ワイヤレスイヤホンやマウスの箱に書かれている「Bluetooth 5.3」という数字。
「5.0より新しいから、きっと音もいいんだろう」——そう思って選んだ方も多いのではないでしょうか。
実はこの数字が上がっても、音がよくなるわけではありません。
この記事では、ITやネットワークの知識がない方でもわかるように、バージョンが何を表しているのか、そして自分の機器がどれなのかを確かめる方法までを解説していきます。
買い物の途中で読んでいる方のために、先に結論だけ書いておきます。
- 音質のために新しい世代を選ぶ必要はありません(音質は別のもので決まります)
- 電池の持ちや接続の安定を求めるなら、新しい世代のほうが有利です
- 見るべきはイヤホン側の数字だけでなく、手持ちのスマートフォンやパソコンの側です
目次
Bluetoothのバージョンとは?

Bluetoothのバージョンとは、規格そのものの「世代」を表す番号です。
スマートフォンのOSに例えるとわかりやすいでしょう。世代が進むたびに新しい機能が足され、古い機能もおおむねそのまま残ります。
仕様を決めているのは、Bluetooth SIGという業界団体です。最新版はCore 6.3で、2026年5月に公開されました。いまは半年ごとに更新されています。
ただし、市販の機器に書かれているのはたいてい5.0〜5.4です。仕様が決まってから、それを載せた製品が店頭に並ぶまでには時間がかかるためです。
バージョンが違う機器同士でもつながる?

結論からいうと、つながります。手持ちのパソコンが5.0でも、5.3のイヤホンは使えます。
ただし、そのときは古いほうに合わせて動きます。マイクロソフトも、Windowsの解説の中で「より高い仕様のアクセサリは引き続き機能しますが、機能は低下します」と説明しています。
二人で遊ぶゲームを思い浮かべてください。片方だけが新しいルールを覚えていても、相手が知らなければ、結局は古いルールで遊ぶことになります。
つまり新しいバージョンの機能は、送る側と受け取る側の両方が対応して初めて使えます。コーデック(音の圧縮方式)でも同じで、イヤホンだけが対応していても意味がありません。
ですから買い替えるときは、手持ちのスマートフォンやパソコンの側もあわせて確認してください。
バージョンごとに何が変わったのか(5.0・5.3ほか)

ここからは世代ごとの中身を見ていきます。先に押さえておきたい前提が1つあります。
BluetoothにはClassic(音楽などを送り続ける仕組み)とLE(少ないデータをときどき送る、低消費電力の仕組み)の2種類があり、5.0以降の目玉機能は、そのほとんどがLE側の改良です。
5.0 —「速度2倍・距離4倍」が指しているもの
5.0はよく「速度2倍・距離4倍」と紹介されます。ですが公式の解説書を読むと、これはLEに追加された2つの電波の使い方の話です。
ひとつはLE 2M。電波の上で毎秒2メガビットまで出せるようになりました(実際にデータとして使えるのは最大でおよそ1.4メガビットです)。
もうひとつがLE Codedで、こちらは届く距離が約4倍になります。誤りを直すための情報を一緒に送ることで、電波が弱くなる遠くでも中身を読み取れるようにする仕組みです。
ここで大事なのは、この2つは同時には使えないということです。公式の比較表を見ると、速く送るほうを選ぶと距離はむしろ少し縮み、遠くへ届かせるほうを選ぶと速度は8分の1まで落ちます。「2倍かつ4倍」にはなりません。
そしてイヤホンの音楽は、これまでClassicのほうで送られてきました。「5.0だから音楽が2倍速く、4倍遠くまで届く」わけではありません。
5.0でClassic側に入ったのは、SAMという機能です。スマートフォンの中では4Gの電波とBluetoothが隣り合っているため、使う時間をずらして互いの邪魔を減らします。
5.1・5.2 — 方向がわかる、新しい音の土台ができる
5.1では、電波がどの方向から来たかを測れる機能が入りました。店舗の案内や備品の位置管理など、屋内で「どこにあるか」を知る用途に向けた一歩です。
5.2で入ったのが、後で説明するLE Audioの土台です。時間をそろえて複数の機器へ同じ音を届ける仕組みで、公式は映画館のような場所での利用も想定しています。
5.3以降 — 省電力と接続の安定
5.3は、こまかい改良を積み重ねた世代です。受け取り済みのデータをすぐ捨てられるようにして電力を節約したり、つなぎっぱなしのときの通信の間隔をすばやく切り替えたりできるようになりました。
子機の側から「この周波数は混んでいる」と親機に伝えられるようにもなりました。混雑した場所での電波干渉を避けやすくする改良です。
5.4は、スーパーの電子棚札のように、数千台の小さな機器へ一斉に情報を配る用途に向けた世代でした。私たちが直接触れる機能ではありません。
このように、世代が進んで良くなるのは「電池の持ち」と「つながりやすさ」が中心です。
新しいバージョンが土台になるLE AudioとLC3

