SLAとは?稼働率99.9%が約束していること・していないこと

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クラウドのメールやファイル置き場、法人向けの光回線を選んでいるときに、「稼働率99.9%」「SLA」という言葉を見かけたことはないでしょうか。

「99.9%なら、ほぼ止まらないということだよね」「止まったら、お金が返ってくるのかな」と思った方もいるかもしれません。

実はSLAは、「どれだけ止まってよいか」と「どの時間を数えないか」、そして「守れなかったら何を返すか」を決めた約束です。「止まらない」という約束ではありません。

この記事では、小さな会社でクラウドサービスや回線の契約を見る役になった方に向けて、稼働率の数字が約束していること・していないこと、会社の回線が止まった時間が数えられない理由、使っているサービスにSLAがあるかの確かめ方を説明します。内容は、2026年10月に Microsoft・Google・AWS・NTT東日本・NTTドコモビジネス・サイボウズ・freee が公開している文書で確かめたものです。どのサービスを選ぶべきかの比較はしません。

SLAとは?稼働率「99.9%」が約束していること

「稼働率99.9%は「月に約43分止まってよい」約束」というタイトルの図。同じ長さの濃紺の横長の棒が上下に2本並ぶ。上の棒には「99.9%」と書かれ、右端の水色の部分に「約43分」とある。下の棒には「99.99%」と書かれ、右端のごく細い水色の部分の手前に「約4分」とある。下に「水色が止まってよい時間(30日の月。長さは実際の比率ではありません)」と書かれている。

SLAは Service Level Agreement(サービス レベル アグリーメント)の略で、「サービスレベル合意」と訳されます。簡単に言うと、サービスを出す側が「どのくらい使える状態にしておくか」を数字で約束し、守れなかったときの扱いまで決めた取り決めです。Microsoft は日本語版の文書で「サービス レベル契約」と訳しています(Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word))。

中身の中心になるのが稼働率です。ひと月のうち、サービスが使える状態だった時間の割合を表します。たとえば Google は、Gmail やドライブなどの Google Workspace について、月の稼働率を99.9%以上にすると約束しています(Google Workspace Service Level Agreement(Google・英語))。NTT東日本の法人向けの光回線「フレッツ 光クロス Biz」は、99.99%を掲げています(詳細仕様|法人向け最大概ね10ギガ光回線 フレッツ光クロスBiz(NTT東日本))。

99.9%は、30日の月に約43分止まってよいという意味

99.9%と聞くと「ほぼ100%」に見えますが、裏返すと0.1%は止まってよいということです。

30日の月は 30日×24時間×60分=43,200分なので、その0.1%は43.2分です。稼働率99.9%の約束は、30日の月に43分ほど止まっても守られたことになります。99.99%なら約4分です(31日の月は、それぞれ約45分と約4分)。

稼働率30日の月に止まってよい時間1年(365日)に直すと
99%約7時間12分約3日15時間36分
99.9%約43分約8時間46分
99.99%約4分約53分

「9」が1つ増えるごとに、止まってよい時間は10分の1になります。なお、この記事で確かめた Microsoft・Google・フレッツ 光クロス Biz の SLA は、どれも1か月ごとに稼働率を判定します。1年に直した時間は目安で、「年に8時間46分までなら、ひと月にまとめて止まってもよい」という意味にはなりません。また、この表は止まった時間を全部数えた場合の話です。実際のSLAには、はじめから数えない時間があります。

計画メンテナンスなど、はじめから数えない時間がある

確かめた Microsoft と NTT東日本の SLA は、前もって知らせたメンテナンスの時間を、止まった時間に数えません。サイボウズの稼働率の目標も、定期メンテナンスの時間を除いた数字です。

Microsoft の SLA は、「ダウンタイムには予定されていたダウンタイムは含まれません。」と書いています。予定されていたダウンタイムとは、ネットワークや機器、サービスの保守やアップグレードのための停止で、Microsoft は少なくとも5日前までに知らせるとしています(Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word))。なお、同じ文書でメールの Exchange Online については「このサービスには予定されていたダウンタイムはありません。」としています。

サイボウズは、kintone などの cybozu.com について「99.99%を目標に運用します。(定期メンテナンスを除きます)」と書き、定期メンテナンスの時間を「毎月第2日曜日、午前1時~午前7時(JST)に、定期メンテナンスを実施します。」と決めています(サービスレベル目標(SLO)(サイボウズ))。99.99%の外側に、月に最大6時間の窓があります。NTT東日本のフレッツ 光クロス Biz も、事前にメンテナンスの予定を知らせた時間は減額の対象外です(詳細仕様|法人向け最大概ね10ギガ光回線 フレッツ光クロスBiz(NTT東日本))。

