Wi-Fiルーターの側面や背面に、「WPS」「らくらくスタート」と書かれたボタンがありませんか。
説明書には「押すだけでつながります」とだけ書いてあります。それなのに検索してみると、「WPSは危険」という記事も出てきて、手が止まってしまう——。
実は、あのボタンが省いてくれているのは、入力の手間だけではありません。ボタンを押したあと、ルーターはWi-Fiのパスワードそのものを相手に渡しています。
WPSは Wi-Fi Protected Setup(ワイファイ プロテクテッド セットアップ) の略です。難しい言葉ですが、簡単に言うと、ネットワーク名とパスワードの入力をボタン1つで肩代わりしてくれる仕組みのことです。
この記事では、ネットワークにくわしくない方でも判断できるように、あのボタンを押していい場面と、押した後に何が残るのかを解説していきます。
自分の家で、自分の機器をつなぐために押すぶんには、心配は要りません。そのうえで、次の3つだけ知っておくと判断が変わります。
- 押した機器はそのときだけつながるのではなく、以後ずっとつながります(鍵を渡しているため)
- パスワードを教えていない人でも、ボタンを押せればつなげます(総務省が注意を促しています)
- ルーターの設定によっては、そもそも押しても動きません(故障ではありません。機種によります)
目次
WPSボタン(かんたん接続)とは何か

まず、このボタンが何をしているのかからです。
WPSは、Wi-Fiの規格をまとめている業界団体 Wi-Fi Alliance(ワイファイ アライアンス)が定めたものです。同団体はこの仕組みの狙いをこう書いています。
Wi-Fi Protected Setup™は、自宅や小規模オフィスの環境向けにセキュリティで保護されたWi-Fiネットワークの簡易セットアップ設計を提供し、多くのユーザーに馴染みがある方法でネットワークを設定して、セキュリティを有効化できます。
「自宅や小規模オフィスの環境向け」——つまり、もともと家庭で使うことを想定して作られた仕組みです。
アイオーデータは、自社のQ&AでWPSをこう説明しています。
【WPS】とは、Wi-Fi端末(スマホ、パソコン、ネットワークカメラなど)とWi-Fiルーターをボタン1つで簡単に接続設定するための仕組み(規格)です。
通常、Wi-Fi 端末とWi-Fi ルーターを接続する際は、Wi-Fiルーターの電波の名前(SSID)やパスワード(暗号キー)を調べて設定する必要がありますが、お互いがWPS機能に対応していれば、ボタンをワンプッシュするだけで無線接続設定を完了することができます。
ふだんスマホをWi-Fiにつなぐときは、ネットワーク名を選んで、ルーター本体のシールに書かれたパスワードを入力しますよね。
WPSは、その入力の代わりに、機器どうしで直接パスワードを受け渡しする仕組みです。同じQ&Aは「WPSは、機器が対応していればメーカーが異なっていても設定可能です」とも書いています。ルーターとスマホのメーカーが違っていてもかまいません。
玄関の鍵にたとえるなら、暗証番号を口で伝える代わりに、合鍵を直接手渡ししているようなものです。渡してしまえば、番号を教えたときと同じことが起きます。この「渡している」という感覚が、あとの話につながってきます。
この仕組みがとくに助かるのは、文字を打ち込む手段がない機器です。
スマートフォンなら、画面をタップしてパスワードを入力できます。ところがプリンターやネットワークカメラには、キーボードも大きな画面もありません。小さなボタンで英数字を1文字ずつ選んでいくことになります。
実際、メーカーの解説も、プリンターをつなぐ手順のページやネットワークカメラのQ&Aに置かれています。
メーカーごとに名前も押し方も違う
このボタンでいちばん分かりにくいのは、メーカーによって呼び名が違うことです。
同じアイオーデータのQ&Aが、3社ぶんをまとめて書いています。
| ルーターのメーカー | ボタンの名前 |
|---|---|
| アイオーデータ | WPSボタン |
| バッファロー(AirStationシリーズ) | AOSSボタンが「WPSボタンを兼ねていることが多い」 |