LE Audioは、低消費電力のLEを使って音を送る、新しい仕組みです。5.2で入った土台の上に成り立っています。
LC3 — 新しい音の運び方
LE AudioにはLC3という新しいコーデックが用意されています。正式名称はLow Complexity Communications Codec(ロー・コンプレキシティ・コミュニケーションズ・コーデック)です。
Bluetooth SIGは、少ないデータ量でも品質を保てる方式だと説明しています。同じ音を軽く送れれば、そのぶん電池が長持ちします。
ただし、これまでのSBCやAACとは別系統の仕組みです。従来のコーデックとの違いはコーデックの記事でくわしく解説しています。
そして注意したいのが、バージョンの数字だけでは対応しているかどうかが分からないことです。「5.3対応」と書かれていても、LE Audioが使えるとは限りません。
Bluetooth SIGも「対応しているかはメーカーに確認してほしい」と案内しています。商品ページで「LE Audio対応」と書かれているかを、送る側と受け取る側の両方で確かめてください。
Auracast — 音の一斉配信
Auracast(オーラキャスト)は、1台の送信機から人数の制限なく音を配れる使い方です。
空港の案内放送を自分のイヤホンで聞く。ジムに並ぶテレビの音声を、手元で選んで聞く。ラジオの選局に近いイメージです。
自分の機器のバージョンを確認する方法

Windowsパソコンは、次の手順で確認できます。
- STEP
デバイス マネージャーを開く
スタートメニューを右クリックし、「デバイス マネージャー」を選びます。
- STEP
Bluetooth無線のプロパティを開く
「Bluetooth」の項目を開き、無線機(Intel・Realtekなどの名前)を右クリックして「プロパティ」を選びます。
- STEP
「詳細設定」タブでLMPの番号を見る
「Bluetooth無線情報」の中にLMPという番号があります。この数字がバージョンに対応しています。
LMPの番号は、次のように読み替えます。
| LMP | Bluetoothのバージョン |
|---|---|
| LMP 9 | 5.0 |
| LMP 10 | 5.1 |
| LMP 11 | 5.2 |
| LMP 12 | 5.3 |
| LMP 13 | 5.4 |
| LMP 14 | 6.0 |
※ マイクロソフトの公開している対応表です。LMP 6〜8は4.0〜4.2にあたります。6.1以降はこの表に載っていません。
数字が古くても、がっかりしないでください。音楽を聴くだけなら、5.0より前の世代でも使えます。
スマートフォンやイヤホンは、標準の設定画面では確認できないことがほとんどです。メーカーの仕様ページで、型番から調べてください。
型番は、本体の裏面や箱に書かれています。スマートフォンなら、設定の「情報」や「端末情報」でモデル名を確認できます。
結局どこを見て選べばいい?
選ぶときの目安は、次の4つに整理できます。
- 音質を重視する:バージョンではなくコーデックを見る
- 動画やゲームの音のズレが気になる:これもバージョンではなく、コーデックと機器の作りで決まる
- 電池の持ちや途切れにくさを重視する:新しいバージョンのほうが有利になりやすい(ただし改良の多くはLE側なので、音楽を聴くときにどこまで効くかは製品しだい)
- LE AudioやAuracastを使いたい:数字ではなく「対応」の表記を、送る側と受け取る側の両方で確認する
なお、届く距離はバージョンだけでは決まりません。機器の性能や、間にある壁や人の体によって大きく変わります。
同じように、つながっているのに音が途切れる・マウスの反応が飛ぶといった不調も、バージョンの違いより電波の混雑や距離が原因のことが多いものです。買い替えの前に、置き場所や周りの機器を見直してみてください。
まとめ
この記事では、Bluetoothのバージョンについて、数字の意味から世代ごとの違い、確認のしかたまでを解説しました。
あらためて要点をまとめると、次のとおりです。
- バージョンは規格の世代を表す番号。最新はCore 6.3
- 違うバージョン同士でもつながるが、古いほうに合わせて動く
- 5.0の「速度2倍・距離4倍」はLE側の話で、しかも2つは同時に使えない
- LE AudioとLC3が使えるかは、数字ではなく「対応」の表記で確かめる
箱に書かれた数字は、性能の順位表ではありません。自分の使い方に必要な機能が入っているか、という目で見てみてください。