深夜や休日のメンテナンスなら困らない会社もあるでしょう。ただ、夜間や日曜に仕事をする会社なら、その時間に止まることがあると分かっていて契約するかどうかを考えておく必要があります。

SLAの稼働率は、会社の回線が止まった時間を数えない

「確かめたクラウドのSLAが数えるのは、事業者の側だけ」というタイトルの図。左から、ノートパソコン、ルーター、雲が線でつながり、雲だけが水色の点線の枠で囲まれている。下に左から「会社」「回線・プロバイダ」「クラウド」と書かれ、その下に「会社や回線が止まった時間は数えない」「SLAで数えるのはここ」と書かれている。

ここがいちばん誤解されやすいところです。「うちはメールが2時間使えなかったのに、今月の稼働率は守られている」ということが起こります。

お店の営業日にたとえると分かりやすいかもしれません。お店が「今月は1日も休みませんでした」と言うとき、店までの道が工事で通れなかった日は、お店の休みには数えません。お客さんから見れば行けなかった日でも、お店は開いていたからです。

クラウドの事業者が責任を持つのは、自分の設備の中だけ

Google の SLA(英語)は、止まった時間(Downtime)を「server side error rate」、つまりサーバーの側で起きたエラーの割合で測ると書いています(Google Workspace Service Level Agreement(Google・英語))。同じ文書は、「Customer’s equipment and/or third party equipment, (not within the primary control of Google)」、つまり利用者の機器や、Google が管理していない第三者の機器が原因の問題を、SLAの対象から外しています。

Microsoft はもっとはっきり書いています。SLAの「制限事項」で、「本 SLA および該当するサービス レベルは、次の要因によるパフォーマンス上の問題または可用性の問題には適用されません。」としたうえで、マイクロソフトのデータ センターの外のネットワーク障害について「お客様のサイトにおけるもの、またはお客様のサイトとマイクロソフトのデータ センターとの間におけるものを含む」と挙げています(Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word))。メールの Exchange Online の項目にも、対象外として「Microsoft 365 の境界外のネットワークの問題」「第三者によるインシデント (ISP、OnPrem など)」が並んでいます。ISP は、インターネットにつなぐプロバイダのことです。

AWS も、サーバーを借りるサービス(Amazon EC2)の SLA で、責任分界点(AWS が受け持つ範囲の境目)の外のインターネットアクセスの問題を対象外にしています(Amazon Computeサービスレベルアグリーメント(AWS・PDF))。国内のサイボウズも、保証の対象外に「端末設備等に起因する場合」を挙げています(cybozu.com サービスご利用規約(サイボウズ・PDF))。

つまり、ここで確かめたクラウドのSLAでは、会社の回線やルーター、プロバイダが止まってクラウドが使えなかった時間は、SLAの「止まった時間」に入りません。クラウドの側から見れば、サービスは動いていたからです。

会社から見た「使える時間」は、回線とクラウドの両方で決まる

会社の席からクラウドのメールを開くには、社内のネットワーク、インターネットの回線とプロバイダ、クラウドのサービスが、全部同時に動いている必要があります。どれか1つが止まれば、社員から見れば「メールが使えない」です。

たとえば、ある月に会社の回線が3時間止まり、クラウドは1分も止まらなかったとします。社員は3時間メールを使えませんでしたが、クラウドのSLAで見れば、その月の稼働率は100%です。クラウドの事業者に申し出ても、返ってくるものはありません。

ですから、クラウドの稼働率の数字だけを見て「うちのメールは月に43分以上止まらない」と考えるのは早すぎます。回線の側にどんな約束があるかは、クラウドとは別に見る必要があります。

SLAの付かないフレッツ光は、24時間止まってはじめて料金が戻る

では、回線の側はどうなっているのでしょうか。光回線の速さは「最大1Gbps」のように書かれていても、それが実際に出る速さの約束ではないことをbpsの記事で書きました。止まらないことについても、NTT東日本のフレッツ光の約款を読むと、法人向けの一部を除いて稼働率の約束はありません。

