「無線LANのセキュリティ対策って、本当に必要なの?」
そう思って調べにきた方に、まずお伝えしたいことがあります。
総務省が2026年2月に行った調査で、自宅のWi-Fiを暗号化していると答えた人に「どの方式ですか」と聞いたところ、いちばん多かった答えは「わからない」で、51%でした。
つまり、暗号化していると答えた人のなかでも、自分の家が何になっているかを答えられない人がいちばん多いということです。
この記事では、総務省が家庭向けに挙げている5つのポイントに沿って、何を、どの順で確かめればよいかを説明します。難しい設定の話ではありません。ほとんどは「見に行って、そうなっているか確かめる」だけです。
⚠ 扱うのは自宅に置いたWi-Fiの話です。お店や駅のフリーWi-Fiを使うときの注意は、別の話になります。出す側(お店や宿がお客さんに提供する場合)も、また別の話です。
目次
「危ない」より先に、自分の家がどうなっているか

無線LANのセキュリティ対策の記事は、たいてい「盗み見られるかもしれません」という話から始まります。それは本当のことですが、読んだあとに何をすればいいのかは、あまりはっきりしません。
そこで、まず実態のほうを見てみます。総務省の「令和7年度 無線LAN利用者実態調査」は、日常的に無線LANを使っている人に、自宅の設定がどうなっているかを聞いたものです。
- 暗号化の方式を聞かれて「わからない」…51%(暗号化していると答えた437人・複数回答)
- ルーターの管理用パスワードが「購入時の設定のまま」…39%/「わからない」…23%(自宅でWi-Fiを使っていると答えた957人)
- ファームウェアの更新について「ファームウェアがわからない」…47%(同じ957人)
この調査はWebアンケート(調査期間 2026年2月16日〜26日)で、答えた人の割合です。「これだけの家庭が実際に被害に遭った」という数字ではありません。それでも、多くの人が自分の家の設定を把握していない、ということは読み取れます。
もう1つ、この記事に直接かかわる数字があります。古い方式であるWEPやWPAを使っていると答えた121人に理由を聞くと、最も多かったのは「課題を知らなかった」で42%でした。
理由として最も多いのは「課題を知らなかった」で、4割を占めます(残りは「古い端末が非対応」17%、「盗まれて困る情報なし」11% などで、知ったうえで使い続けている人もいます)。だからこの記事は、脅すのではなく確かめ方を書きます。
総務省が家庭向けに挙げているセキュリティ対策5つ

総務省は「自宅Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル(令和7年2月版)」という資料を公開しています。家庭でWi-Fiを使うときに気を付けることとして、次の5つが挙げられています。
- セキュリティ方式は「WPA2またはWPA3」を選択しよう
- パスワードは第三者に推測されにくいものにしよう
- サポート期限内のWi-Fiルーターを利用しよう
- ファームウェアを最新の状態にしよう
- Wi-Fiルーターの設定を定期的に確認しよう
このうち①・②・④・⑤の4つは、ルーターの管理画面(設定画面)を開けば確かめられます(③のサポート期限だけは、メーカーのサイトで調べます)。開き方が分からないという方は、先に次の記事を見てください。ブラウザから開くもので、専用のアプリは要りません。
① セキュリティ方式は「WPA2またはWPA3」を選ぶ
資料はこう書いています。
Wi-Fiのセキュリティ方式(詳細は以下のコラムを参照)は、「WPA2」または「WPA3」にしましょう。複数の方式がある場合は、「WPA2パーソナル(WPA2-PSK)」または「WPA3パーソナル(WPA3-personal)」を設定しましょう。
管理画面を開いて、いま何が選ばれているかを見てください。⚠ 項目の名前は機種によって違います。同じ資料も注記で「セキュリティ方式は、利用するWi-Fiルーターにより“暗号化Protocol” “暗号化” “セキュリティ”等、表記が異なります」としています。
そこにWEPやWPA(末尾に数字が付かないもの)と出ていたら、変更を検討してください。同じ資料は、WPAについて「一部脆弱性があり、現在では推奨されない」としています。
⚠ ただし、方式を変えると、新しい方式に対応していない機器はつながらなくなります。テレビ、プリンター、ゲーム機など、家でWi-Fiにつないでいるものを先に数えてから変えてください。変える前に読むことと、方式そのものの違いは、こちらの記事にまとめています。
② パスワードは推測されにくいものにする(2種類あります)
ここでつまずきやすいのが、Wi-Fiのパスワードには2種類あるということです。しかも、呼び方が機種によって違います。
| 種類 | 何のためのもの | 別の呼び方の例 |
|---|---|---|
| 暗号化キー | スマホやパソコンをWi-Fiにつなぐときに入れる | ネットワークキー/セキュリティキー/パスワード |
| 管理用パスワード | ルーターの設定画面に入るときに入れる | 管理者パスワード/管理パスワード |
この対応は、先の簡易マニュアルが冒頭で示しているものです。ルーター本体のシールに2種類が並んでいることが多いのですが、どちらがどちらかの書き方は機種によって違います。上の表の「別の呼び方の例」を手がかりに見分けてください。
注意したいのは管理用パスワードのほうです。資料は、初期設定が機種共通の管理用パスワードでそのまま使っている場合は、第三者に乗っ取られる可能性があるため速やかに変更するよう促しています。先ほどの調査で「購入時の設定のまま」が39%だったのは、この管理用パスワードのことです。
