光回線を申し込むとき、「ひかり電話(03などの番号)」と「050から始まるIP電話」の両方を案内されて、迷ったことはありませんか?
「どちらもインターネットの電話なのに、何が違うの?」「050は音が途切れやすいって本当?」
実は、IP電話は番号の頭で、国がその電話に求める品質の決まりが切り替わります。03や06のように市外局番から始まる番号の「0ABJ型」と、050から始まる番号の「050型」です。
この記事で「品質の約束」と呼んでいるのは、国が事業者に求めているこの決まりのことです。決まりには、事業者が守るよう努めるものと、満たさなければならないものの2種類があります。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、0ABJ型と050型の違いを、品質の決まり・声の通り道・番号の持ち運びの3つから解説し、どちらを選べばよいかまでお伝えします。
0ABJ型(03などの番号)と050型の違いは、番号の頭によって、国が求める品質の決まりが変わることです。
0ABJ型の事業者は、声の遅れを150ミリ秒未満に保つよう努めるほか、音声を先に通すか、音声だけの通り道を取っておく措置を講じなければなりません。050型の声の遅れの基準は400ミリ秒未満で、音声の通り道の決まりはありません。
番号の持ち運びも違います。0ABJ型は2025年1月から、どの事業者が配った番号でも、事業者を替えて持っていけるようになりました(一部に例外があり、引っ越しを伴うときは同じ番号区画の中だけ)。050型は持ち運びの対象ではありません。
家の電話・FAX・お店や会社の代表番号なら0ABJ型、いまの電話を残したまま持つ2つ目の番号なら050型が向いています。
目次
0ABJ型と050型とは?番号の頭で分かる2種類のIP電話

IP電話は、声を小さなデータの包み(パケット)に分けて、インターネットと同じ技術で運ぶ電話です。
運び方の技術は同じでも、IP電話は使う番号の頭で2つに分かれます。
0ABJ型は、03・06など市外局番から始まる番号のIP電話
0ABJ型は、03(東京)や06(大阪)のように、市外局番から始まる固定電話と同じ形の番号を使うIP電話です。総務省の資料では「0AB-J番号」(ゼロエービージェイ番号)と書かれます(この記事では0ABJと書きます)。総務省の電気通信番号計画も、固定電話番号の形を「0ABCDEFGHJ」と、0のあとの9けたに文字を当てて書いています。
NTT東日本・NTT西日本の光回線の電話「ひかり電話」がこの型です。NTT東日本の解説も、03などの番号をテレワークの端末で使えるクラウド型の電話サービスを紹介しています。
なお、NTTの昔からの固定電話(加入電話)も03などの同じ形の番号を使いますが、こちらは国の決まりでもアナログ電話の区分で、この記事でいう0ABJ型のIP電話とは別です。0AB-J番号は、アナログ電話と同じ番号です。
050型は、050から始まる番号のIP電話
050型は、050から始まる11けたの番号を使うIP電話です。総務省の番号の決まり(電気通信番号計画)では「特定IP電話番号」と呼ばれます。
プロバイダが提供するIP電話や、スマホのアプリで使う050番号がこの型です。市外局番を含まないので、番号から場所は分かりません。
番号の頭で品質の違いが分かるように、国が分けた
050番号がIP電話に配られるようになったのは2002年です。このとき、昔からの電話と同じ品質に届かないIP電話にも、050番号が配られることになりました。
番号を分けた理由を、総務省の研究会の報告書(2014年)はこう説明しています。
番号の違い(03/06か 050か)を見るだけで技術的・専門的知識のない利用者でも適切なサービスや品質の違いを容易に識別できるようにしておくことが重要である
つまり番号の頭は、電話に貼られた品質の表示ラベルのようなものです。食品の表示を見れば中身の違いが分かるように、番号の頭を見れば、その電話に国がどこまでの品質を求めているかが分かります。
