生する場合があります」と注意しています。会議中や対戦中に起きると困る種類の乱れです。
どちらも「必ず起きる」ではありません。困っていないなら、そのままで問題ありません。困っている場所があるなら、次の章で現状を確かめてから、その次の章で打ち手を選んでください。
いま5GHzと2.4GHzのどちらにつながっているかを確かめる

ここまで読んで、「では、いまどちらにつながっているのか」と思われたはずです。
いつもの見分け方は、この状態では使えません。名前の中の「A」「G」という手がかりが、1つにまとめられて消えているからです。
アイ・オー・データは、この点を端末が接続されている周波数帯を確認したいという案内で、iPhone・iPad についてはっきり書いています。
Wi-Fi の名前(SSID)に周波数を表す数字が付いておらず、接続している周波数の確認はできません。
メッシュ/バンドステアリングの特性上、2.4GHz・5GHz・6GHzのSSIDが統一されているためです。
では、どうするか。確かめ方は3とおりあります。手元にあるものから選んでください。
- STEP
Windowsのパソコンなら、設定画面で見る
アプリを入れずに見られます。設定 → ネットワークとインターネット → Wi-Fi →(つないでいるネットワーク名)のプロパティと開くと、「ネットワーク帯域」という項目があり、そこに 2.4 GHz や 5 GHz といった値が出ます。
アイ・オー・データもWindows 10 の手順として「次の画面の下部に、ネットワーク帯域が表示され、現在の接続先の帯域が確認できます」と案内しています(そちらは通知領域のWi-Fiマークから開く経路です)。MicrosoftのWindows の Wi-Fi についての案内も、この項目を挙げています(そちらでは「ネットワーク バンド」と表記されています)。
- STEP
Androidのスマートフォンなら、詳細画面かアプリで見る
まず、端末のWi-Fiの詳細画面を開いてみてください。周波数が出ていれば、それで足ります。出ていないときは、電波の情報を読み取るアプリで見られます。アイ・オー・データは同社のアプリを使う手順を案内しており、読み方をこう書いています。
「帯域」項目の数字 周波数帯域 2***MHz 2.4GHz 5***MHz 5GHz 6***MHz 6GHz 数字が 2 で始まれば2.4GHz、5 で始まれば5GHz、というだけです。アプリの名前は違っても、周波数を表示するものなら同じように読めます。
- STEP
iPhoneしか無いなら、ルーターの管理画面で見る
上のとおり、iPhone の画面では確かめられません。その場合はルーター側から見ます。この画面はスマートフォンからでも開けます。NECは設定画面の使いかたでこう書いています。
本商品に接続されているパソコンやスマートフォン/タブレット端末などからWebブラウザを使用してクイック設定Webを起動することで、本商品の設定変更や状態確認を行うことができます。
ブラウザに入れるアドレスは機種で違います。バッファローも開き方の案内で、そう断っています。
Wi-Fiルーターの機種により、IPアドレス(初期設定値)が異なります。
アドレスも、はじめてのときのユーザー名とパスワードも、ルーター本体の側面や底面のシール、または付属のカードに書かれていることが多いので、そちらを見てください。
なお、電波の強さの数字(dBm)の見え方は帯域とは別の話です。そちらは電波の強さの記事で、AndroidとiPhoneの違いを整理してあります。
⚠ そもそも「1台だけ遅い」のか「家じゅう遅い」のかが分かっていないという方は、先にそこを切り分けてください。次の章の打ち手は、どちらなのかで変わります。
そのまま使うか、1台だけ固定するか、名前を分けるか

ここまで来ると、「では切ってしまえばいいのか」と思われるかもしれません。ですが、選択肢はオンかオフかの二択ではありません。
| 道 | 向いている場合 | 代償 |
|---|---|---|
| そのまま使う | いま速度に不満がない | 使い分けは機能任せになる。端末側の設定によっては、うまく動かない・切断されることがある |