一方、暗号化キー(つなぐときのパスワード)について資料が変更を求めているのは、「簡単なものが設定されている場合」です。初期設定として1台ごとに固有のものが割り振られている場合が多い、とも書かれています。
また、この鍵を他のサービスのパスワードと使い回さないようにしましょう。変えるのは、鍵を人に教えた、知らない機器がつながっている——そういう心当たりがあったときです。
その「知らない機器がつながっている」は、どうやって確かめるのでしょうか。ルーターの設定画面にはいまつながっている機器の一覧があり、そこで数えられます。ただし一覧に出るのは名前ではなく番号なので、読み方にコツが要ります。
⚠ 管理用パスワードを変えたら、控えを残してください。忘れると本体のリセットボタンで初期化することになり、そのとき他の設定も出荷時に戻ります。
③ サポート期限内のWi-Fiルーターを使う
この項目は、設定ではなく機器そのものの話です。あまり語られませんが、資料が5つのうちの1つとして挙げているものです。
世の中のWi-Fiルーターにはサポート期限が設定されているものがあります。この期限を過ぎるとそのWi-Fiルーターに関する問い合わせやファームウェアの更新などの対応がされなくなってしまいます。その場合、新たな脆弱性が発見されても対策されないため、サイバー攻撃を受けるリスクが高まります。
つまり、いくら設定を見直しても、更新が配られない機器では追いつけなくなるということです。資料は、サポート期限が切れている場合は買い替えを検討するよう書いています。
確かめ方も示されていて、「メーカー名 + Wi-Fiルーターの型番 + サポート期限」で検索すると分かることが多い、とされています。型番は本体の背面や底面のシールに書かれています。
調べた結果の読み方(メーカーごとに表示が違います)と、期限が切れていなくても替えどきになる場合は、次の記事にまとめました。
④ ファームウェアを最新の状態にする
ファームウェアとは、ルーターの中で動いているソフトウェアのことです。弱点が見つかると、メーカーから更新版が配られます。
資料は、新しい機種では自動更新ができることも多いため、その設定を有効にしておくことを勧めています。手動で確認し続けるより確実です。
先ほどの調査では、更新について「ファームウェアがわからない」と答えた人が47%で最も多く、自動更新にしていると答えた人は12%でした。管理画面を開いたら、「ファームウェア更新」「自動更新」といった項目を探して、有効になっているかを見てください。
⚠ ただし「自動更新にした=全部入る」ではありません。メーカーによっては、自動で入るのがセキュリティに関わる「重要な更新」だけという設定になっていることがあります。更新で何が直るのか、いまのが最新かどうかをどう確かめるのかは、次の記事で扱っています。
⑤ 設定を定期的に確認する
5つ目は、一度設定して終わりにしない、という項目です。
ルーターにはたくさんの機能があり、資料は使わない機能は無効にしておくことを勧めています。加えて、万一ルーターを乗っ取られた場合、攻撃を続けられるように設定の一部を変えられてしまうことがあるため、機能の設定が勝手に変わっていないかを定期的に見るよう書いています。
毎月見る必要はありません。ファームウェアを確認するついでに、身に覚えのない設定が増えていないかを見るくらいで十分です。
よく見かけるけれど、5つには入っていない対策
無線LANのセキュリティを調べると、次の2つがよく出てきます。どちらも実在する機能ですが、総務省が家庭向けに挙げている5つには入っていません。
MACアドレスフィルタリング
あらかじめ登録した機器だけをWi-Fiにつなげる、という機能です。分かりやすい仕組みですが、これを防犯の主役として当てにするのは危険です。MACアドレスは暗号化されずにやり取りされるため、電波の届く範囲にいれば読み取れてしまい、その番号を名乗ることも技術的に難しくないからです。
さらに、最近の端末はWi-Fiごとに違う番号を名乗ることがあり、登録したはずの家族の端末がつながらなくなることがあります。理由と対処は次の記事にまとめています。
SSID(ネットワーク名)を隠す
Wi-Fiの名前を一覧に表示させない設定(ステルス機能などと呼ばれます)です。こちらも5つには入っていません。名前を隠しても電波そのものは出ていますし、隠すとつなぐ機器ごとに初回は名前を手で入力することになります。
2つとも「使ってはいけない」という話ではありません。先に5つを済ませたうえで考えるもの、という順番の問題です。
なお、この2つを設定していると、ルーターの「かんたん接続」ボタン(WPS)が効かなくなることがあります。メーカーが接続前の確認事項として挙げているためで、そちらは別の記事で扱っています。
まとめ
この記事では、無線LANのセキュリティ対策として何をどの順で確かめればよいかを、総務省が家庭向けに挙げている5つのポイントに沿って解説しました。
「本当に必要?」への答えは、いまどうなっているかを一度見てみないと決められない、というものです。調査では、暗号化していると答えた人のうち方式が「わからない」51%、自宅でWi-Fiを使っている人のうち管理用パスワードが購入時のまま39%、ファームウェアが「わからない」47%でした。危ないかどうか以前に、確かめていない人が多い、ということです。
管理画面を一度開いて、方式・管理用パスワード・自動更新の3つを見るところから始めてみてください。サポート期限は、型番で検索すれば分かります。
参考: 自宅Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル(令和7年2月版)(総務省・PDF)










