「辞めた人の会社のアカウント、もう消していいですよね?」——そう聞かれて、すぐに答えられるでしょうか。
「消したら、その人のメールやファイルはどうなるの?」「取引先からまだメールが来ているけど?」と、手が止まった方もいるかもしれません。
実は、アカウントを消すと、ほかの人に移していないメールやファイルは、決まった日数が過ぎると戻せなくなります。かといって止めたままにしても、料金が減るとは限りません。そして、辞めた人宛てのメールを受け取り続ける形は、Google と Microsoft で逆になっています(Microsoft はアカウントを消さずに残し、Google は消してからアドレスを付け替えます)。
この記事では、会社のメールとファイルを Google Workspace か Microsoft 365 で使っている会社で、辞めた人のアカウントの片付けを任された方に向けて、「止める」「残す」「消す」の違いと、消す前に決めること、片付ける順番を説明します。管理画面の操作手順には入りません。内容は、2026年9月に Google と Microsoft の案内で確かめたものです。
もう消してしまった方は、「もう消してしまったら、戻せる期間のうちに戻して移す」から読んでください。
目次
退職者のアカウントは「止める」「残す」「消す」でデータと料金が変わる

会社のアカウントは、社員証とロッカーの鍵を1つにまとめたようなものです。辞めた人の片付け方は、大きく3つに分かれます。
- 止める: 鍵を預かる。ロッカーの中身はそのまま
- 残す: 中身を残したまま、本人は開けない保管の形に替える
- 消す: ロッカーごと片付ける。ほかの人に移していない中身は、しばらくすると戻せない
どれを選ぶかで、データの残り方と料金のかかり方が変わります。画面での呼び名も、Google と Microsoft で違います。
止めると、データは残る。Google では料金も同じだけかかる
Google Workspace では「停止」と呼びます。Googleはユーザーを一時的に停止するで、停止しても「メール、ドキュメント、カレンダー、その他のデータは削除されません。」と書いています。ほかの社員と共有していたドキュメントも、共同編集者はそのまま使えます。
ただし同じページは、「新着メールやカレンダーの招待状はブロックされます。」とも書いています。止めたアカウントでは、取引先からの新しいメールは受け取れません。
料金も止まりません。同じページには「停止中のアカウントも課金の対象です。年間プランでもフレキシブル プランでも、アクティブなアカウントと同額のご利用料金がかかります。」とあります。
それでも止めるのは、本人が使えないようにしたうえで、中身を移す作業に入るためです。Googleはドライブ内のファイルを新しいオーナーに移管するで、まとめて移す前に持ち主のアカウントを停止するよう案内し、停止すると「移管中にコンテンツの作成や移動ができなくなります。」としています。
Microsoft 365 では、まずパスワードを変えます。Microsoftは手順 1 – ユーザーのサインインを禁止し、Microsoft 365 へのアクセスをブロックするで、「不正アクセスを防ぐための最初の手順は、パスワードをリセットすることです。」としています。同じページで案内している「サインインのブロック」は、有効になるまでに最大24時間かかることがあります。
Microsoft で料金を止めるには、止めることとは別に、ライセンスの扱いが要ります。その話は「消すと、移していないデータは消える」で説明します。
残す形は、Google はアーカイブ、Microsoft は共有メールボックス
Google Workspace には「アーカイブ」があります。Googleは元従業員のアカウントをアーカイブするで、離職した人のデータを保持したまま、本人が使えないようにする形として説明しています。
同じページは「ユーザーをアーカイブするには、アーカイブ ユーザーのサブスクリプションまたはフレキシブル プランが必要です。」としています(フレキシブル プランは、月ごとに払う契約のことです)。Google は「組織からユーザーを削除する」で、データを残したまま費用を抑える方法としてアーカイブを挙げていますが、料金がかからなくなるわけではありません。Googleは離職した従業員のデータを保持するためのオプションで、「転送されたデータを保有するアカウントに対する Google Workspace のライセンス料は必要となります。これには AU ライセンスも含まれます。」と書いています。AU ライセンスは、アーカイブ ユーザーのライセンスのことです。金額は案内のページに書かれていないので、この記事では扱いません。
アーカイブしたアカウントにも、新しいメールは届きません。「元従業員のアカウントをアーカイブする」には「新しいメールとカレンダーの招待状は、アーカイブされたユーザーのアカウントに送信されるとブロックされるため、受信できません。」とあります。
Microsoft 365 で残す形は、メールなら「共有メールボックス」への変換です。Microsoftは手順 4 – 元従業員のメールを別の従業員に転送するか、共有メールボックスに変換するで、変換すると「既存のすべてのメールと予定表が共有メールボックスに保持され、複数のユーザーがアクセスできるようになります。」と説明しています。料金とアカウントの扱いは、「Microsoft 365 は、消さずに共有メールボックスにしてもらう」で説明します。
