会社のネットワークの話で「VLAN(ブイラン)を切る」「営業部は別のVLAN」といった言い方を聞いたことはありませんか。
VLAN(仮想LAN)とは、スイッチの中を仕切って、いくつかの別々のネットワークとして使う仕組みです。ケーブルをつなぎ替えずに、設定だけで部署ごとに分けられます。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、VLANが何をしている仕組みなのか、そして自分の会社で使われているかをどう見分けるのかを解説していきます。
目次
VLANとは? 1台のスイッチを仕切って使う仕組み

VLAN は Virtual LAN(バーチャル・ラン)の略で、日本語では仮想LANと呼ばれます。
ネットワークを部署ごとに分けたい、という場面を考えてみてください。昔は、分けたい数だけスイッチ(ハブ)を用意して、ケーブルも別々に引く必要がありました。営業部用のスイッチ、経理部用のスイッチ、というふうにです。
VLANを使うと、1台のスイッチの中を設定で仕切れます。「1〜8番の差込口は営業部、9〜16番は経理部」と決めておけば、同じ機械につながっていても別々のネットワークとして動きます。そのままでは、営業部のパソコンから経理部のパソコンは見えません(行き来させるには別の機器が要ります。後述します)。
なお、VLANはどのスイッチでも使えるわけではありません。対応した製品(インテリジェントスイッチ・スマートスイッチなどと呼ばれるもの)が必要です。家庭用の数千円のハブには、ふつう付いていません。
VLANで何ができるのか

部署やグループごとに分けられる
いちばんの用途がこれです。人事や経理のように扱う情報が重い部署を、他から分けておけます。
来客用のWi-Fiを社内のネットワークから切り離すのも、VLANの使い方のひとつです。同じ機器・同じ配線を使いながら、通信は混ざらないという状態を作れます。
VLANが止めるのは、放っておいても届いてしまう通信です。部署をまたいで通信させたい場面はふつうにあるので、実際の会社では行き来させる機器を置いています(後述)。「区切ったから絶対に届かない」ではありません。
また、ウイルスの感染や設定の誤りを防ぐ仕組みでもありません。被害が広がる範囲を狭めるのがVLANの役割です。
席替えや組織変更にケーブル工事が要らない
物理的に分けていた時代は、人が異動するたびにケーブルを挿し替える必要がありました。VLANなら、その差込口の割り当てを設定で変えるだけで済みます。
オフィスのレイアウト変更が多い会社ほど、この差が効いてきます。
余計な通信が広がるのを抑えられる
ネットワークには、宛先を決めずに全員へ届ける種類の通信(ブロードキャスト)があります。機器を探すときなどに使われるもので、台数が増えるほど量も増えます。
VLANで区切っておくと、この通信は区切りを越えて広がりません。人数の多いオフィスでは、これが動作の安定につながります。
VLANの種類 — ポートVLANとタグVLAN

企業でよく使われるのは、次の2つです。どちらも IEEE 802.1Q という規格に含まれています。
| 方式 | 何を単位に分けるか | どこで使うか |
|---|---|---|
| ポートVLAN | スイッチの差込口(ポート)ごと | パソコンやプリンターをつなぐ口 |
| タグVLAN | 通信するデータに目印(タグ)を付ける | スイッチどうしをつなぐ線 |
ポートVLAN — 差込口ごとに割り当てる
スイッチの差込口ひとつずつに「この口は営業部」と割り当てる方式です。もっとも基本的な形で、つないだ機器の側は何も意識しません。
あなたの席のLANポートも、会社によってはこの方式で部署が割り当てられています。
タグVLAN — 1本の線に複数のVLANを相乗りさせる
こちらは、スイッチどうしをつなぐときに使います。
ポートVLANだけで組もうとすると困ることがあります。フロアが複数あってスイッチが分かれている場合、VLANの数だけスイッチ間にケーブルを引かなければなりません。日経クロステックの解説も「各スイッチで収容するVLANの数が増えたり、スイッチの台数が増えたりすると、ケーブルの接続が複雑になり、スイッチのポートを多く消費してしまう」と書いています。
そこで、流すデータに「これは営業部のもの」という目印(タグ)を付けて、1本のケーブルにまとめて流します。受け取った側のスイッチが目印を見て、正しいVLANへ振り分けます。
これができるので、1つのVLANを複数のスイッチにまたがって作れます。「営業部のVLAN」を2階と3階の両方に用意する、といった使い方です。
タグVLANは、VLANをまたいで通信するための仕組みではありません。あくまで「1本の線に複数のVLANを相乗りさせる」ためのものです。
営業部と経理部のあいだで通信させたい場合は、ルーター(またはルーティングのできるスイッチ)が別に必要になります。区切ったものを行き来させるのは、別の役割の機器の仕事です。
そのため、全社共通の社内ポータルやファイルサーバーは、VLANで区切られていても開けます。この機器を通して届いているからです。「別の部署のものは見えないのに、全社のシステムは見える」のは、そういう仕組みです。
同じ記事は、タグVLANで使う差込口をトランクポートと呼び、「トランクポートには通常、パソコンなどの端末を接続せず、スイッチのトランクポート同士をつなぐために使う」と説明しています。ふつうは机の上の機器をつなぐ口ではないということです(IP電話や無線アクセスポイントのように、タグを扱える機器をつなぐこともあります)。
自分の会社でVLANが使われているかを見分ける

VLANの設定そのものは、情報システムの担当者や業者が行います。使う側が触ることはありませんし、画面の見え方も機器によって違うため、当サイトでは設定の手順は扱いません。
代わりに、使う側から見える手がかりを挙げておきます。次のようなことがあれば、VLANで区切られている可能性が高いところです。
- 同じ部屋にいるのに、別の部署のプリンターや共有フォルダが見えない
- 席を移動したら、つながらなくなった(移動先の差込口が別のVLANだった)
- 来客用のWi-Fiからは社内のシステムが開けない
- 自分のパソコンと隣の席のパソコンで、IPアドレスの3つめの数字が違う(例: 192.168.10.5 と 192.168.20.8)
とくに2つめは、レイアウト変更のあとに実際によく起きます。パソコンの故障ではなく、差込口の割り当ての問題なので、担当者には「席を移動してからつながらなくなりました」とそのまま伝えれば十分です。VLANという言葉を出す必要はありません(出すなら「この席のポートのVLANはどうなっていますか」で話が早く進みます)。
まとめ
- VLAN(仮想LAN)は、スイッチの中を仕切って、いくつかの別々のネットワークとして使う仕組み
- できることは部署ごとの分離・工事なしの組織変更・余計な通信を抑えることの3つ
- ポートVLANは差込口ごと、タグVLANはスイッチどうしをつなぐ線で使う
- ⚠ タグVLANはVLANをまたいで通信するための仕組みではない。それにはルーターが要る(全社共通のシステムが開けるのは、そこを通っているから)
- 使う側から見える手がかりは「別の部署のものが見えない」「席を移ったらつながらない」
設定するのは担当者ですが、「区切られている」と知っているだけで、つながらないときの伝え方が変わります。