| NEC(Atermシリーズ) | らくらくスタートボタンが「WPSボタンを兼ねていることが多い」 |
「兼ねていることが多いです」という書き方に注目してください。すべての機種でそうだとは書かれていません。手元の機種でどうなっているかは、その説明書で確かめることになります。
ここで、押し方そのものにも触れておきます。呼び名だけでなく、押す長さもメーカーによって違います。
| メーカー(出典) | 案内されている押し方 |
|---|---|
| バッファロー | ランプが点滅するまで 約1〜3秒 押し続ける |
| NEC(WX3000HPの接続手順) | SETボタンを 約6秒 長押しし、ランプが緑点滅になったら放す |
| アイオーデータ | ワンプッシュ(旧機種は3秒ほど押し続ける) |
一瞬押しただけでは、受付が始まらない機種があります。ボタンを何度も押しているのに何も起きない、というときは、ランプの様子が変わるまで押し続けてみてください。
バッファローとNECは、押すのをやめる目印をランプの変化に置いています。押した回数ではなく、ランプが答えを返してくれると考えると分かりやすいはずです。
⚠ NECは機種によってボタンの名前が違います(上の表では「らくらくスタートボタン」、この機種の手順では「SETボタン」)。名前で迷ったら、ランプの変化で見分けてください。
そもそもボタンが見当たらないこともあります。その場合は、その機種が対応していないか、設定画面から待ち受け状態にする方式のことがあります。バッファローは「Wi-Fiルーターの設定画面にてAOSS/WPS待ち受け状態にすることができます」と案内しています。
ちなみに総務省は、この機能をメーカー名でなく「自動設定機能」と呼んでいます。自宅Wi-Fi利用者向けの簡易マニュアルには、注記でこう添えられています。
※10 自動設定機能はメーカーによって機能名が異なります。
公的な資料がわざわざ注記を付けるほど、呼び名は揃っていないということです。
WPSには2つの方式があり、危ないと言われてきたのは片方だけ

「WPSは危険」という記事を読んだ方に、いちばん先にお伝えしたいことがあります。
家庭で使う機種で案内されている方式は2つあって、危ないと言われてきたのは片方だけです。
ボタンを押す方式
ふだん私たちが使うのは、こちらです。ルーターのボタンを押して、機器の側でも接続の操作をすると、その場でつながります。
バッファローは、ボタンを押したあとのルーターの状態をこう表現しています。
電源を入れた状態で、AOSS(またはAOSS/WPS)ボタンをWIRELESS(SECURITY)ランプが点滅するまで(約1~3秒間)押し続けます。
WIRELESS(SECURITY)ランプが2回点滅し始めれば、セキュリティキー交換処理を行える状態(AOSS2/AOSS/WPS待機中状態)になります。
「セキュリティキー交換処理」——ここがこの記事の要になるところです。ボタンを押したあと、ルーターは鍵を渡してよい状態で待ちます。一時的に扉を開けているのではなく、合鍵を配る窓口を開けている、と考えてください。
この窓口は開きっぱなしにはなりません。しばらくすると自動的に終わります(そのあいだに機器の側でも接続の操作をする必要があります)。
PINコードを入れる方式
もう1つは、8桁の数字(PINコード)を入力してつなぐ方式です。ボタンがない機器のために用意されたものですが、家庭でこちらを使う場面はほとんどありません。
NECは、この方式のマニュアルの冒頭にこう書いています。
APエンローリーをご理解いただいている方がご利用ください。
メーカー自身が「分かっている人向け」と断っている使い方、ということです。
「WPSは危険」と言われるようになったのは、この方式に見つかった弱点がきっかけでした。NECは2018年のQ&Aで、当時の対応をこう説明しています。
2012年1月30日にサポート技術情報として「WPS(Wi-Fi Protected Setup)の脆弱性に関してのAterm製品の対処方法について」を掲載してます。
本掲載情報に伴い、初期値でWPS機能(PIN方式)が「使用する」になっているWR8300N、WR8150N、WM3400RNは、セキュリティ面からWPS機能(PIN方式)を使用しないよう設定変更してご利用いただきますことを推奨いたします。