いまの法令も、この区別のとおりにできています。品質の決まりを定めた総務省令(事業用電気通信設備規則)は、0ABJ型の決まりを「固定電話番号を使用して電気通信役務を提供するインターネットプロトコル電話用設備」に当てると書き、番号で当てる決まりを切り替えています。
0ABJ型と050型の違いは「国が求める品質」

品質の決まりは、上の総務省令と、その細かい値を定めた総務省の告示(事業用電気通信設備規則の細目を定める件)に書かれています。並べると、次のようになります。
| 決まり | 0ABJ型(03など) | 050型 |
|---|---|---|
| 声が届くまでの遅れ | 150ミリ秒未満 | 400ミリ秒未満 |
| 音声の聞こえ方の点数(R値) | 基準なし(2015年に削除) | 50を超えること |
| 回線の遅れ・揺らぎ・パケットの損失 | 基準あり | 基準なし |
| 音声を先に通す・音声だけの通り道 | どちらかの措置が義務 | 決まりなし |
| FAX | 正常に送受信できること | 決まりなし |
| 緊急通報(110番・119番など) | 使えることが番号の条件(例外あり) | 条件にない(サービス次第) |
注意が2つあります。1つ目に、表のうち「声が届くまでの遅れ」「音声の聞こえ方の点数(R値)」「回線の遅れ・揺らぎ・パケットの損失」は、総務省令の上では、事業者が基準を守るよう努める決まり(努力義務)です。「音声を先に通す・音声だけの通り道」と「FAX」は、事業者が満たさなければならない決まり(義務)です。
2つ目に、表の「決まりなし」は、使えないという意味ではありません。国の決まりが無いだけなので、050型でFAXや110番が使えるかは、サービスごとに確かめます。
声が届くまでの遅れ:0ABJ型は150ミリ秒未満、050型は400ミリ秒未満
話した声が相手の電話に届くまでには、わずかな時間がかかります。この遅れ(電話機から相手の電話機までの平均)について、総務省の告示は0ABJ型に「端末設備等相互間の平均遅延の値を一五〇ミリ秒未満とする」と定めています。
050型の基準は、平均の遅れが400ミリ秒未満で、音声の聞こえ方を点数にした「R値」が50を超えることです(告示の第五条第2項。2014年の告示改正案の新旧対照表で、改正案と当時の告示の値は同じ)。
050型には、番号の側の条件もあります。電気通信番号計画は、050番号を使う条件に「特定総合品質を満たすこと」を挙げており、これはこの基準のことです。
150ミリ秒と400ミリ秒は、電話の遅延について国際電気通信連合(ITU-T)がG.114という勧告で示している目安にも出てくる数字です。それぞれがどんな目安なのかは、遅延の記事で扱っています。
0ABJ型にもかつてはR値が80を超えるという基準がありましたが、2015年の告示の改正で削られました。
削られたのはR値の部分だけで、声が届くまでの遅れ(150ミリ秒未満)と回線の質の基準は残っています。R値は回線の遅れやパケットの損失を主な材料にして計算する点数なので、総務省の研究会の報告書は「ネットワーク品質の基準値を規定するのみで R 値の基準も確保可能」と考えていました。
比較の記事で「0ABJ型はクラスA」という書き方を見かけますが、2015年の改正のあと、告示は0ABJ型にR値(このクラスの格付けの材料)の基準を置いていません。このクラスは通話品質の格付けで、IPアドレスのクラスとは別物です。
0ABJ型にだけある、回線の質・安定・FAX・緊急通報の決まり
0ABJ型には、声が届くまでの遅れのほかに、回線そのものの質の基準もあります。電話機の手前の、事業者の設備と利用者の機器の境目どうしのあいだ(事業者の設備の区間)で、平均の遅れは70ミリ秒以下、遅れの揺らぎは20ミリ秒以下、パケットの損失は0.5%未満、というものです。
また、総務省令は0ABJ型の基本の機能として「ファクシミリによる送受信が正常に行えること。」を求めています。050型には、回線の質の基準もFAXの決まりもありません。
緊急通報も違います。電気通信番号計画は、固定電話番号を使う条件の1つ目に「利用者が緊急通報を行うことが可能であること。」を挙げています(特定の業務の用に限った番号などの例外はあります)。050番号を使う条件には、緊急通報は入っていません。
