「今より安くなりますよ」と電話で言われて、その場で光回線を申し込んだ。数日後に届いた書面を読んだら、思っていた話と違う——。
「もう契約してしまったから、やめられないのだろうか」「工事はまだ先だけれど、いま言えば間に合うのだろうか」。そう思って、このページを開いた方もいるはずです。
結論から言うと、光回線にも、契約したばかりなら相手の合意なしにやめられる制度があります。電気通信事業法の初期契約解除制度です。
ただし、期限の数え方に落とし穴があります。8日を数え始めるのは「契約書面が届いた日」で、申し込んだ日でも工事の日でもありません。しかも、どの書面を起点として案内しているかは事業者によって違います。
1. 手元の契約書面を探してください。紙で届いた封筒か、承諾していれば電子メールやウェブページです。その書面を受け取った日を1日目として、8日目までが期限です(届いた日が1日目なので、8日目は届いた日の7日後にあたります)。電話で勧誘された契約では先に「説明書面」が届くので、起点にするのはそのあとに届く「契約書面」のほうです。
2. 工事がまだなら、先に事業者へ電話して「工事前のキャンセル」を聞いてください。光回線では工事前なら無料で受け付けていることが多く、そちらのほうが失うものが少なくて済みます。
3. 8日目が近いなら、電話の返事を待たずに書面を出してください。葉書で構いません。出した日に効力が生じるので、8日目に投函すれば間に合います。
⚠ やめられても、お金が全部戻るわけではありません。使った分の料金・事務手数料・すでに終わった工事の費用は請求されます。ただし工事の費用と事務手数料には法令の上限があります。
どこから読むか。もう出すと決めた方は「初期契約解除を申し出る手順」へ。工事がまだの方は「工事の前なら、制度を使う前に確かめられる道がある」へ。工事が終わっている方は「初期契約解除をしても、支払うことになるお金がある」へ。8日を過ぎたかもしれない方は「8日を過ぎていても、解除できることがある」へ進んでください。
⚠ 会社などが事業のために結んだ契約は、この制度の対象から外れます。ただし名義だけでは決まりません。判定と、そのとき残っている道は「初期契約解除が使えない契約と、そのときに残っている道」にまとめました。判断に迷ったら、消費者ホットライン「188(いやや)」で最寄りの消費生活センターにつながります。国民生活センターは「家族や地域包括支援センターの職員など周囲の方からでも相談できます」としているので、ご家族の契約についての相談もできます。
この記事では、ネットワークや法律にくわしくない方でもわかるように、初期契約解除がどんな契約に使えるのか、8日をいつから数えるのか、どうやって申し出るのか、やめたときに何を払うことになるのか、そして使えないときに何が残っているのかまでを解説していきます。
⚠ この記事は光回線・ケーブルテレビのインターネットなど、家に線を引く契約を中心に書いています。スマートフォンやポケット型Wi-Fiは、同じ制度でも数え方が変わるところがあるので、そのつど断っています。
目次
初期契約解除とは、8日以内なら相手の合意なしでやめられる制度

初期契約解除(しょきけいやくかいじょ)とは、契約したばかりの一定期間なら、相手が「はい」と言わなくても、こちらの都合だけで契約を切れるという制度です。2016年5月に施行された改正電気通信事業法で設けられました。
ふつうの契約は、いったん結べば片方の都合ではやめられません。買い物にたとえるなら、レジを通ったあとに「やっぱり返します」と言っても、お店が受けてくれるかどうかはお店しだいです。この制度は、その「お店しだい」の部分を法律で外したものだと考えてください。
総務省は、ガイドラインの中でこの制度をこう説明しています。
初期契約解除制度とは、一定の範囲の電気通信役務契約について、契約書面の受領日を初日とする8日(※)が経過するまでの間は、相手方である電気通信事業者の合意なく、利用者の都合のみにより契約解除できるとする制度であり
出典は電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン(総務省・PDF)です。以下、この記事で「ガイドライン」と書いているのは、すべてこの資料を指します。