同じページには、この記事でいちばん大事な2つの文が添えられています。
PIN方式を使用しないように設定しても、プッシュボタン方式は従来どおり使用可能です。
対象の3機種以外は、出荷時またはファームウェアアップデートで本脆弱性について対処済みです。
PIN方式を止めても、ボタンのほうは使えるとメーカーが書いています。「WPSは危険だからボタンも押さない」という判断は、ここでは求められていません。
上のQ&Aは2018年に書かれたもので、対象の3機種はすでにサポートが終わっています。ページ自体にも「Q&Aの更新も終了しました」と書かれています。
つまりこれは「いまのルーターが危ない」という話ではなく、「2012年ごろに問題になり、その後は対処された」という経緯です。同社は3機種以外を「対処済み」と書いています。
ただし、PIN方式にはもう1つ、いまの機種でも起こる困りごとがあります。さきほどの、PIN方式のマニュアルにある注意書きです。
こちらの方法で設定すると、親機(本商品)のWi-Fi設定内容が変更されるため、設定済みの他の子機とのWi-Fi接続はすべて切断されます。 切断された子機は、他の方法を使ってWi-Fi接続し直す必要があります。
PIN方式には、ルーター側の設定を書き換えてしまう向きがあります。1台つなごうとして、家じゅうの機器が全部切れる——脆弱性とは別に、こちらのほうが実際に困る場面かもしれません。
家庭で使うぶんには、ボタンのほうだけ覚えておけば十分です。
WPSで押した後、ルーターに何が残るのか

ここからが、あまり書かれていない話です。
NECは、プリンターをつなぐ手順の最後をこう書いています。
本商品からWi-Fi設定情報が転送され、Wi-Fi接続が完了します。
転送され、完了する。——ボタンを押すと起きているのは、この「渡す」という動作です。
だから、ボタンを押して「つながりました」と出たとき、その機器はもうWi-Fiのパスワードを受け取っています。ボタンを押しているあいだだけつながる、という仕組みではありません。
だから、その機器は翌日も、来月も、こちらで手を打たないかぎりつながり続けます(「パスワードを変えても、ボタンを押せる人はつなげる」で見るパスワードの変更などです)。手で入力してつないだときと、まったく同じ状態です。
つまりボタンは「今つないでよい」という許可ではなく、「鍵を渡す」操作だ、ということです。
ルーター側の一覧では、名前のない機器として並ぶ
残るのは端末の側だけではありません。ルーターの側にも記録が残ります。
NECは、接続した機器を一覧で見る機能の説明でこう書いています。
本商品にらくらく無線スタートまたはWPSで接続した子機は、「端末区分」が「おとなの端末」、「端末名」がMACアドレスとして自動的に登録されています。
必要に応じて端末情報を再設定してください。
MACアドレスは、機器の一台ずつに割り当てられている番号のことです。人がつけた名前ではないので、一覧に並んでも「どれが自分のスマホか」は読み取れません。
この引用から、3つのことが分かります。
| 登録されるもの | あとで見たときにどうなるか |
|---|---|
| 端末名 = MACアドレス | 機器につけた名前ではなく英数字の並びで出るので、どれが何か分からない |
| 端末区分 = 「おとなの端末」 | 使う時間を制限される側ではなく、制限のかからない側に入る |
| 許可するMACアドレスの一覧 | 下記のとおり、あとから絞り込みを設定しても、この機器は通る |
3つ目については、同じページの「おとなの端末」の説明にこうあります。
MACアドレスが、本商品の「接続を許可するMACアドレスエントリ」に登録されます。本商品の、「子機との接続設定」で2.4GHz帯または、5GHz帯の「MACアドレスフィルタリング機能」を使用する場合でも、本商品とWi-Fi接続できます。
MACアドレスフィルタリングは、「登録した機器だけつなげる」という絞り込みの設定です。ところがWPSで入った機器は、その許可リストに自動で加わっています。あとから絞り込みを有効にしても、この機器は素通りします。
