OSI参照モデルとは?7階層とTCP/IPとの違いを解説

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会議で「それはレイヤー2の話だから」と言われた。ルーターの製品説明に「レイヤー3スイッチ」と書いてある。資格の勉強を始めたら、いきなり7つの層を覚えろと言われた。

この「層」の正体が OSI参照モデル です。

先に言葉の対応だけ

レイヤー2 = L2 = 第2層 = データリンク層。全部同じものを指しています。番号で呼ぶ人と名前で呼ぶ人がいるだけです。この記事では「第2層 データリンク層」のように両方を並べて書きます。

7つの名前を暗記しなくても、この記事を読み終えるころには「今の話はどのあたりのことか」がだいたい分かるようになります。あわせて、実際のインターネットで使われている TCP/IP の4階層との違いも見ていきます。

OSI参照モデルとは? 通信を7つの段に分けた地図

「OSI 参照モデル」と書かれた札の下で、頭上に疑問符を浮かべて考え込んでいる人物のイラスト(この節の扉絵)

OSI参照モデルとは、通信で起きていることを7つの段に分けて整理した枠組みです。実際に動いている機械の設計図ではなく、「どこまでが誰の仕事か」を決めるための地図だと思ってください。

なぜ段に分けるのかというと、通信は一度に多くのことをやっているからです。ケーブルに電気を流すことも、相手の住所を見て経路を選ぶことも、届いたデータが壊れていないか確かめることも、全部まとめて「通信」と呼んでしまうと、うまくいかないときにどこを見ればいいのか分かりません。

段に分けておくと、「この段までは動いている」「この段から先が怪しい」という言い方ができます。冒頭の「レイヤー2の話」というのは、この段の番号のことです。

誰が決めたもの?

ISO・IEC と、国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU-T)が共同で定めた規格です。ITU-T 勧告 X.200 と、同一の文章が ISO/IEC 7498-1 としても出ています(1994年版・2026年8月15日確認)。

この記事の7つの層の並びと、それぞれの層の目的は、この原文をもとにしています。各層の「例」に挙げた機器やプロトコルの名前は、原文ではなく現在の実物に合わせたものです。

OSI参照モデルの7階層とそれぞれの役割

OSI参照モデルの7層を示した図。上から アプリケーション層・プレゼンテーション層・セッション層・トランスポート層・ネットワーク層・データリンク層・物理層 が色分けされた帯で積み重なっている

いきなり7つ並べても頭に入りにくいので、まず「荷物を送る仕事を7人で分担している」と考えてみてください。それぞれが自分の担当だけをやって、隣の担当に渡していきます。

層の名前荷物を送る仕事にたとえるとここで扱うデータの呼び名
7アプリケーション層そもそも何を送るかを決めるデータ
6プレゼンテーション層相手が読める言葉で書き、封をするデータ
5セッション層やり取りの始まりと終わりを仕切るデータ
4トランスポート層送り主と受取人の間で、全部そろって届いたかを確かめるセグメント(UDPではデータグラム)
3ネットワーク層住所を見て、どの経路で運ぶかを決めるパケット
2データリンク層隣の営業所へ渡すときの手続きをするフレーム
1物理層実際に道を走って運ぶビット

いちばん右の「データの呼び名」は、今の時点で覚えなくてかまいません。段によってデータの呼び方が変わるということだけ頭の隅に置いておけば、他の解説で急に「フレーム」「パケット」と出てきたときに戸惑わずに済みます。

もうひとつ押さえておきたいのは、7つの段を通る向きです。送る側では上の段から下の段へ順に渡し、受け取る側では下の段から上の段へ順に渡していきます。第7層で作られたデータが第1層まで降りてケーブルや電波に乗り、相手の機器では第1層で受け取ってから第7層まで上がっていく、という流れです。