ここで読み飛ばしてほしくないのが、「契約書面の受領日を初日とする8日」という部分です。申し込んだ日でも、工事の日でも、使い始めた日でもありません。ここは記事の中ほどで、あらためて分けて説明します。
クーリングオフ(クーリング・オフ)とは何が違うのか
先に答えを書きます。買った場所を問わずに使えるのが初期契約解除で、そのかわり無料とは限りません。訪問販売や電話勧誘だけでなく、店頭で自分から申し込んだ契約でも使えます。
ガイドラインは、両者の関係をこう整理しています。
他の一般的な役務・商品の訪問販売や電話勧誘販売等について特定商取引法等により認められる無償での契約解除(いわゆるクーリング・オフ)と類似の制度であるが、本法の制度は、店舗販売を含め販売形態によらない契約解除の権利を利用者に認める一方、契約解除に伴い一定の範囲の額の支払を電気通信事業者が請求すること(対価請求)を可能としている。
読みにくい一文ですが、違いは2つです。
- 買った場所を問わない。訪問や電話で勧誘されたときだけでなく、店頭で自分から申し込んだ契約でも使えます
- そのかわり、無料とは限らない。事業者は決められた範囲のお金を請求できます
「クーリング・オフのように無料で全部なかったことになる」と思って進めると、あとで請求書を見て驚くことになります。やめられる範囲は広く、戻るお金は限られている——この2つをセットで覚えてください。
初期契約解除の対象に、光回線とプロバイダは入っている

この制度は、すべての契約に使えるわけではありません。総務省が名指しした種類のサービスだけが対象です。
ガイドラインは対象を「移動通信」と「固定通信」に分けて並べています。固定通信の側は次の4つです。
| 対象 | 身近な言い方 |
|---|---|
| FTTHインターネットサービス | 光回線(フレッツ光・光コラボ・独自回線) |
| CATVインターネットサービス | ケーブルテレビのインターネット |
| 上の2つ向けの分離型ISPサービス | 回線とは別に契約しているプロバイダ |
| DSLサービス向けの分離型ISPサービス | ADSLの回線とは別に契約しているプロバイダ |
「FTTH」は光ファイバーを家まで引く方式のことなので、いわゆる光回線はここに入ります。フレッツ光でも、光コラボでも、電力会社系の独自回線でも同じです。ケーブルテレビのインターネットも対象で、この記事の内容がそのまま当てはまります。
共同住宅のVDSL・LAN配線方式も、光回線として対象に入る
マンションにお住まいの方は、ここでつまずくことがあります。建物の入口までは光ファイバーでも、そこから各部屋までは電話線(VDSL)やLANケーブルを使っている建物があるからです。
「うちは光ファイバーが部屋まで来ていないから、光回線ではないのでは」と考えてしまいそうですが、ガイドラインはそこまで書いています。
いわゆる光ファイバのインターネットサービスであり、利用者の共同住宅等内ではVDSL(銅線)やLANケーブルを用いるものも含む。
建物の中の配線が何であっても、契約しているのが光回線なら対象だということです。建物内の配線方式の見分け方は、こちらの記事にまとめてあります。
プロバイダだけを別に契約している場合も、それ単体で対象になる
回線の契約とプロバイダの契約が別々になっている方もいます。フレッツ光を使っていて、接続の会社を自分で選んでいる形です。
この場合、プロバイダの契約だけを初期契約解除することもできます。ガイドラインは「それ単体として初期契約解除対象となる」と書いており、回線をそのままにして接続の会社だけをやめる、という使い方が想定されています。
ガイドラインがこれを対象にした理由も書かれていて、電話勧誘でパソコンを遠隔操作させ、接続先の会社を簡単に変えさせてしまう手口があるためだとしています。
8日をいつから数えるか — 起点は「契約書面が届いた日」

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。
数え始めるのは契約書面を受け取った日で、その日を1日目として8日目までです。ガイドラインの表現はこうなっています。
初期契約解除が適用される契約であれば、利用者は、契約書面の受領日を1日目として8日目までの間(※)に、契約解除を行う旨の書面(葉書で可)を発することにより、契約解除を行うことができる。契約書面の受領前でも、行うことが可能である。