NTT東日本と直接契約するフレッツ光の契約約款(IP通信網サービス契約約款)では、利用者のせいではない理由で回線がまったく使えなくなったとき、NTT東日本がそれを知ってから24時間以上続いた場合に限って、24時間ごとに日数を数え、その日数分の料金を払わなくてよいとしています(第38条)。損害の賠償も、同じく24時間以上続いたときに限り、その日数分の料金を上限にしています(第51条。IP通信網サービス契約約款(NTT東日本・PDF))。数えるのは24時間の倍数の部分だけなので、23時間止まっても、戻る料金はありません(NTT東日本の故意や重大な過失によるときは別の扱いです)。また、時間は NTT東日本が知った時刻から数えるので、回線が止まったら、早めに故障を連絡しておくことが大切です。光コラボ(NTT東日本の回線を使って別の会社が売る光回線)や、ほかの会社の光回線は、それぞれの会社の約款で決まるので、契約している会社の約款を見てください(この記事では確かめていません)。

NTT東日本のフレッツ光で稼働率の約束(SLA)が付いているのは、法人向けの一部の回線です。約款の中で稼働率の減額を決めているのも、法人向けの「フレッツ 光クロス Biz」だけです。フレッツ 光クロス Biz は、ひと月に使えた時間の割合が99.99%を下回ると、割合に応じて月額料金の30分の1から全額までを減額すると決めています(提供条件|フレッツ 光クロス Biz(NTT東日本))。一方、同じ NTT東日本の法人向けでも「フレッツ 光クロス オフィスタイプ」については、NTT東日本自身が「SLAは搭載されていないものの、24時間365日の故障受付に対応しており」と説明しています(SLAとは?SLOとの違いと企業が導入するメリットをわかりやすく解説(NTT東日本))。

「光クロス Biz のSLAが及ぶのは、回線の一部の区間」というタイトルの図。左から、会社のルーター、小さな四角い箱、ビル、縦長のサーバー、雲が線でつながっている。小さな箱からビルまでだけが水色の点線の枠で囲まれ、枠の上に「SLAが及ぶ区間」とある。それぞれの下に「会社のルーター」「回線終端装置」「NTT東日本のビル」「プロバイダ」「インターネット」、いちばん下に「プロバイダは別の契約。約束はプロバイダとの契約で決まる」と書かれている。

フレッツ 光クロス Biz のようにSLAの付いた回線でも、約束が及ぶのは回線の一部の区間です。フレッツ 光クロス Biz の提供条件は、SLAの対象を「回線終端装置等レンタル機器」「ご利用場所までの光ファイバー」「NTT東日本収容ビル内装置(一部)」とし、インターネットを使うにはプロバイダとの契約が別に必要だと書いています。回線終端装置は、光回線の終わりに置くONUなどの箱のことです。プロバイダの側の約束は、プロバイダとの契約で決まります。たとえば NTTドコモビジネスの法人向けの「スーパーOCN」は、稼働率ではなく「故障回復時間」などで約束していて、15分以内に直せなければ、かかった時間に応じて料金の一部または全部を返すとしています(法人向けOCNサービス(SLA(サービス品質保証制度))(NTTドコモビジネス))。

回線が止まっているかどうかを電話の前に調べる方法と、問い合わせ先の決め方は、次の記事で扱っています。

SLAを下回ったら返金される?戻るものと申し出の期限

「戻るのは料金の一部。申し出の期限があることも」というタイトルの図。左に、4分の1が水色に切り分けられた濃紺の円があり、「そのサービスの料金の一部」「止まったあいだの損は戻らない」と書かれている。右に、1日だけ水色に塗られたカレンダーがあり、「申し出の期限」「例: 翌月末・30日以内・60日以内」と書かれている。

稼働率が約束を下回ったら、損をした分が返ってくる、と考えがちです。実際に戻るものは、もっと小さく、条件つきです。

戻るのは料金の一部で、期限までに申し出が要ることもある

SLAを下回ったときに戻るものを、Microsoft・Google・AWS はサービスクレジットと呼びます。多くは、そのサービスの料金から差し引かれたり、使える期間が延びたりする形です。

Microsoft は、サービスクレジットを、料金のうち申し立てが認められたあとに「お客様に返金される割合」と定義し、その額をサービスの料金に適用するとしています(Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word))。Google は、クレジットを金額に換えることはできず、オンラインで契約して月払いの場合に限って、同じ額を今後の請求から差し引くとしています(Google Workspace Service Level Agreement(Google・英語))。AWS(Amazon EC2)も、クレジットは今後の請求にだけ充てるもので、返金を受ける権利ではないと書いています(Amazon Computeサービスレベルアグリーメント(AWS・PDF))。