ここには順番があります。あとの「WPSが使えない・つながらないとき」で、同じ会社が(別の機種のマニュアルですが)、WPSでつなぐ前にMACアドレスフィルタリング機能をOFFにするよう案内していることを紹介します。絞り込みを先に有効にしていると、そもそもWPSでつなげません。
つまり、いま書いているのは「WPSでつないでから、あとで絞り込みを有効にした」場合の話です。矛盾しているわけではなく、順番が違うと結果が変わる、ということです。
1台ずつ名前を付け直せば、一覧は読めるようになります。NECは、端末情報を設定していない子機は「未登録」と表示される、とも書いています。名前を付けたかどうかが画面に出るということです。
なお、ここで挙げた挙動はNECの、この機能を持つ機種で確認したものです。他社のルーターが同じように登録するかどうかは、確かめられていません。
一覧の開き方と、そこに並ぶ番号の読み方は、そのために書いた記事があります。
パスワードを変えても、ボタンを押せる人はつなげる

もう1つ、押す前に知っておきたいことがあります。
総務省は、自宅Wi-Fi利用者向け簡易マニュアルのなかで、この機能についてこう書いています。
対象のボタンを押すことで、無線接続やSSID(ネットワーク名)、暗号化キーなどの設定を自動で行うことができ、簡単に端末をWi-Fiルーターに接続できる機能です。暗号化キーを変更していたとしても本機能を用いることで接続が可能となるため家に人を招く場合などは注意が必要となります。
後半をゆっくり読んでください。「暗号化キーを変更していたとしても」つながる、と書かれています。
暗号化キーとは、Wi-Fiのパスワードのことです。つまり、次のことが起こります。
パスワードを誰かに教えてしまったとき、変えれば、その人はもうつなげません。
けれどもボタンに手が届く場所にいる人は、パスワードを知らないままつなげます。押せば、その場で新しいパスワードを受け取れるからです。
総務省が「家に人を招く場合などは注意が必要」と書いているのは、このためです。
ここで、対策の性質が変わります。Wi-Fiのセキュリティはふつう「パスワードを強くする」「暗号化方式を新しくする」という話になりますが、このボタンについては、どこに置くか・誰が触れるかという話になります。
とはいえ、身構えすぎることもありません。家族しかいない家で、玄関の内側にあるルーターのボタンを心配する必要はないでしょう。人の出入りがある場面だけ思い出せば十分です。
総務省が「使わないなら無効に」と挙げている機能のひとつ
この記述が資料のどこにあるかも、あわせて知っておくと判断しやすくなります。
載っているのは、「3-5 Wi-Fiルーターの設定を定期的に確認しよう」という節のなかです。その節はこう始まります。
Wi-Fiルーターにはさまざまな機能があります。どの機能も適切に利用すれば便利なものですが、誤った設定をしてしまうと攻撃に悪用される危険があります。利用しない機能は無効に設定するようにしましょう。
そして「利用しない機能」の例として、次の6つが並んでいます。自動設定機能は、その4番目です。
この6つそれぞれについて、切ってよいかをどう判断するかは、次の記事にまとめています。
- VPN機能
- DDNS機能
- インターネットからWi-Fiルーター(管理画面)への接続機能
- 自動設定機能(=WPS・らくらく無線スタートなど)
- UPnP(ユニバーサルプラグアンドプレイ)
- DMZ機能
並んでいる顔ぶれを見ると、外から入られる入り口になりうる機能ばかりです。そのなかに、家庭でふつうに使うボタンが1つ混じっている、という並びになっています。
書いてあるのは「利用しない機能は無効に」と「家に人を招く場合などは注意」の2つです。「使うな」とは書かれていません。
使う予定があるなら、有効のままでかまわない、という読み方になります。判断が要るのは「もう何年も押していないのに、有効のままになっていないか」のほうです。
いまどうなっているかは、ルーターの管理画面で確かめられます(項目名はメーカーで違います)。開き方は、その記事にまとめています。
同じ資料は、使わない機能が有効になっていた場合や中古で買った場合の対策として、初期化・ファームウェアの更新・パスワードの変更の3つを挙げています。