「受け取った日」がいつなのかも、決まりがあります。ガイドラインは、契約書面を入れた封書が郵便受けに配達されるなど、その中身を知ることができる状態になった日だとしています。開封した日ではありません。なお、承諾していれば契約書面は電子メールやウェブページで届くこともあり、その場合も届いた日が起点です。
先に届く「説明書面」は起点にならない
電話で勧誘された契約では、書面が2通届きます。国民生活センターは2026年7月1日に公表した資料で、こう注意しています。
電話勧誘の契約では、「説明書面」と「契約書面」の2つの書面が送付されます。
これは光回線サービスの電話勧誘トラブルが増えています!(国民生活センター)によります。同じ資料は、光回線の相談のうち電話勧誘によるトラブルが約6割を占めているとも書いています。
先に届く「説明書面」は契約する前の説明のためのもので、8日を決めるのは、契約が成立したあとに届く「契約書面」のほうです。最初に届いた封筒の日付で数えると、実際より短く見積もってしまいます。
何を起点として案内しているかは、事業者によって違う
ここまでが法律の決まりです。契約書面そのものは、契約が成立したときに遅滞なく交付されるものだとガイドラインは書いています。
そのうえで、どの書面を起点として案内しているかは、事業者ごとに違います。大手3社の案内を見ただけでも、次のように分かれていました。
| 事業者 | 案内されている起点 |
|---|---|
| NTT東日本(フレッツ光) | 「開通のご案内」の到着日から8日以内 |
| NTT西日本 | 申し込み後に送られるご案内を受領した日から起算して8日 |
| ドコモ光 | 「ドコモ光契約申込書」を受領した日から8日以内 |
NTT西日本のご案内とドコモ光のページは、申し込みのあとに送られる書面を起点にしています。一方、NTT東日本の初期契約解除のページには「開通工事は完了してますか?」という確認項目まであり、工事が終わったあとに届く「開通のご案内」を起点として案内しています。同じ光回線でも、東日本と西日本で違うということです。
法律の起点よりあとを案内することもできます。ガイドラインは、事業者が独自に8日より長い期間を設けるなど「利用者に有利な定めがされているのであれば、それは有効である」としているからです。つまり、確かめるべきは「一般にいつか」ではなく「自分の契約はどれか」です。
「使ってみて、遅かったらやめればいい」と考えて、開通を待つ。
ところが、契約書面が申し込みの直後に届く事業者では、開通したときには8日が終わっています。
光回線の工事は、申し込んだその日には行われません。日程を調整して後日になるので、待っているあいだに期限が過ぎることがあります。
⚠ 自分の起点は、契約書面の「初期契約解除のご案内」の欄に書かれています。待つ前に、そこを読んでください。
⚠ モバイルには、この起点がずれる例外があります。ガイドラインは「例外的に、移動通信役務の場合で役務の提供開始日の方が遅いときは、その提供開始日を初日とする8日となる」としています。この例外は移動通信だけで、光回線やケーブルテレビには用意されていません。ポケット型Wi-Fiやホームルーターの場合は、モバイルWi-Fiの記事で扱っています。
8日を過ぎていても、解除できることがある
数えてみたら過ぎていた、という方も、ここで閉じないでください。ガイドラインは、期間が延びる場合を書いています。
初期契約解除対象となる電気通信役務契約について、契約書面が交付されていない場合は、いつでも初期契約解除をすることができる。また、契約書面を受領して8日間を過ぎているなど初期契約解除可能な期間が既に形式上終了していたとしても、少なくとも、初期契約解除を行うことができる旨の記載が欠落しているなど書面内容に重大な不備がある場合は、初期契約解除可能な期間が継続していると通常判断されるものと考えられる。
そもそも書面が届いていないなら、8日は始まっていません。では「重大な不備」かどうかは、どこを見れば分かるのか。契約書面には、初期契約解除について次の7つを書く義務があります(ガイドライン 第3章)。
- 初期契約解除ができるということ
- 初期契約解除ができる期間
- 制度について事実と違うことを告げられたときの扱い
- 解除を求める書面の送付の宛先など標準的な手順(書面の記載例を含む)