サービス約束を下回ったときに戻るもの申し出
Microsoft(Exchange Online・Teams・OneDrive・SharePoint)99.9%未満でそのサービスの月額料金の25%、99%未満で50%、95%未満で100%要る。止まった月の翌月の末日までに
Google Workspace99.9%未満で3日、99%未満で7日、95%未満で15日、使える期間を延ばす(オンラインで契約して月払いなら、同じ額を今後の請求から差し引く)。上限は15日分要る。受け取れる状態になってから30日以内に
サイボウズ(cybozu.com)連続24時間を超えて止まったとき、24時間ごとに日数を数え、最大1か月分まで(減額・期間の延長・返金のどれにするかはサイボウズが選ぶ)要る。60日以内に、書面を添えて
スーパーOCN(NTTドコモビジネス)故障が15分以内に直らなかったとき、時間に応じて料金の100分の1から全額要らない。請求から差し引かれる
フレッツ 光クロス Biz(NTT東日本)ひと月に使えた時間の割合が99.99%未満で月額料金の30分の1、98%未満で10分の1、95%未満で3分の1、90%未満で全額提供条件にも約款にも、申し出が要るとは書いていない。止まった時間は、故障を申告した時刻から数える(大規模な故障で NTT東日本が把握できるときは、発生した時刻から)

Microsoft は、申し立てについて「他のすべての本サービスに関する申し立てについては、かかるインシデントが発生した月の後の当該期間の末日までに、マイクロソフトがその申し立てを受理していなければなりません。」と書き、2月15日に起きたなら3月31日まで、という例を挙げています。止まった日時や影響を受けた人数などの情報を出さなければ、申し立ては却下されます(Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word))。Google も、30日以内にサポートのケースを作って知らせなければ、受け取る権利を失うとしています(Google Workspace Service Level Agreement(Google・英語))。サイボウズは、規約の第20条で、保証に反する停止が起きた日から60日以内に、料金を払ったことと止まった内容・日を証明する書面を添えて請求する、と決めています(cybozu.com サービスご利用規約(サイボウズ・PDF))。

一方で、申し出が要らないものもあります。スーパーOCN は「料金返還請求の手続きは必要ありません。毎月のご請求金額から返還額を減額します。」と案内しています(法人向けOCNサービス(SLA(サービス品質保証制度))(NTTドコモビジネス))。申し出が要るかどうかと、その期限は、SLAの文書を読まないと分かりません。止まったときに慌てないよう、期限だけは先に控えておくと安心です。

なお、Microsoft の SLA は、複数のサービスをスイートとしてではなく別々に買った場合の申し立て方や、オープン ライセンスなどで買った場合はクレジットが金額ではなく日数で戻ることを、別に書いています(Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word))。どの料金が「そのサービスの料金」にあたるかは、契約の形で変わることがあるので、迷ったら契約した先に確かめてください。

止まったら、申し出の期限に間に合うように動く

止まったときは、次の順で動くと、申し出の期限に間に合わせやすくなります。

  1. STEP

    稼働状況のページで、事業者の側の障害かを見る

    クラウドの事業者が障害を出していれば、SLAの対象になりうる止まり方です。何も出ていなければ、会社の回線や社内の機器も疑います。見る場所は、この記事の「SLAが見つからないときに、代わりに見るもの」の表にまとめています。

  2. STEP

    回線が止まっているなら、故障を連絡する

    フレッツ光の約款は NTT東日本が知った時刻から、フレッツ 光クロス Biz は故障を申告した時刻から、止まった時間を数えます。連絡が遅れると、数えられる時間が短くなることがあります。

  3. STEP

    止まった日時と、影響を受けた人数を控える

    Microsoft は、申し立てに、止まった日時と続いた時間、影響を受けたユーザーの数、出たエラーなどの情報を求め、出さなければ却下するとしています。止まっているあいだに控えておくのが確実です。

  4. STEP

    SLAの文書で期限を確かめ、期限までに申し出る

    期限と申し出の方法は、サービスごとに違います(戻るものの表の「申し出」の列)。Google はサポートのケースを作って知らせる形です。

期限や窓口は変わることがあります。Microsoft は、契約期間の途中で SLA の条件を変えず、更新したときはその時点の最新版が当てはまるとしています。申し出る前に、自分の契約期間に当てはまる版を確かめてください。

