セッション層は、OSI参照モデルで通信を7つに分けた段のうち、下から5番目にあたります。「レイヤー5」「L5」と呼ばれるのもこの段です。
1つ下のトランスポート層までで、データが全部そろって届いたかを確かめるところまでは用意されます。ただし「1回のやり取りがどこで始まり、どこで終わるのか」は決めていません。
そこを受け持つのがこの段です。あわせて、いま使われている TCP/IP にこの段が無いのに、仕事だけが残っているという少し込み入った話も整理します。
目次
セッション層とは? やり取りの始まりと終わりを仕切る段

セッション層は、1回のやり取りを組み立てて、その進み具合をそろえる段です。
荷物を送る仕事にたとえるなら、やり取りの始まりと終わりを仕切るところにあたります。「今から10個口で送ります」「これで全部です」と区切りを付ける係で、荷物そのものは運びません。
OSI参照モデルを定めた ITU-T 勧告 X.200(原文は英語)は、セッション層の目的を「やり取り(対話)を組み立て、同期させ、データのやり取りを管理するための手段を提供すること」と定めています(7.3.2.1・2026年8月16日確認)。
なぜセッション層が要るのか
下の段だけで足りないのは、トランスポート層が「データを確実に届けること」に持ち場を絞っているからです。
10個の荷物を送るとき、1個ずつが確実に着いたかは下の段が確かめます。しかし「この10個でひとまとまり」「7個目まで終わった」「途中で切れたので8個目から再開したい」といったやり取り全体の話は、下の段の担当ではありません。
| 段 | 見ているもの |
|---|---|
| 第4層 トランスポート層 | データが全部そろって届いたか |
| 第5層 セッション層 | やり取り全体の始まり・終わり・進み具合 |
セッション層の役割 ― この段がしている3つのこと

始まりと終わりを決める
「今からやり取りを始めます」「これで終わりです」を決めます。電話でいえば、「もしもし」と「では失礼します」にあたる部分です。
どちらが話す番かを決める(トークン管理)
やり取りの進め方には、同時に送り合うやり方と、片方ずつ交代するやり方があり、始めるときにどちらかを選びます(X.200 7.3.1.2・7.3.1.3)。同時に送ること自体は異常ではありません。
交代で送るほうを選んだとき、「いまはこちらの番」を決めるのがトークン管理です(7.3.3.1.1)。トランシーバーで「どうぞ」と言って相手に渡すような取り決めだと考えると分かりやすくなります。
決めるのは送る番だけではありません。やり取りを終える・区切りを打つといった操作の番も、この仕組みで決めます。
途中で切れたとき、どこから再開するかを決める
長いやり取りの途中に目印を置いておき、切れたときはその目印まで戻ります。最初からやり直さずに済むのはこのためです。
⚠ ただし、この段が受け持つのは接続の状態を目印まで戻すところまでです。そこから先の後始末(どこまでを有効な作業とみなすか)は、この段の責任ではないと X.200 が明記しています(7.3.3.7.3)。
「セッション層にはフロー制御(送る量の加減)が無い」と説明されることがあります。X.200 が書いているのは正確には「相手どうしで直接やり取りするフロー制御は無い」で、続きがあります。
受け手があふれそうなときは、セッション層が下のトランスポート接続に「待った」をかけ、トランスポート層のフロー制御を借りて加減します(7.3.4.4)。あふれを防ぐ働き自体は、この段にもあります。
TCP/IPには、セッション層という段が無い
ここまで独立した段として説明してきましたが、いま使われている TCP/IP の4段に、この名前の段はありません。
インターネットにつながるコンピュータ(ホスト)が満たすべき条件をまとめた RFC 1122 は、TCP/IP のアプリケーション層について「OSIの上2つ、プレゼンテーション層とアプリケーション層の働きを実質的にまとめたもの」と書いています。セッション層については触れていませんが、TCP/IP に独立したセッション層は無いので、その働きも上の段に入っていると考えて差し支えありません。
TCP/IP では、下のほうの第1層と第2層も「リンク層」1つにまとめられています。ただしそちらはまとめられただけで、データリンク層という名前は残っています。
それに対して第5層と第6層は、名前ごと出てこなくなります。「上の3つだけが架空」ということではなく、まとめられ方が違うだけです。
では仕事そのものは無くなったのかというと、そうではありません。やり取りの区切りを決める、途中から再開するといった仕事は今もあります。違うのは、それを受け持つ独立した段が無く、上のアプリ側がまとめて引き受けていることです。
教科書がこの段の例として NetBIOS や RPC を挙げるのは、OSI の考え方に沿って作られた数少ない実物だからです。いま私たちが毎日使っているウェブやメールで動いているものではありません。
この段を学ぶ意味は、「届いたか」と「やり取り全体をどう仕切るか」は別の話だ、という区別が付くことにあります。7つの段は、実装の設計図ではなく役割を整理するための地図だからです。
よくある質問
Q
ウェブサイトで出る「セッションが切れました」は、この層の話ですか?
A
同じ「セッション」という言葉ですが、指しているものは別です。あれはウェブサイト側がログイン状態を覚えておく仕組みの話で、OSI参照モデルの第5層そのものではありません。「1回のやり取りのまとまり」という考え方が共通しているため、同じ言葉が使われています。
Q
SSL/TLS は第何層ですか?
A
資料によって第5層とも第6層とも書かれます。TCP/IP にはこの2つを分ける区切りが無いので、どちらか一方が正解とは言えません。TLS は TCP とウェブの取り決め(HTTP)のあいだに入るもので、層の名前をどう割り当てるかより、どの働きをしているかで見るほうが迷いません。
Q
トランスポート層との違いが分かりません。
A
トランスポート層は「データが全部そろって届いたか」を見ます。セッション層はその上で「やり取り全体をどこで始めてどこで終えるか」「途中で切れたらどこから再開するか」を見ます。届けるのが下、仕切るのが上、と覚えると整理できます。
まとめ
この記事では、OSI参照モデルの第5層にあたるセッション層について解説しました。
- 1回のやり取りを組み立てて、その進み具合をそろえる段
- 下のトランスポート層は「届けること」に持ち場を絞っている。その上の仕切りを受け持つ
- していることは3つ。始まりと終わりを決める/どちらが話す番かを決める/どこから再開するかを決める
- 相手どうしで直接やり取りするフロー制御は無いが、下の段に「待った」をかけて加減する働きはある(X.200 7.3.4.4)
- TCP/IP の4段に、この名前の段は無い。仕事そのものは、上のアプリ側が引き受けている
1つ上の段では、送るデータの形をそろえる話に移ります。
セッション層の定義は ITU-T 勧告 X.200 の 7.3 節にあります(無料で読めます)。