050型で110番・119番がかけられるかどうかはサービス次第です。番号の種類と緊急通報の関係は、IP電話の記事で詳しく扱っています。
050型の音質は、回線の混み具合に左右されやすい

050型の電話で、声が途切れたり遅れて聞こえたりすることがあります。0ABJ型と比べたときの大きな違いは、音声を先に通す決まりがあるかどうかです。
0ABJ型の事業者は、音声を先に通すか、音声だけの通り道を取っておく
総務省の告示は、0ABJ型の事業者に、次のどちらかの措置を講じるよう求めています(安定品質)。
- 音声を「優先的に伝送交換するために必要な措置」
- 「音声のみを伝送交換する帯域を確保するために必要な措置」
道路にたとえると、前者は「救急車が来たら、ほかの車が道を譲る」やり方、後者は「バス専用レーンを最初から引いておく」やり方です。どちらでも、ほかの通信が混んでいるときに声が後回しにされにくくなります。
ただし、告示が求めているのは事業者の設備での措置です。家の中のルーターや配線の調子まで、国の決まりが面倒を見るわけではありません。
050型は、家や会社の回線が混むと声が途切れやすい
050型には、音声を先に通す決まりがありません。そのため、050型の声のパケットは、動画やファイルのやり取りと同じ列に並ぶことがあります。
NTT東日本も、050番号の解説で、050番号は「インターネットの接続環境に影響されやすく」と書いています。
声が途切れるのは、パケットの届く間隔がばらつく(揺らぎ)か、途中で落ちる(損失)ときです。くわしくはVoIPの記事で扱っています。声が遅れて聞こえるのも、回線が混んで順番待ちが起きると増えます。
050型で声が途切れるときは、次の順に試してみてください。
- 通話中は、同じ回線での大きなダウンロードや動画の再生を控える
- スマホのアプリで話しているなら、Wi-Fiとモバイル回線を切り替えて、途切れ方が変わるか比べる(Wi-Fiは遅れの揺らぎが出やすい)
- ルーターに音声を先に通す設定(QoS)があれば使う。効くのは主に、家や会社の中で通信が取り合いになっているとき。ほかに誰も使っていないときでも途切れるなら、家の中で順番を入れ替えても効きにくい
- 大事な通話が多いなら、0ABJ型の電話を使う
0ABJ型と050型で違う、番号の持ち運び

番号を何年も使うつもりなら、品質と同じくらい大事なのが、番号を持っていけるかどうかです。
0ABJ型は、2025年1月からどの事業者の番号でも持っていける
総務省のパンフレット(2025年4月)によると、2025年1月から、NTT東西を含むすべての固定電話の事業者のあいだで、番号ポータビリティ(番号を変えずに事業者を乗り換える仕組み)が使えるようになりました。
それまで番号を持っていけたのは、NTT東西の加入電話・INSネットから、ひかり電話やほかの事業者へ移すときだけでした。いまは、ほかの事業者が配った03などの番号やひかり電話の番号も、事業者を替えて使い続けられます。
ただし例外もあります。NTT東西以外の事業者や、ひかり電話のために配られた番号を、NTT東西の加入電話・INSネットへ移すことはできません(総務省「固定電話の番号ポータビリティ」)。この例外が関わるのは、NTT東西の加入電話・INSネットへ移るときです。ほかにも、事業者の設備が扱える番号の範囲が違うときなどの例外があります。
光回線そのものを転用・事業者変更で乗り換えるときに、ひかり電話の番号がどうなるかは、こちらの記事で扱っています。
0ABJ型の番号は、引っ越すと変わることがある(番号区画と収容局)

0ABJ型の番号は場所に結びついているので、引っ越すと番号が変わることがあります。気をつけるところは、引っ越しと同時に事業者を乗り換えるかどうかで分かれます。
引っ越しと同時に乗り換えるときは、番号区画を見ます。同じパンフレットは、引っ越しを伴う番号ポータビリティについて「番号区画内でのみ行えます」と書いています。
番号区画は、市外局番より細かいことがあります。パンフレットの例では、東京都八王子市から青梅市への引っ越しは、市外局番がどちらも042でも番号区画が違うため、番号を持っていけません。