送る側の機器で第7層から第1層へ順に降り、ケーブルや電波で相手に届いたあと、受け取る側の機器で第1層から第7層へ順に上がっていく流れの図

なお、この割り当ては各層の解説記事でも同じものを使っています。「配達する人」が2つの層に出てくると混乱するので、1つの層に1つの役だけにしてあります。ここからは、下の段から順に見ていきます。

第1層 物理層

0と1の並び(ビット)を、ケーブルの電気や光、無線の電波に変えて相手に送る段です。中身が何かは見ていません。

LANケーブル、光ファイバー、無線の電波、コネクタの形状、リピータハブ

第2層 データリンク層

すぐ隣につながっている機器との間で、データを受け渡す段です。MACアドレスで相手を名指しします。冒頭の「レイヤー2」はこの段のことです。

イーサネット、Wi-Fi、スイッチングハブ(レイヤー2スイッチ、L2スイッチとも呼ばれます)

第3層 ネットワーク層

離れた場所にある相手まで届けるために、経路を決める段です。隣までしか運べないデータリンク層に対して、こちらは「最終的にどこへ届けるか」を見ています。住所にあたるのが IPアドレスで、経路を選ぶ仕事をルーティングと呼びます。

IP、ルーターレイヤー3スイッチ(L3スイッチ)

第4層 トランスポート層

送り主と受取人の間で、データが全部そろって届いたかを見届ける段です。大きなデータを運べる大きさに切り分けたり、抜けていたものを送り直させたりします。パソコンの中で動いている複数のアプリを取り違えないよう、ポート番号で宛先を分けるのもこの段です。

TCPUDP

第5層 セッション層

やり取りの始まりと終わりを仕切る段です。「今から送ります」「これで終わりです」を決め、途中で切れたときにどこから再開するかを扱います。

やり取りの開始と終了、どこまで送ったかの目印を付けて中断したところから再開するしくみ

第6層 プレゼンテーション層

データの見た目の形を整える段です。相手の機械が読める文字コードに直したり、圧縮したり、中身を他人に読まれないように変換したりします。

文字コードの変換、圧縮、暗号化

第7層 アプリケーション層

いちばん上、私たちが直接触る段です。ウェブを見る、メールを送るといった目的そのものと、そのための取り決めがここに入ります。

HTTP(ウェブ)、SMTP(メールの送信)、DNS(名前の問い合わせ)

実際に使われているのはTCP/IPの4階層(OSIとの違い)

ここまで7つの段を見てきましたが、実際のインターネットは7段では作られていません。使われているのは TCP/IP という別の枠組みで、こちらは4つの段です。

インターネットにつながるコンピュータ(ホスト)が満たすべき条件をまとめた RFC 1122(1989年・2026年8月15日確認)は、この4つを次のように並べています。

OSI参照モデル(7段)TCP/IP(4段)
第7層 アプリケーション層
第6層 プレゼンテーション層
第5層 セッション層
アプリケーション層
(Application Layer)
第4層 トランスポート層トランスポート層
(Transport Layer)
第3層 ネットワーク層インターネット層
(Internet Layer)
第2層 データリンク層
第1層 物理層
リンク層
(Link Layer)

右の列(TCP/IPの4段とその英語名)は RFC 1122 に書かれているとおりです。左の列との対応づけは一般的な整理で、RFC 1122 自身がはっきり書いているのはいちばん上の行だけです。

その一行の中身はこうです。TCP/IP のアプリケーション層は「OSI参照モデルの上2つ、プレゼンテーション層とアプリケーション層の働きを実質的にまとめたもの」(原文は英語)。セッション層については触れていません。ただ、TCP/IP に独立したセッション層は無いので、その働きも上の段に入っていると考えて差し支えありません。

同じ層でも名前が違う

RFC 1122 の呼び名は「インターネット層」「リンク層」ですが、本や資料によっては3つめを「ネットワーク層」、4つめを「ネットワークインターフェース層」や「データリンク層」と書くこともあります。どれも同じ段を指しています。