ただし、共有メールボックスに残るのはメールと予定表です。OneDrive に置いてあったファイルは、別に移します(移し方は「その人が持ち主の共有ファイルは開けなくなる」で説明します)。
気をつけたいのは、ライセンスを外すだけでは「残す」にならないことです。MicrosoftはMicrosoft 365 管理センター内のユーザーのライセンスの割り当てまたは割り当て解除で、「ユーザーからライセンスを削除すると、そのアカウントに関連付けられているデータは 30 日間保持されます。」と書き、その後データは削除されて復元できなくなる、としています。
同じページによると、OneDrive のファイルは、ユーザーを削除しない限りこの削除の対象になりません。ただし、ずっとそのまま開けるわけでもありません。Microsoftはライセンスのない OneDrive ユーザー アカウントを管理するで、「ライセンスのない OneDrive アカウントは、ライセンスのない日数から 60 日が経過すると自動的に読み取り専用モードになり、ライセンスのない日数が 93 日経過するとアーカイブされます。」と書き、アーカイブされたあと中身を開くには再開(再アクティブ化)の手続きが要る、としています。
消すと、移していないデータは消える。戻せる期間は2社で違う
Googleは組織からユーザーを削除するで、アカウントを削除する前に会社のデータを別のユーザーに移せるとしたうえで、「移行されなかったデータは削除されます。」と書いています。
取引先とのこれまでのメールも、移さなければ消えます。Google の「離職した従業員のデータを保持するためのオプション」は、データ移行サービスで「メールのデータを古いユーザー アカウントから新規または既存のユーザー アカウントに転送できます。」としています。
消したあと、アカウントを元に戻せる期間は2社で違います。Googleは最近削除したユーザーを復元するで「削除後 20 日間以内であれば復元できます。」、Microsoftは組織からユーザーを削除するで「30 日後にユーザーのデータが永久に削除されるまではアカウントを復元できます。」と書いています。
そして、1人消しても、料金がすぐ減るとは限りません。
Google は「組織からユーザーを削除する」で、年間/定期プランについて「ユーザーを削除しても、組織のライセンス数が減ることはありません。」としています。月ごとに払うフレキシブル プランなら、削除した日までの日割りです。
Microsoft は「組織からユーザーを削除する」で、ユーザーを削除する画面でライセンスの扱いを選べるとし、ライセンスをサブスクリプションから外す選択をすると「サブスクリプションからライセンスが自動的に削除されます。」と書いています。一方、別の手順でユーザーだけを削除する場合については「これによりユーザーのアカウントは削除されますが、ライセンスの支払いは継続します。」とし、ライセンスの数を減らす操作を別に案内しています。
ただし同じページは、「年間プランの料金を支払っている場合、または請求サイクルの途中にある場合、コミットメントが完了するまで、サブスクリプションからライセンスを削除することはできません。」とし、「パートナー経由またはボリューム ライセンスを通して購入したライセンスは削除できません。」とも書いています。
契約が年間か月ごとか、販売店を通して買ったかは、1人減らしたときに料金がいつ変わるかに関わります。分からなければ、契約を管理している人か業者に確かめてください。
退職者のアカウントを消すと、ほかの社員の手元で起きること

消して困るのは、辞めた人のデータだけではありません。その人がほかの社員と共有していたファイルや、その人が主催した会議にも影響が出ます。
その人が持ち主の共有ファイルは開けなくなる。いつからかは2社で違う
Google は「組織からユーザーを削除する」で、削除されるデータに「ユーザーが所有するドライブ ファイル – これらのファイルは 20 日間保存されますが、アクセスできるのはユーザーを復元した場合に限ります。」を挙げています。ほかの社員と共有していても、持ち主のアカウントを消せば、そのファイルは開けなくなります。
一方、共有ドライブに置いたファイルは消えません。同じページは「共有ドライブ内のファイル – これらのファイルのオーナーは、ユーザーではなく組織です。」としています。
消す前にファイルの持ち主(オーナー)を別の社員に替えておけば、開ける人は変わりません。Google の「ドライブ内のファイルを新しいオーナーに移管する」は、「ファイルを移管しても、そのファイルにアクセスできるユーザーに影響はありません。」と書いています。
ただし Google ドライブでは、持ち主を替えても、思ったとおりに渡らないことがあります(フォルダだけ替えても中のファイルは替わらない、など)。その確かめ方は、クラウドサービスの乗り換えの記事で説明しています。
Microsoft 365 の OneDrive は、消してすぐには消えません。消したユーザーの OneDrive は保持期間(既定は30日)のあいだ残り、そのあとごみ箱に移ります。MicrosoftはOneDrive の保持と削除で、ごみ箱に移ったあとについて「この間、ユーザーは OneDrive 内の共有コンテンツにアクセスできなくなります。」と書いています。
同じページによると、ユーザーを削除すると、既定ではその人のマネージャーに OneDrive を開く権限が自動で付きます。ただし、マネージャーも副所有者も設定されていなければ、誰にも付きません。