事業者を替えずに引っ越すときも、収容局(電話回線を収容する局)が変わると番号が変わることがあります。NTT東日本の解説は、同じ市区町村の中で収容局も同じなら基本的には変わらない一方、同じ市区町村でも収容局が異なると番号が変わる可能性が高い、としています。ソフトバンク光の光電話(N)の重要事項にも、収容局が変わる場所へ引っ越すと同じ番号を使えない場合がある、とあります。
番号が変わるかが分からないときは問い合わせるよう、NTT東日本も案内しています。引っ越しが決まったら、申し込む前に事業者へ次のことを確かめておきましょう。
- 新しい住所で、いまの番号を使い続けられるか
- FAXに別の番号を使っているなら、その番号も使い続けられるか
- いまの番号が、どの事業者のどのサービスの番号か(ひかり電話などの番号を加入電話へ移せない例外に当たるかが分かる)
050型は、場所に縛られないが、事業者を替えると番号が変わる
050型の番号は、場所に結びついていません。NTT東日本の解説は、050番号はオフィスが移転しても番号を引き続き使える、と書いています。
その代わり、総務省のパンフレットは、050から始まる番号は「番号ポータビリティの対象ではありません」としています。050型のサービスを解約したり、別の事業者に乗り換えたりすると、番号は手放すことになります。
0ABJ型と050型、どちらを選ぶか

ここまでの違いを、使い道に置き換えてみます。
0ABJ型が向くとき(家の電話・FAX・お店や会社の代表番号)
- 家の電話として、110番や119番をかけるかもしれない
- FAXを使う
- お店や会社の代表番号として名刺や看板に載せ、事業者を替えても同じ番号を使い続けたい
- 声の途切れが困る通話が多い
名刺に載せる番号は、あとから変えるのが大変です。引っ越しや移転の予定があるなら、移転先が同じ番号区画かどうかも合わせて確かめましょう。
050型が向くとき(2つ目の番号・場所を選ばない使い方)
- いまの電話を残したまま、仕事用などの2つ目の番号がほしい(会社なら、代表番号は0ABJ型のまま、社員のスマホに仕事用の050番号を足す、など)
- 引っ越しや移転が多く、場所に縛られない番号がほしい
- 工事をせず、手軽に番号を持ちたい
NTT東日本の050番号の解説は、050番号について「番号が簡単に手に入りやすく導入コストも安い」と書いています(料金はサービスごとに違います)。
050型を選ぶときは、次のことを確かめておくと安心です。
- 110番・119番や、0120などの番号にかけられるか(NTT東日本の解説は、050番号は0120番へも基本的には発信できないとしています)
- 家や会社の回線が混む時間帯に、通話が多くないか
- 同じ事業者を長く使い続けるつもりか(乗り換えると番号を手放すため)
スマホのアプリで050番号を足すなら、電話が鳴らない場面、携帯で話しているときの着信の出方、サービスが終わったときに番号がどうなるかも、選ぶ前に確かめておきましょう。050アプリの記事にまとめています。
まとめ
この記事では、0ABJ型と050型の違いを、品質の決まり・声の通り道・番号の持ち運びから解説しました。
- 番号の頭は品質の表示ラベル。03などの0ABJ型と050型で、国が求める品質の決まりが変わる
- 声が届くまでの遅れの基準は、0ABJ型が150ミリ秒未満、050型が400ミリ秒未満(総務省令の上では、どちらも事業者が守るよう努める基準。050型は番号を使う条件でもある)
- 0ABJ型の事業者には、音声を先に通すか音声だけの通り道を取っておく措置が義務づけられている。050型にはその決まりが無く、家や会社の回線が混むと声が途切れやすい
- 0ABJ型は2025年1月から、どの事業者が配った番号でも事業者を替えて持っていける(一部に例外があり、引っ越しを伴うときは同じ番号区画の中だけ)。050型は持ち運びの対象ではない
- 家の電話・FAX・代表番号は0ABJ型、2つ目の番号は050型が向いている
番号の頭を見るだけで、その電話に何が求められているかが分かります。申し込みの案内で番号を選ぶときは、この記事の表を思い出してみてください。






