インターネットを使う上で、「IPv4」や「IPv6」という言葉を目にしたことはありませんか?
スマートフォンの設定画面やWi-Fiルーターの説明書でよく見かけるけれど、いまいち何のことかわからない…そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は、これらはインターネットの「住所」のようなもので、私たちが日々使うインターネットには欠かせない重要な仕組みなのです。
最近では、IPv4からIPv6への移行が進んでいますが、一体何が違うのでしょうか?
この記事では、難しい専門用語を使わずに、IPv4とIPv6の違いについてわかりやすく解説していきます。あわせて、「IPv6にすると速くなる・安全になる」という広まりやすい言い方が、どこまで本当なのかも整理します。
目次
IPv4とIPv6は、どちらもIPアドレスの規格

ウェブサイトやメールアドレスをパソコンやスマホで開くとき、裏側ではインターネット上の住所を使ってデータのやり取りをしています。
この住所が「IPアドレス」と呼ばれるもので、IPv4とIPv6はどちらもIPアドレスの規格(書き方のルール)です。
まったく別の仕組みが2つあるのではなく、同じ「住所」を、桁数の違う2つの書き方で表していると考えると分かりやすくなります。
なぜIPv4とIPv6の2種類があるの?

もともとインターネットで使われていたのはIPv4という種類のIPアドレスでした。
しかし、インターネットの利用者が増えるにつれて、IPv4では住所が足りなくなってしまうという問題が発生しました。
そこで、もっとたくさんの住所を使えるように新しく作られたのがIPv6なんです。
ここで押さえておきたいのは、これが「いつか足りなくなるかもしれない」という将来の話ではないということです。日本国内のIPアドレス割り当てを管理しているJPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)は、2011年2月3日に世界の中央在庫(IANA)が尽き、同年4月15日にはアジア太平洋地域も「IPv4アドレス在庫枯渇」の状態になったと説明しています。
つまり、新しくIPv4の住所をまとめて配ることは、すでにできなくなっています。いま私たちがIPv4を使えているのは、すでに配られた住所を各社がやりくりしているからです。
IPv4とIPv6はどう違う?

IPv4とIPv6の大きな違いは、使える住所の数です。
| 項目 | IPv4 | IPv6 |
|---|---|---|
| 住所の長さ | 32ビット | 128ビット |
| 使える住所の数 | 約43億個 | 約340澗(かん)個 |
| 書き方の例 | 192.168.1.10 | 2001:db8::1 |
| 区切り文字 | ピリオド(.) | コロン(:) |
「澗(かん)」は聞き慣れない単位ですが、1兆を3回かけた数(1兆×1兆×1兆)が1澗です。桁を数えるより「事実上、足りなくなる心配がない量」と覚えるほうが実用的です。
例えるなら、IPv4は小さな町、IPv6は巨大な都市のようなイメージです。
小さな町では家が足りなくなってしまうこともありますが、巨大な都市ならたくさんの人が住むことができますよね。
IPv6にすると何が変わる?

IPv6の効果としてよく挙げられるのが「速くなる」「安全になる」の2つです。どちらも、そのまま受け取ると誤解になります。順番に見ていきます。
IPv6にすると本当に速くなる? ― 効いているのは接続方式(IPoE)
日本の光回線で「IPv6にすると速くなる」と言われる主な理由は、住所の規格そのものではなく、IPv6とセットで整備された新しい接続方式(IPoE)にあります。混みやすい設備を通らずに済むためです。
逆に言えば、同じIPv6でも、古い接続方式(PPPoE)のままなら速くなりません。プロバイダの案内で「IPv6対応」と書かれていても、IPoEに対応しているかは別に確かめる必要があります。
なお「IPv6にすると、IPv6に対応していないサイトが見られなくなるのでは?」と心配する必要はありません。いまのIPoEではIPv6の通信の中にIPv4を通す仕組み(IPv4 over IPv6)が一緒に使われるため、従来どおりのサイトもそのまま開けます。
IPv6は安全になる? ―「IPsecがあるから安全」は誤解
IPv6には通信を暗号化する仕組み(IPsec)が用意されているため、「IPv6のほうが安全」と紹介されることがあります。
しかしJPNICのニュースレターに載った解説(情報通信研究機構による寄稿・2013年7月)は、これをよくある誤解として挙げ、「IPv6環境ではIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)が使われるためIPv4環境よりも安全である」という声をよく聞く、と書いています。
実際には、この仕組みは用意されているだけで、いつも使われるわけではありません。ウェブサイトの通信を守っているのは、IPv4でもIPv6でも同じくブラウザとサイトの間の暗号化(URLが https で始まるもの)です。
IPv6に変えても、ウイルス対策や詐欺サイト対策の代わりにはなりません。そこは今までどおりの備えが必要です。
住所の数に余裕ができることです。家庭では実感しにくいのですが、スマート家電のようにネットにつながる機器が増えるほど効いてきます。速さと安全性は、IPv6そのものではなく接続方式と普段の対策で決まります。
自分はIPv6で通信している?
いま自分がIPv6を使えているかどうかは、契約しているプロバイダと、手元の機器の両方が対応しているかで決まります。どちらか一方だけでは使えません。
ここで引っかかりやすい落とし穴が1つあります。パソコンやスマホの設定画面を開くと、IPv6のアドレスが表示されていることがありますが、それだけではインターネットまでIPv6でつながっている証拠になりません。
IPv6が使える状態の機器は、同じLANの中(つながっている機器どうし)だけで通じる「fe80:」で始まるアドレスを必ず持っているためです。これは外に出ていくための住所ではありません。
手っ取り早いのは、IPv6の判定サイトを開くことです。「IPv6 確認」で検索すると、開くだけで判定してくれるページがいくつも見つかります。ここで「IPv6で接続されています」と出れば、実際にIPv6が使えている状態です。
ただし判定サイトで分かるのはいまIPv6が使えているかどうかまでで、契約の中身までは出てきません。「速くなるはずなのに変わらない」ときのように、IPoEを申し込めているかまで確かめたい場合は、契約しているプロバイダの会員ページを見てください。申し込みが必要かどうか、料金がかかるかどうかは事業者によって違います。
まとめ
この記事では、IPv4とIPv6の違いについて解説しました。
IPv6は、IPv4の住所が足りなくなったという問題に答えるために作られた、新しい住所の規格です。すでにIPv4の新規の割り当ては終わっているため、移行は今後も進んでいきます。
一方で、「IPv6にすると速くなる・安全になる」という言い方は正確ではありません。速さを決めているのは接続方式(IPoE)で、安全性は今までどおりの対策で決まります。ここを分けて理解しておくと、プロバイダの案内を読むときに迷わなくなります。
この記事を通して、IPv4 と IPv6 について少しでも理解を深めていただければ幸いです。