止まったあいだの損は戻らない

サービスクレジットで戻るのは、あくまでそのサービスの料金の一部です。メールが止まって受注を逃した、社員が仕事にならなかった、といった損は戻りません。

Microsoft の SLA は、「サービス クレジットは、収益の損失、運用コスト、またはお客様もしくはエンドユーザーが経験した間接的な損失を含むがこれらに限定されないその他の形態の損失を、補償するために付与されることはありません。」と書き、クレジットはその月の月額料金を超えないとしています。さらに、クレジットは止まったことに対する「唯一かつ排他的な権利」だとしています(Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word))。Google も、このSLAに書いたものが、守れなかったときの「sole and exclusive remedy」(唯一の救済)だとし、AWS(Amazon EC2)も、SLAで決めたものを唯一の救済手段としています。

SLAは、止まったときの損を埋めるための保険ではなく、事業者がどこまで責任を持つかの線引きだと考えたほうが実態に近いです。止まると仕事にならないサービスは、止まったときにどうするか(別の連絡手段、紙での受付など)を、社内で決めておくほうが確実です。

なお、社内の機器(ルーターやNASなど)が壊れたときに、誰がいつ直すかの約束は、回線やクラウドのSLAとは別の「保守契約」で決まります。

使っているサービスにSLAがあるかを確かめる

「使っているサービスで確かめる順番」というタイトルの図。白いカードが3枚横に並び、水色の矢印でつながっている。カードには順に「1」「SLAの文書を探す」、「2」「目標か保証かを見分ける」、「3」「稼働状況のページを見る」と書かれている。

ここまでを踏まえて、いま使っているSaaS(インターネット越しに借りて使うソフト)や回線に、どんな約束があるかを確かめてみましょう。IPA(情報処理推進機構)の手引きも、クラウドサービスを選ぶときの確認に、稼働率や障害時の回復の目標時間などのサービス品質保証が示されているか、を挙げています(中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き(IPA・PDF))。

使っているサービスごとに、次の5つを控えておくと、止まったときに慌てずに済みます。

  • SLAがあるか、あればどの文書か
  • 書いてある稼働率は、約束(保証)か目標か
  • 数えない時間(メンテナンスなど)
  • 下回ったときに戻るものと、申し出の期限
  • 稼働状況のページの場所

回線も、同じ5つを契約ごとに見ておきます。

SLAは、利用規約とは別の文書になっていることがある

最初に探すのは、SLAが書かれた文書です。利用規約だけを読んでも見つからないことがあります。

  • Microsoft は「Microsoft Online Services のサービス レベル契約」という独立した文書で、サービスごとの稼働率とクレジットを決めています(日本語版あり)
  • Google Workspace は、規約とは別の「Google Workspace Service Level Agreement」のページです(英語のみ)
  • サイボウズは、利用規約の第20条「保証範囲」に保証が書かれ、稼働率の目標は別の「サービスレベル目標(SLO)」のページにあります

探すときは、サービス名に「SLA」「サービスレベル」を付けて検索するか、利用規約のページの近くにある文書の一覧を見ます。NTT東日本の回線なら、サービスの「提供条件」と「契約約款」に書かれています。

「目標」と書いてある稼働率は、約束ではない

稼働率の数字を見つけたら、それが約束(保証)なのか目標なのかを確かめます。似た数字でも、下回ったときの扱いがまったく違います。

サイボウズはよい例です。計画メンテナンスの話で見た99.99%は、「サービスレベル目標(SLO)」のページに「目標に運用します」と書かれた数字です(サービスレベル目標(SLO)(サイボウズ))。一方、利用規約の第20条で保証しているのは、サービスが連続24時間を超えて止まらないことです(cybozu.com サービスご利用規約(サイボウズ・PDF))。99.99%は目指している数字で、規約で約束しているのは「24時間」のほう、という関係です。

このように事業者が目指す数字は、SLO(Service Level Objective、サービスレベル目標)と呼ばれます。サイボウズも、そのページを「サービスレベル目標(SLO)」と名づけ、規約の保証とは別にしています。

SLAや稼働率の保証を、規約に書いていないサービスもあります。freee の利用規約は、第21条(無保証)で、サービスについて「その完全性、正確性、可用性、有用性、セキュリティ性、第三者の権利に関する非侵害性または特定の目的に対する適合性について何ら保証するものではありません」と書いています(freee利用規約(フリー))。「可用性」は、使える状態であることを指す言葉です。なお、この規約は個別のサービスに別の規約があればそちらを優先するとしており、ここで読んだのは freee 全体の利用規約です。