- 書面を発した時に効力が生じること、(請求できる額を除いて)違約金などを請求されないこと、すでに受け取った金銭は返すこと
- 支払うことになる額の算定方法
- 自動では解除されない契約(特定解除契約)があるときは、その旨と解除の方法
⚠ 4つ目の手順に従わなくても、解除はできます。ガイドラインは「記載内容にかかわらず、契約解除を求める書面が8日間経過するまでに発送さえされればその時点で初期契約解除が有効となることに変わりはない」としています。
3つ目は、事業者が事実と違うことを告げたために、それを本当だと思って8日のあいだに解除しなかった場合の話です。この場合は、解除できる旨を書いた書面をあらためて受け取った日から数え直します(電気通信事業法 第26条の3第1項)。NTT西日本も、同じ内容を自社のページで案内しています。
⚠ どれも「自分はこれに当たる」と決めつけて進める話ではありません。ただし、受け取った日がいつだったかを争う場面では、事業者の側が証明する責任を負うとガイドラインに書かれています。受け取った日を覚えていなくても、そこで諦める必要はありません。事実をそのまま伝えて相談してください。
初期契約解除を申し出る手順 — 何を書いて、どこへ出すか
やると決めたら、やることは1つです。解除する旨を書いた書面を出す——期間内なら、それだけで契約は切れます。
ガイドラインが載せている契約書面の様式例には、解除の書面の記載例として次の項目が示されています。
- 契約書面を受け取った日
- 契約者番号(お客さま番号)
- サービス名とプラン名
- 月額の基本料
- 「上記契約を解除します。」の一文
- 差出人の住所・契約者名・電話番号
⚠ これは総務省が示した様式の例で、決まった書式があるわけではありません。契約書面に自社の様式が示されていれば、そちらに従ってください。
出す先は、契約書面に書いてあります。ガイドラインは、初期契約解除が適用される契約の書面には「契約解除を求める書面の送付の宛先等の標準的手順」を記載する必要があるとしています。宛先は事業者ごとに違うので、ここでは書けません。手元の書面で探してください。
⚠ 勧誘してきた相手と、契約先の事業者は別のことがあります。国民生活センターは、光回線の電話勧誘について「正しい事業者名やサービス名を名乗らず、契約中の事業者であるかのように装った説明で消費者を誤認させている」事例を挙げています。出す先は、契約書面に書かれている事業者です。
効力が生じるのは書面を出した日で、相手に届いた日ではありません。ガイドラインは、期間内に出したことを証明できるよう特定記録郵便や簡易書留を使い、書面のコピーを保存しておくことをすすめています。NTT西日本は、この点について郵便の消印日を書面の送付日として扱うと案内しています。
電話で受け付けている事業者もあります(NTT西日本は電話での申告についても案内しています)。ガイドラインも、両者の合意があれば書面以外の方法でも解除は成立しうるとしていますが、同時に「口頭や電話のみでの申出は避けるなどして、何らかの証拠を残すことがより安全」と書いています。電話で伝えたうえで、書面も出しておくのが確実です。
工事の前なら、制度を使う前に確かめられる道がある

ここまでは、法律の制度を使うときの手順でした。工事がまだ済んでいないなら、その前に確かめられる道がもう1つあります。
通信業界の4団体でつくる電気通信サービス向上推進協議会は、自主基準の第8条で次のように定めています。
訪問又は電話による勧誘の誤認防止を目的として、事業者は、当該申出に係る電気通信サービスがサービス提供開始前の場合(回線敷設工事を伴うものにあってはその工事前の場合)は、原則その利用者に係る料金及び経費の支払いを求めないものとする。
出典は電気通信事業者の営業活動に関する自主基準及びガイドライン(電気通信サービス向上推進協議会・PDF)です(以下この記事では「自主基準」と呼びます)。同じ条文には、この規定が光回線とケーブルテレビのインターネットに限られることも書かれています。
ここには根拠が2つあり、強さが違います。どちらを持ち出すかで話し方が変わるので、分けておきます。
| 根拠 | 効く範囲 | 強さ |
|---|---|---|
| 自主基準 第8条第2項 | 光回線・ケーブルテレビ/訪問または電話による勧誘/協議会の構成4団体に加盟している事業者 | 業界の申し合わせ(「原則」) |