もし「知らないうちに誰かに押されたかもしれない」と気になったときは、このパスワードの変更が打ち手になります。変えれば、すでに渡した鍵は使えなくなるからです。
ただし、いまつながっている機器は全部いったん切れます。つなぎ直す台数を先に数えておいてください。
パスワードを変えれば、すでに渡した鍵は使えなくなります。けれども、さきほどの総務省の引用で見たとおり、ボタンに手が届く人は、また押せばつながります。
押される心配が続くのであれば、総務省が書いているとおり使わないあいだは自動設定機能そのものを無効にするほうが確実です。設定はルーターの管理画面から変えられます。
⚠ 無効にすると、次に機器を増やすときはパスワードを手で入力することになります。使う予定があるなら、無効にする必要はありません。
WPSが使えない・つながらないとき

「押しているのに、何も起きない」——これも、この機能でよくある行き止まりです。
故障を疑う前に見るところが、大きく2つあります。
セキュリティを上げる設定を入れていると動かない(NECの機種では)
意外に思われるかもしれませんが、NECの機種では、Wi-Fiを安全にするための設定を入れているとWPSは動かなくなります。
NECは、プリンターをつなぐ手順のページで、WPSで接続する前に確認することとして3つを挙げています。
- 「ESS-IDステルス機能(SSIDの隠蔽)」を「OFF」に設定してください。
- 「MACアドレスフィルタリング機能」を「OFF」に設定してください。
- 「暗号化モード」を、WPAまたはWPA2(WPA3を含まない)に設定してください。
3つとも、セキュリティを高めるつもりで入れる設定です。それが入っていると、ボタンは効きません。
⭐ 同じページには「(工場出荷状態の場合は、設定は必要ありません。)」とも書かれています。買ってきてそのまま使っているなら、この3つは気にしなくて大丈夫です。
同じ手順のページには、失敗したときの見分け方も書かれています。
POWERランプが約10秒間赤点灯した場合は、WPS設定に失敗しています。
そして、その原因として挙げられているのが次の2つです。
- 暗号化モードが「WPA3-SAE(AES)」「WPA2-PSK(AES)/WPA3-SAE(AES)」または「暗号化無効」になっている
- MACアドレスフィルタリングの「MACアドレスエントリ」の登録数が制限いっぱいである
メーカー自身が、失敗の原因としてこの2つを名指ししているということです。1つ目は、上に挙げた3つのうちの暗号化モードと同じものです。
2つ目は別の話です。登録されているMACアドレスが上限に達していると失敗する、ということで、同社は「不要なMACアドレスを削除してください」と案内しています。フィルタリングをOFFにしていても、こちらで止まることがあります。
⭐ ここは切り分けにも使えます。ランプがまったく変わらないなら、押し方が足りないか、機器の設定を見直す番です(バッファローも、ボタンを押してもランプが点滅しない場合は設定状態を見直すよう案内しています)。ランプが変わったのにつながらないなら、上の3つの設定です。
とくに暗号化モードは、悩ましいところです。総務省が勧めている「WPA2またはWPA3」のうち、WPA3を選ぶとWPSが使えなくなる(NECの機種の場合)ということだからです。
同社はさらに、WPSに対応している機種の一覧のほうに、新しい周波数帯についての注記を置いています。
6GHz帯ではWPSを使用したWi-Fi接続を行えません
6GHz帯は、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7の機種で使える新しい電波です。その一覧を見ると、この注記が付いているのは6GHz帯を持つ機種でした。
「WPSを使うかどうか」は、単独では決められません。セキュリティ設定とセットの選択になります。
NECの機種では、設定を新しくしていくと、このボタンは自然と出番を失っていきます。押しても動かないのは、壊れたからではなく、そちらを選んだからということが起こりえます。
ここに出てきた3つの設定は、それぞれ別の記事で扱っています。暗号化モードの選び方はこちらです。
