トランスポート層は、OSI参照モデルで通信を7つに分けた段のうち、下から4番目にあたります。「レイヤー4」「L4」と呼ばれるのもこの段です。
1つ下のネットワーク層までで、データは届け先まで運ばれます。ただし、ちゃんと着いたかどうかは誰も確かめていません。
その確認を受け持つのがこの段です。なぜ確認する係が別に要るのか、そして「途中の機器は関与しない」とはどういうことかを、順に見ていきます。
目次
トランスポート層とは? 端から端までを受け持つ段

トランスポート層は、送り主と受取人の間で、データが全部そろって届いたかを確かめる段です。この「送り主から受取人まで」の範囲をエンドツーエンド(end-to-end)、日本語では「端から端まで」と呼びます。
荷物を送る仕事にたとえるなら、送り状の控えを持っている人にあたります。何個口で送ったかを控えと突き合わせ、足りなければもう一度出す。運ぶことも、経路を選ぶことも自分ではしません。
この段のいちばんの特徴は、途中の機器が、この段の仕事には関与しないことです。間にルーターが何台あっても、それらは経路を決めて渡すだけで、「全部そろったか」の確認には加わりません。この段で話しているのは端にいる2台だけです。

OSI参照モデルを定めた ITU-T 勧告 X.200(原文は英語)は、トランスポート層について「(下の段が相手まで運んでくれるので)経路選択と中継の心配を免れている」(7.4.2.4)と定めています。
さらに「トランスポート層のプロトコルはすべてエンドツーエンドの意味を持ち、端のシステムの間でだけ動く」(7.4.2.3)と明記しています(2026年8月16日確認)。
なぜトランスポート層が要るのか
下の段だけで足りないのは、インターネットで使われている IP が、届く保証をしていないからです。
インターネットにつながるコンピュータ(ホスト)が満たすべき条件をまとめた RFC 1122 は、IP を「届くことを保証しない仕組み」と説明し、途中で壊れることも、二重に届くことも、順番が入れ替わることも、まったく届かないこともあると書いています。
そこで、端にいる2台が自分たちで確かめ合うことになります。届かなかったものを送り直させ、順番が入れ替わっていれば並べ直す。これがこの段の存在理由です。
トランスポート層の役割 ― この段がしている4つのこと

運べる大きさに切り分ける
送りたいデータが大きいときは、運べる大きさに切り分けて送り出し、受け取り側で元どおりに組み立てます。切り分けた一片をセグメント(UDPではデータグラム)と呼びます。
⚠ 下の段にも似た言葉があります。データリンク層は分けず、ネットワーク層は「通り道の上限を超えたぶんをさらに分ける」もので、この段とは目的が違います。
全部そろったか確かめ、足りなければ送り直させる
受け取り側が「ここまで届きました」と伝え、送り主はそれを見て、返事の来なかったぶんを送り直します。順番が入れ替わっていれば、並べ直すのもこの段です。
相手が受け取れる速さに合わせる(フロー制御)
送る側が速すぎて受け取る側が処理しきれないと、あふれてしまいます。そこで受け取り側の状況に合わせて、送る量を加減します。
⚠ これも下の段に同じ名前の仕事があります。データリンク層のフロー制御が隣の機器との間で調整するのに対して、こちらは相手のパソコンとの間、つまり端から端までで調整します。
どのアプリ宛てかを分ける(ポート番号)
1台のパソコンでは、ブラウザもメールソフトも同時に通信しています。届いたデータをどのアプリに渡すかを見分けるために使うのがポート番号です。
IPアドレスが「どの機器か」を指すのに対し、ポート番号は「その機器の中のどのアプリか」を指します。
トランスポート層の2つのプロトコル ― TCPとUDP

この段の取り決めは、大きく2つに分かれます。確実さを取るか、速さを取るかの違いです。
| TCP | UDP | |
|---|---|---|
| 重視するもの | 確実に届くこと | 速さ |
| 届いたか確かめるか | 確かめる。足りなければ送り直す | 確かめない |
| 向いている用途 | ウェブ、メール、ファイルの受け渡し | 音声通話、ライブ配信、オンラインゲーム |
「確かめる」のがこの段の代表的な仕事ですが、あえて確かめないUDPも同じ段の取り決めです。X.200 も、切り分けや確認は「つなぎっぱなしにする使い方(コネクション型)」の機能として挙げており、UDPのような使い方では行わないと断っています(7.4.3.1.6)。
UDPを使っているとき、この段が受け持つのは主にポート番号での振り分けです。「どのアプリ宛てか」を決める仕事だけは、どちらでも必要になります。
確認と送り直しをするぶん、TCPは時間がかかります。通話や生中継では、少し欠けても止まらずに進むほうが都合がよいため、確認をしないUDPが選ばれます。
どちらを使うかはアプリの側が決めています。「通話が少し途切れても進むのは、そういう作りだから」と分かれば十分です。
まとめ
この記事では、OSI参照モデルの第4層にあたるトランスポート層について解説しました。
- 送り主と受取人の間(エンドツーエンド)で、全部そろって届いたかを確かめる段
- 下のIPは「届け先へ送り出す」までで、届く保証はしていない
- 途中の機器は、この段の仕事には関与しない。端の2台だけが働く(第3層との分かれ目)
- 切り分け・確認と再送・速さの調整・ポート番号での振り分けの4つを行う
- 確実さを取るのがTCP、速さを取るのがUDP。UDPのときはポート番号の振り分けが主な仕事になる
1つ上の段からは、やり取りの区切りや、データの形を整える話に移っていきます。
トランスポート層の定義は ITU-T 勧告 X.200 の 7.4 節にあります(無料で読めます)。