| ガイドライン(総務省) | 光回線について「工事前なら無償のキャンセルを受け付けているのが通常」 | 事業者に確認するのが有効だ、という案内 |
総務省はガイドラインの中でこの自主基準を名指しし、工事前なら無償での契約解除に応じる取り組みが「行われることが望ましい」とも書いています。
⚠ どちらも法律上の権利ではありません。確実な権利は初期契約解除のほうなので、8日目が近いなら、電話の返事を待たずに書面を出してください。
それでも先に電話をすすめるのは、どちらの道を通るかで結果が変わることがあるからです。国民生活センターは、いま使っている光回線を転用(乗り換え)したあとで元に戻す場合について、2つの違いを書いています。
| 通る道 | 元のNTT東西に戻すとき |
|---|---|
| 初期契約解除で戻す場合 | 工事が必要な「新たな契約」になり、電話番号などは原則変更 |
| 自主基準のキャンセル(工事前)で戻す場合 | 工事前なので、通常は電話番号がそのまま |
この整理は光コラボレーションって何ですか?(その3)初期契約解除について(国民生活センター)によります。長く使っている固定電話の番号がある方には、この差はお金より大きいはずです。
初期契約解除をしても、支払うことになるお金がある

初期契約解除では、違約金はかかりません。契約に「2年以内にやめたら◯◯円」と書いてあっても、それは請求されません。
そのかわり、次の3つは請求されます。国民生活センターは同じ解説の中で「違約金の支払いは不要ですが、利用した場合のサービス料、契約解除までに行われた工事費用、事務手数料については支払う必要があります」と書いています。
- 使った分のサービス料(定額なら日割りが基本)
- 事務手数料
- すでに終わった工事の費用
ここで効いてくるのが、工事がまだなら、3つ目が発生しないということです。工事前に動くほうが得だと書いたのは、これが理由です。
工事費には、法令で決められた上限がある
工事が終わっていた場合でも、請求できる額は青天井ではありません。ガイドラインは、工事の種類ごとに上限額を並べています。いずれも税抜きの額で、これに消費税が加わります。
| 工事の種類 | 光回線 | ケーブルテレビ |
|---|---|---|
| 戸建て住宅に人員を派遣して行う工事 | 25,000円 | 18,000円 |
| 集合住宅等に人員を派遣して行う工事 | 23,000円 | 17,000円 |
| 人員を派遣しない工事 | 2,000円 | 2,000円 |
自分がどの行に当たるかは、工事の当日に人が来たかどうかで分かれます。すでに光コンセントがある部屋なら、人を派遣しない工事で済むことがあります。
光回線には、加算の決まりもあります。ガイドラインは「土日・休日の場合は3,000円、夜間・深夜の場合は10,200円を加算可能」としており、人を派遣しない工事など、加算が想定されない場合は加算できないと注記しています。
事務手数料のほうは3,000円と消費税が上限です。
そして、この額は上限であって、必ずこれだけ取られるという意味ではありません。ガイドラインは「あくまで上限を規定したものであり、全ての場合においてこの額まで請求できる権利を事業者に与えるものではない」と書いています。工事に人が来ていない場合や、ふだんの解約でこれより低い額しか請求していない場合は、そちらが上限になります。
なお、回線の引き込みと屋内配線のように工事が2つ以上行われたときは、それらを合計した額が上限に収まっていなければならないとガイドラインは書いています。工事の数だけ上限が増えるわけではありません。
⚠ この表の数字を、そのまま自分の請求額として使わないでください。実際の額をどう計算するかは契約書面に書く義務があるので、そちらが正です。また、特殊な建物への対応や、利用者の希望で追加した工事の費用は、この上限の外で計算されることがあります。上の表は「これを大きく超えていたら、その場で聞き返してよい」という目安として使ってください。
切れるのは、申し出た契約だけ
もう1つ、見落としやすい線引きがあります。初期契約解除で切れるのは、申し出た回線やプロバイダの契約そのものだけです。