| その1台だけ固定する | 困っているのが特定の機器だけ(動かさないパソコン、離れた部屋のテレビなど) | 機種によっては、この設定が無い。方式によっては、その1台はつなぎ直す |
| 名前を分ける | 2.4GHzにしかつながらない機器を設定したい。部屋ごと・機器ごとに自分で選び分けたい | 2.4GHz側でつないでいた機器のつなぎ直しが起きる |
その1台だけ固定する(機種による)
意外と知られていませんが、機能を有効にしたまま、特定の機器だけ帯域を決めておける機種があります。
NECは、Aterm WG2600HP3 のマニュアルの本商品に接続された子機を確認するのページで、こう案内しています。
本商品とWi-Fi接続する周波数帯を指定できます。本商品のバンドステアリング機能が有効な場合に設定できます。バンドステアリング機能を有効にした状態で、特定の端末のみ、接続周波数帯を固定したい場合にご利用いただけます。
設定画面でつながっている機器の一覧を開き、その機器の「接続周波数帯」を指定する、という形です。
やり方はメーカーで違います。バッファローはWi-Fi 6E についてのよくある質問で、別の形を案内しています。
バンドステアリング機能搭載機種の場合は、共通SSIDが有効時でも各バンドのSSIDを指定することが可能です。
こちらはまとめた名前を残したまま、各帯域の名前も使えるので、固定したい機器だけをその名前につなぎます。
どちらの方式でも、困っているのが1台だけなら他の機器はつなぎ直さずに済むので、いちばん軽い手です。
⚠ なおバッファローの形では、その1台を別の名前につなぎ直すことになります。
⚠ ただし、ここでも同じ但し書きが付きます。先ほどのNECのページに「端末の機能や仕様により指定した周波数帯に接続できない場合があります。」とあり、固定を指定しても、そのとおりになるとは限りません。
⚠ この設定が無い機種もあります。設定画面に見当たらなければ、次の「名前を分ける」を検討してください。
2.4GHzにしかつながらない機器があるとき
名前を分ける、いちばん切実な理由がこれです。
スマートスピーカー、見守りカメラ、スマートリモコン、古いプリンター。この種の機器には2.4GHzにしか対応していないものがあります。
こうした機器をはじめて設定するときは、たいていスマートフォンで接続先を選ぶ画面が出ます。ところが名前が1つにまとまっていると、その画面で2.4GHzを名指しできません。設定がそこで止まります。
このときは、次のどちらかになります。
- 各帯域の名前も使える機種なら、その2.4GHz側の名前を使う(上のバッファローの形)
- そうでなければ、設定のあいだだけ名前を分ける。設定が終わったら戻すこともできます
⚠ 「その機器が5GHzに対応していない」ことを先に確かめてください。取扱説明書やメーカーのページに書かれています。「この種の機器は2.4GHzだ」と決めつけないほうが、余計な手間を省けます。
名前を分けるときに起きること(つなぎ直す機器を数える)
機能を切れば、2.4GHzと5GHzがそれぞれの名前に戻ります。ここで先に知っておいてほしい代償があります。
NECは、先ほどのAterm WX5400HPのマニュアルで、設定手順のすぐ下に注意書きとしてこう置いています。
2.4GHz帯のプライマリSSIDまたはセカンダリSSIDに接続済みの子機は、本機能を有効にすると、Wi-Fi接続が切断され、そのままの設定では接続できなくなります。本機能により、本商品側のWi-Fi設定内容が変更されるためです。
Wi-Fi接続の設定をやり直してください。
これは「有効にするとき」の話ですが、無効に戻すときも同じ形で2.4GHz側の名前が変わります。同じマニュアルに「本機能を有効から無効にすると、2.4GHz帯のプライマリSSID、および2.4GHz帯のセカンダリSSIDの設定は、有効にする前の設定値に復元されます。」とあるとおりです。
つまり、つなぎ直しが起きるのは2.4GHz側に乗っていた機器です。