とくに注意したいのは「データリンク層」です。OSI の第2層を指す場合と、TCP/IP のいちばん下(OSI の第1層と第2層をまとめたもの)を指す場合があり、同じ言葉で指す範囲が違います。ケーブルや電波そのものを含めているかどうかで見分けてください。

では7段のほうは要らないのかというと、そうではありません。機器の分類(レイヤー2スイッチ、レイヤー3スイッチ)や、現場での「どこが原因か」という会話は、今も7段の番号で行われています。作るときはTCP/IP、話すときはOSI、というくらいの使い分けだと思ってください。

「どの層の話なのか」を見分ける

7つの名前を覚えることより、目の前の出来事がどのあたりの話かを見当づけられるほうが役に立ちます。よくある症状と、まず疑う段を並べておきます。

起きていることまず疑う段手がかり
機器のランプが点かない。ケーブルを挿しても反応しない第1層 物理層線・電波・コネクタ。挿し直すと直ることがある
同じ島の一部の機器だけつながらない。ハブに挿しているのに反応が無い第2層 データリンク層(レイヤー2)スイッチングハブ、無線の親機、そこに挿さっているケーブル
同じ部屋の機器とはつながるが、外に出られない第3層 ネットワーク層隣までは届いている。経路や住所の設定を見る
ウェブは見られるのに、特定のアプリだけつながらない第4層 トランスポート層ポート番号がふさがれている可能性
つながるが、文字が化ける第6層 プレゼンテーション層文字コードの食い違い
ブラウザに「保護されていない通信」と出る第6層・第7層暗号化とアプリの取り決めの話

コツは下の段から順に確かめることです。物理層が動いていなければ、その上の段は全部動きません。逆に、下の段が動いていると分かれば、疑う範囲を上に絞れます。

この表は当たりをつけるためのもの

1つの症状に原因が複数あることは珍しくありません。層で見当をつけたら、実際の直し方は症状ごとの記事を見てください。業者や情報システム部門に連絡するときも、「どの段までは動いているか」を伝えられると話が早くなります。

OSI参照モデルの覚え方

試験などで順番そのものを問われるなら、頭文字をつなげる方法が使われています。

上から読む(第7層 → 第1層)

アプセトネデブ

プリケーション/レゼンテーション/ッション/ランスポート/ットワーク/ータリンク/ツリ(物理)

下から読むなら「ブデネトセプア」。第1層から数える場面が多いので、こちらで覚えておくと現場の会話に合います。

ただし、試験のために順番を問われる場面でなければ、暗記は必要ありません。実務で困るのはたいてい下の段からなので、「線の話」「隣の機器の話」「経路の話」「アプリの話」の4つのかたまりに分けて考えるほうが、会話にはついていけます。

なお、この4つのかたまりは、上で見たTCP/IPの4段とは別物です。TCP/IP は「線の話」と「隣の機器の話」を1つにまとめてリンク層と呼んでいます。

まとめ

この記事では、OSI参照モデルの7つの層と、実際に使われているTCP/IPの4階層との違いを見てきました。

  • OSI参照モデルは、通信で起きていることを7つの段に分けた地図(ISO/IEC 7498-1・ITU-T X.200)
  • 下から、線で運ぶ(物理層)→ 隣に渡す(データリンク層)→ 経路を決める(ネットワーク層)→ 全部届いたか確かめる(トランスポート層)
  • 上の3つは、やり取りの区切り(セッション層)・形を整える(プレゼンテーション層)・目的そのもの(アプリケーション層)
  • 実際のインターネットはTCP/IPの4段で作られていて、OSIの上のほうの段はまとめられている(RFC 1122)
  • 「データリンク層」は、どちらの枠組みの話かで指す範囲が変わる
  • 困ったときは下の段から順に確かめると、疑う範囲を絞れる

それぞれの層をもっと詳しく知りたい場合は、上の各節にある記事へ進んでください。

この記事で引用した原文は、ITU-T 勧告 X.200(OSI参照モデル)と RFC 1122(TCP/IP の4階層)です。いずれも無料で読めます。

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