ガイドラインは、オプションサービスや、端末などの売買契約について「直ちに効果が及ぶものではない」としています。国民生活センターも、消費者トラブルFAQで「解約できるのは回線契約のみで、端末機器は対象外です」と書いています。
プロバイダを回線と別に契約しているなら、それ自体が初期契約解除の対象でした(「初期契約解除の対象に、光回線とプロバイダは入っている」)。裏を返すと、回線だけを申し出てもプロバイダは切れません。
⚠ セットで申し込んだプロバイダも、自動では解約されないことがあります。ドコモ光は、タイプA・B・Cの契約について「『ドコモ光』の初期契約解除を行ってもプロバイダは自動解約とならず、月額料金が発生し続ける場合や、プロバイダから違約金を請求される場合があります」と案内しています。
光回線の申し込みでは、ひかり電話・テレビ・セキュリティソフト・動画配信などが一緒に付いてくることがよくあります。それらは自分で別に解約の手続きをすると考えて、契約書面のオプション欄を1つずつ確かめてください。
⚠ レンタルしている機器も忘れがちです。ガイドラインは、ONUや無線LANルーターを借りている場合に返却の送料を利用者が負担すると定めることがある、としています。工事が終わったあとに返す機器がある方は、そこも見ておいてください。
初期契約解除が使えない契約と、そのときに残っている道

対象のサービスであっても、契約の形によっては制度が使えません。ガイドラインは、使えない契約を次のように挙げています。
- 法人契約の場合
- 自動締結契約の場合
- 都度契約の場合
- 確認措置を講じて認定を受けた役務の契約の場合
- 一定の変更契約・更新契約
このうち4つ目の「確認措置」は、初期契約解除の代わりに事業者が用意している仕組みです。ガイドラインは、これが適用されるのは移動通信のサービスのうち、総務大臣の認定を受けたものに限られるとしています。
言い換えると、光回線やケーブルテレビに確認措置はありません。固定の回線で使えるのは初期契約解除のほうだけなので、この記事の内容がそのまま当てはまります。携帯電話やポケット型Wi-Fiで確認措置に当たった方は、条件も期間も申し出の方法も違うので、次の記事を読んでください。
そして、身近なところでいちばん効いてくるのが1つ目の「法人契約」です。
「法人契約」かどうかは、名義ではなく使い道で決まる
ガイドラインは、利用者について「法人その他の団体である利用者については、法人契約に該当する場合に、適用除外となる」としています。
ここで「会社名義だから対象外」と早合点しないでください。ガイドラインが定める「法人契約」は、名義ではなく、誰が何のために契約したかで決まります。
| どういう契約か | 法人契約か | 初期契約解除 |
|---|---|---|
| 会社や団体が、その事業のために結んだ契約 | 該当する | 使えない |
| 会社名義だが、実際は個人の家庭用に使っている | 該当しない | 使える |
| 個人事業主が、個人名義で自分の仕事に使うために契約 | 該当しない | 使える |
| 管理組合などの任意団体が、代表者の個人名義で事業目的に契約 | 該当する | 使えない |
| 賃貸物件のオーナーが、入居者に使わせるために契約 | 該当する | 使えない |
最後の行は、その人の営業そのものとして結ぶ契約なので、ガイドラインが名指しで法人契約に含めています(例として「賃貸マンションのオーナーとの間で締結される入居者向けFTTHサービスの契約」が挙げられています)。
それ以外の個人名義の契約については、ガイドラインは「個人名義で契約行為を行う者は、たとえ営業目的又は事業目的で契約する場合であっても、交渉力及び情報量において基本的には一般の消費者と変わらない」ため、法人契約には当たらないと説明しています。
つまり、外れるのは法人や団体が事業のために結んだ契約です。会社で使っていても、契約したのが個人名義の個人事業主なら、この制度は使えます。
では、本当に法人契約だった場合はどうするか。工事がまだなら、まず事業者に電話してください。「工事の前なら、制度を使う前に確かめられる道がある」で見た自主基準の第8条第2項は、利用者を個人に限っていません。訪問または電話で勧誘を受けて申し込んだ、協議会の構成4団体に加盟している事業者との契約で、工事の前——この3つが揃うなら、聞いてみる価値があります。