稼働率の約束が無いからといって、すぐに使ってはいけないわけではありません。サイボウズのように、稼働率は目標でも、24時間を超える停止には料金を戻す決まりを規約に置いている会社もあります。ただ、SLAも、止まったときに料金を戻す決まりも規約に無いなら、止まっても料金は戻らない前提で使っていると知っておくことは大切です。freee の利用規約は、第6条で、受け取った利用料金は「いかなる場合にも」返金しないとも書いています(freee利用規約(フリー))。

SLAが見つからないときに、代わりに見るもの

SLAが無いサービスでも、稼働状況のページは出ていることがあります。確かめた Microsoft・Google・サイボウズ・freee は、どこも出しています。いま止まっているか、過去にどれくらい止まったかが分かるので、約束の代わりに「実際の止まり方」で判断する材料になります。IPAの手引きも、確かめることの1つに「サービス状態のリアルタイム情報表示」を挙げています。

サービス見る場所分かること
Microsoft 365管理センターの[サービス正常性]いま起きている問題と、過去7日または30日に解決した問題
Google Workspaceステータス ダッシュボード現在と過去の稼働状況。過去365日のインシデントの一覧
サイボウズ(cybozu.com)「稼働実績」のページ毎月の稼働率と、定期メンテナンスで止めた時間
freeefreee status稼働状況、メンテナンスの予定、直近の履歴

Microsoft 365 のサービス正常性は管理者の役割を持つ人が見るもので、問題ごとに、原因が Microsoft の側か、使っている側の環境かも示されます(Microsoft 365 サービス正常性を確認する方法(Microsoft))。Google のステータス ダッシュボードの見方は、Google の管理者向けのヘルプにあります(Google Workspace サービスのステータスを確認する(Google))。サイボウズは、稼働実績のページで「稼働率とは、定期メンテナンスを除く期間のうち、サービスを利用できた割合を表します。」と断ったうえで、毎月の数字を出しています(稼働実績(サイボウズ))。freee は、ヘルプで freee status の使い方を説明しています(freeeプロダクトの稼働状況を確認する(freee status)(freee))。

「メールが開かない」と言われたときも、まずこのページを開けば、クラウドの側の問題か、会社の回線の側の問題かを切り分ける手がかりになります。ただし、ページに載らない問題もあります(Microsoft は、一覧に無い問題を管理者が報告する窓口を用意しています)。ページに何も出ていなければ、会社の回線や社内の機器も疑ってみてください。

まとめ

この記事では、SLAの稼働率が約束していること・していないことと、使っているサービスでの確かめ方を説明しました。

  • 稼働率99.9%は、30日の月に約43分止まってよいという約束。99.99%なら約4分
  • 前もって知らせたメンテナンスの時間は、Microsoft や NTT東日本の SLA では数えない(サイボウズの稼働率の目標は、毎月第2日曜日の午前1時〜7時を除いた数字)
  • 確かめた Microsoft・Google・AWS(EC2)のSLAは、会社の回線やプロバイダなど、事業者の設備の外で起きた障害を数えない
  • NTT東日本と直接契約するフレッツ光の約款では、法人向けの光クロス Biz を除いて稼働率の約束が無く、料金が戻るのは、NTT東日本が知ってから24時間以上まったく使えなかったとき。光クロス Biz のようにSLAが付く回線でも、約束が及ぶのは回線の一部の区間
  • 下回ったときに戻るのはそのサービスの料金の一部(大きく下回れば全額)で、止まったあいだの損は戻らない。Microsoft・Google・サイボウズは期限までに申し出が要る
  • 稼働率の数字は、約束(保証)か目標かを見分ける。約束が無ければ、稼働状況のページで実際の止まり方を見る

SLAの数字は「安心の印」ではなく、どこまでが事業者の責任かを示す線です。線の外側にある会社の回線と社内の機器は、自分たちで見ておく必要があります。

回線とプロバイダの違い、会社のネットが遅いときの連絡先、機器の保守契約、クラウドサービスを乗り換えるときのデータの移し方は、次の記事にまとめています。

参考: Microsoft Online Services のサービス レベル契約(Microsoft・Word)

参考: 中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き(IPA・PDF)

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