ところが、ここに落とし穴があります。どの機器が2.4GHz側にいるのかは、名前が1つのままでは分かりません。前の章の確かめ方は1台ずつ見ていく方法なので、結局家じゅうの機器を一巡することになります。
だから、先に台数を数えておいてください。パソコンとスマートフォンだけではありません。テレビ、ゲーム機、プリンター、スマートスピーカー、掃除機、体重計。数えると思ったより多いはずです。数え方は、パスワードを変えるときの記事と同じです。
ルーターの設定画面にある接続機器の一覧を開けば、いま何台つながっているかをその場で数えられます。
⚠ 前に触れた、メッシュWi-Fiの機能と一体になっている機種では、この機能だけを切ることができません。ただし道が塞がっているわけではありません。NECはこの機種について、帯域を固定したいならメッシュWi-Fi機能ごと「OFF」にして使うよう案内しています。
⚠ ただしその機種をメッシュの親機として使っている場合は、無効にできません。その場合は「そのまま使う」を選ぶことになります。
⚠ 設定画面で項目が変えられないときは、別の設定が効いていることがあります。NECのマニュアルは、こう書いています。
「2.4GHz通信機能」または「5GHz通信機能」をどちらか一方でも「OFF」にすると、「バンドステアリング」および「メッシュWi-Fi機能」は自動的に「OFF」になります。
まとめ
この記事では、Wi-Fiの名前が1つしか出ないときに働いているバンドステアリングと、名前を分けるかどうかの判断を解説しました。
- 名前が1つなのは故障ではない。2.4GHz側の名前・パスワードが5GHz側に揃えられるため(作り方は機種・メーカーで違う)、端末から見て区別が付かなくなる
- メーカーによって呼び名が違う。TP-Link と ASUS では「スマートコネクト」。設定画面で「バンドステアリング」が見つからなくても、無いとは限らない
- はじめから有効かどうかは機種による。NECの9機種を見ただけでも、同じ時期の機種で有効と無効に割れていた
- ルーターにできるのは誘導まで。NECは「端末の機能や仕様により周波数帯が切り替わらない場合があります」、バッファローは「一部の端末はバンドの優先度が固定されているため、期待通り誘導されない場合があります」と書いている
- NEC・ヤマハの機種では、802.11k / 802.11v に対応していない機器は対象外。その機器が2.4GHzのままでも壊れているわけではない
- 何を見て振り分けるかはメーカーで違う。バッファローは同社の中でも「電波強度・混雑状況・接続台数」と「電波強度」に分かれ、どの値でどちらへ動かすかまで公開しているのは、基準を書いている NEC・バッファロー・TP-Link・ヤマハ のうち業務用機のヤマハだけだった
- だから「離れたら2.4GHzに戻してくれる」とは限らない。使い分けをはっきりさせたい場所があるなら、機能任せにしない
- デメリットは2つ。効かないことがあるのと、切断されることがある(ASUSは、端末側のWi-Fiの設定によっては「うまく動作しない、頻繁に切断されるなどの問題が発生する場合があります」と注意している)
- 2.4GHzにしか対応していない機器(スマートスピーカー・見守りカメラなど)を新しく設定するときは、名前が1つだと2.4GHzを名指しできず、そこで止まる。名前を分ける、いちばん切実な理由
- いまどちらにつながっているかは、Windowsの設定の「ネットワーク帯域」(「ネットワーク バンド」と表記される場合もある)/Androidは詳細画面か、周波数を表示するアプリ/iPhoneはルーターの管理画面で見る。名前の「A」「G」では見分けられない
- 打ち手は3つ。そのまま使う/その1台だけ固定する(機種による)/名前を分ける。名前を分けるならつなぎ直す機器の台数を先に数える
「便利にするための機能なのに、かえって分かりにくい」と感じたときは、その機能が何をどこまでやってくれるのかを思い出してみてください。やってくれるのは声かけまでで、返事をするのは手元の端末のほうです。
参考: バンドステアリング機能を使う(NEC・Aterm WX5400HP ユーザーズマニュアル)