そのうえで、法人契約には初期契約解除という確実な権利がありません。工事が終わっているなら、通常の解約として条件を確かめることになります。会社の回線は、あとから引き返せない前提で、契約前に条件を確かめるほうが安全です。何を確かめるかは、こちらの記事にまとめてあります。
最後に、対象になる契約についての話を1つ。契約に「初期契約解除はできない」と書いてあっても、その定めは無効だとガイドラインは明記しています。逆に、事業者が8日より長い期間を独自に設けているなら、そちらは有効です。まず契約書面を読み、分からなければ消費者ホットライン188で最寄りの消費生活センターに相談してください。
まとめ
この記事では、光回線を契約したばかりの方に向けて、初期契約解除の対象・数え方・申し出の手順・かかるお金・使えない場合を解説しました。
- 初期契約解除は、相手の合意なしにこちらの都合だけで契約を切れる制度。店頭で自分から申し込んだ契約でも使える(クーリングオフと違って販売の形を問わない)が、そのかわり一定のお金は請求される
- 光回線・ケーブルテレビのインターネットは対象。共同住宅でVDSL(電話線)やLANケーブルを使っていても光回線として対象に入り、回線と別に契約しているプロバイダも単体で対象になる
- 法律上は、8日を「契約書面を受け取った日」から数える(受け取った日とは、郵便受けに届くなど中身を知ることができる状態になった日)。申し込んだ日でも工事の日でもない
- 電話勧誘では書面が2通届く。先に届く「説明書面」は起点ではない。数えるのは、あとから届く「契約書面」から
- どの書面を起点として案内しているかは事業者で違う。NTT西日本とドコモ光は申し込み後の書面、NTT東日本はこれより遅い工事後の「開通のご案内」(利用者に有利な扱いなので有効)。自分の起点は契約書面の案内欄に書いてあるので、開通を待たずに読む
- 提供開始日を起点にする例外は移動通信だけ。光回線には無い
- 解除の効力は、書面を発した日に生じる。葉書で構わないので、8日目でも投函すれば間に合う。契約者番号・サービス名・「上記契約を解除します。」を書き、特定記録郵便や簡易書留を使ってコピーを残す。宛先は契約書面に書く義務があるので、そこを見る
- 8日を過ぎていても、契約書面が届いていない・記載に重大な不備がある場合は、期間が続いていると判断されうる。受け取った日を争うときは事業者が証明する責任を負う
- 工事前なら、業界の自主基準による無償キャンセルという道もある。ただし法律ではなく、加盟している事業者から訪問・電話で勧誘を受けた場合の申し合わせ。転用したあとで元へ戻すときは、この道なら電話番号が通常そのままで、初期契約解除だと原則変わる
- 違約金はかからないが、使った分の料金・事務手数料・すでに終わった工事費は請求される。工事費の上限は光回線が戸建て25,000円・集合住宅23,000円・人員無派遣2,000円、ケーブルテレビが18,000円・17,000円・2,000円(いずれも税抜き。光回線は土日・休日と夜間・深夜に加算がある)。事務手数料は3,000円と消費税。あくまで上限で、実際の額の計算方法は契約書面が正
- 切れるのは、申し出た契約だけ。回線だけ申し出てもプロバイダは切れず、ひかり電話や動画配信などのオプション、買った端末、借りている機器の返却も別に手続きが要る
- 「法人契約」は名義ではなく使い道で決まる。会社名義でも実際は家庭用なら該当せず、個人事業主が個人名義で仕事に使う契約も該当しない
- 本当に法人契約でも、工事前なら自主基準のキャンセルを聞く価値がある(訪問・電話勧誘/加盟事業者/工事前の3つが揃うとき)。ただし確実な権利ではない
- 光回線・ケーブルテレビに確認措置は無いので、固定回線で使えるのは初期契約解除のほう
「契約してしまったから、もう仕方ない」と思ったときは、まず手元の契約書面を探してください。そこに書いてある日付が、引き返せるかどうかを決めています。
なお、次の記事は解約するときの撤去工事の話で、初期契約解除とは別の制度です。費用の上限の根拠も違うので、混ぜないでください。
参考: 電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン(総務省・PDF)
参考: 光回線サービスの電話勧誘トラブルが増えています!(国民生活センター)
参考: 【光回線】初期契約解除制度とは何か。(国民生活センター)