SSIDを隠す設定とMACアドレスフィルタリングについては、総務省が家庭向けに挙げている対策5つを扱った記事のなかで、「5つには入っていない対策」として整理しています。
端末の側が対応していないことがある
もう1つの行き止まりは、つなごうとしている機器の側です。
この記事のはじめに引いたアイオーデータの説明に、「お互いがWPS機能に対応していれば」という条件が付いていたのを思い出してください。
ルーターにボタンが付いていても、つなぐ相手が対応していなければ何も起きません。ルーターを何秒押しても変わらないので、故障に見えてしまいます。
そしてもう1つ、見落としやすいことがあります。ルーターのボタンを押すだけでは終わりません。つなぐ機器の側でも、WPSでつなぐ操作を始める必要があります。
プリンターであれば、プリンター側でWPSの接続操作を始めてから(始め方はプリンターの説明書で確かめます)、ルーターのボタンを押します。ルーターだけ何度押しても、相手が待っていなければ何も起きません。
手元の機器がどうなのかは、その機器の説明書で確かめることになります。ひとつの手がかりとして、その機器のメーカーが案内している接続手順を見るという方法があります。
たとえばAppleがiPhoneの接続手順として案内しているのは、次の方法です。
利用可能なネットワークに接続する: ネットワークの名前をタップします。パスワードが要求されたら、入力します。
名前を選んでパスワードを入れる、という手順だけが書かれています。ボタンで接続する方法は案内されていません。
⚠ ただし案内が無いこと自体は、その端末が対応していないことの証明にはなりません。この記事で言えるのは「メーカーが案内している手順はこちらだ」というところまでです。iPhoneでもAndroidでも、手元の機器の案内で確かめるのが確実です。
その代わりに、同じページにはパスワードを人に渡すための別のしくみが用意されています。
iPhoneがWi-Fiネットワークに接続されている場合は、近くのiPhone、iPad、またはMacとWi-Fiパスワードを共有できます。
すでにつながっている端末から、隣の端末へパスワードを渡す、という形です。Apple製品どうしであれば、入力せずにつなぐ道もある、ということになります(相手がApple Accountにサインインしていて、連絡先に登録されていることが条件です)。
ボタンが使えないと分かったら、遠回りに見えても、ルーター本体のシールに書かれたパスワードを手で入れるのがいちばん確実です。手で入れてつないでも、つながった後の状態は変わりません。
まとめ
この記事では、WPSボタン(かんたん接続)が何をしている仕組みなのかと、押した後に何が残るのかを解説しました。
- WPSは、ネットワーク名とパスワードの入力をボタン1つで肩代わりする仕組み。呼び名はメーカーごとに違う
- 押し方もメーカーで違う。一瞬押すだけでは待機状態に入らない機種があるので、ランプが変わるまで押し続ける
- 方式は2つあり、危ないと言われてきたのはPINコード方式。NECは、PIN方式を止めてもボタン方式は従来どおり使えると書いている
- ボタンが渡しているのはパスワードそのもの。押した機器は、こちらで手を打たないかぎりつながり続ける
- パスワードを教えていない人でも、ボタンを押せればつなげる(総務省)。だから対策は「誰が触れるか」の話になる
- 動かないときに見るのは2か所。ルーターの設定(ステルス・MACアドレスフィルタリング・WPA3。NECの機種の場合)と、つなぐ相手の対応
自分の家で、自分の機器をつなぐために押すぶんには、身構える必要はありません。
覚えておきたいのは、あれは「今だけ許す」ボタンではなく「鍵を渡す」ボタンだということです。渡した相手を思い出せなくなったら、パスワードを変えれば全部やり直せます。押される心配のほうが続くなら、使わないあいだは機能ごと無効にできます。
参考: 自宅Wi-Fi利用者向け簡易マニュアル(総務省・PDF)
参考: WPSとは?(アイオーデータ)
参考: WPS(Wi-Fi Protected Setup)に対応している機種はありますか?(NEC Aterm)