ファイルは、管理者か、自動で権限が付いたマネージャーが移します。Microsoftは手順 5 – 別の従業員に OneDrive と Outlook のデータへのアクセス権を付与するで、管理者が辞めた人の OneDrive を開き、ファイルを「自分の OneDrive または共有ライブラリに移動またはコピーします。」と案内し、別の人に OneDrive を開く権限を付ける方法も挙げています。チームで使う共有の保存場所(SharePoint)に置いたファイルは、Microsoft の「組織からユーザーを削除する」が「SharePoint ファイルを移動する必要はありません。引き続きアクセスできます。」としています。
Teams を使っているなら、見落としやすいものがあります。MicrosoftはOneDrive と SharePoint での Teams 会議のレコーディングと文字起こしの保存とアクセス許可で、Outlook や Teams で予定を入れた会議の録画について「レコーディングは開催者の OneDrive に保存されます。」と書いています(チャネル会議の録画は、チームの SharePoint に保存されます)。販売事業者の NTTドコモビジネスも、FAQ「退職した人と今までTeamsで共有していたファイルはどうなりますか。」で、辞めた人がグループチャットに送ったファイルは、辞めた人の OneDrive に保存される、と案内しています。
その人が主催した会議は2社とも残り、会議室もふさがる
「消せば、その人の予定も消えるはず」と思うかもしれませんが、そうはなりません。
Googleは削除したユーザーの予定をカレンダーから削除するで、予定を主催した人のアカウントを停止または削除すると「その予定を管理する主催者がいなくなります。」としたうえで、「主催者がいなくても予定はユーザーのカレンダーに表示され、その時間に関連付けられたリソースは誰も予約できなくなります。」と書いています。予定を変えたり取り消したりできる主催者がいなくなり、ここでいうリソース(会議室や備品)も空きません。止めただけでも、定例会議が残り、会議室の予約もふさがったままになります。
Microsoft 365 も同じです。日本マイクロソフトの Exchange と Outlook のサポートチームは退職者が開催者となっている予定のキャンセル方法の紹介で、「Exchange Online の予定表上の会議アイテムは開催者のメールボックスからでないと全体のキャンセルや予定の変更ができません。」と書いています。Microsoft の「手順 4 – 元従業員のメールを別の従業員に転送するか、共有メールボックスに変換する」も、会議室を予約した会議は「会議がキャンセルされるまで予約できません。」としています。
違うのは、案内されている片付け方です。
- Google: 消す前に、これからの予定を別の人に譲れる。Googleはユーザーを削除する前に予定または予備カレンダーをキャンセルまたは譲渡するで、譲れるのは今後の予定(一部を除く)だと説明している。予定をキャンセルすれば会議室も空く
- Microsoft: 取り消して、作り直す。サポートチームは「基本的には会議をキャンセルして、別のアクティブなユーザーが開催者となって新規に会議を開催してください。」としている
Microsoft で辞めた人の会議を取り消せるのは、アカウントとメールボックスが残っているあいだです。止めたあとでも、消す前なら、管理者や業者が代わりに取り消せます。サポートチームの同じ記事は、消したあとなら、いったんユーザーを戻してから取り消す方法を案内し、戻せなくなっていた場合は「参加者側で個別に手動で削除する必要があります。」としています。
だから、辞めた人が主催していた会議は、消す前に片付けます。サポートチームの記事は、在職中のうちに本人に取り消してもらうよう注意を促しています。
Google では、カレンダーそのものにも変更が決まっています。対象は予備カレンダーで、その人のメインのカレンダー以外のカレンダーのことです(Google の「ユーザーを削除する前に予定または予備カレンダーをキャンセルまたは譲渡する」では、グループ カレンダーが対象に挙がっています)。
GoogleはAn update on secondary calendar lifecycle changes and a new API(Google Workspace Updates・英語)で、持ち主のアカウントを削除すると予備カレンダーも完全に削除される新しい決まりを、Workspace のアカウントでは2026年10月5日から適用するとしています。それまでは、持ち主のいない予備カレンダーを、編集と共有の管理の権限を持つ人に自動で割り当てる処理を続ける、とも書いています。
部署や会社の予定をまとめたカレンダーを辞めた人が作っていたなら、消す前に別の人に譲ってください。
辞めた人宛てに届く取引先のメールを、受け取り続けるには

辞めたあとも、取引先がその人のアドレスにメールを送ってくることがあります。
Google では、止めたアカウントにも、アーカイブしたアカウントにも、新しいメールは届きません。
Microsoft も、消したアカウントについて、元従業員を削除する – 概要で「元従業員のアカウントを削除すると、そのアカウントに送信されたメール メッセージが受信されなくなります。」と書いています。
受け取り続けるには、ひと手間が要ります。その形が、2社で逆です。
- Microsoft 365: アカウントを消さずに残し、共有メールボックスに変換する(または転送する)
- Google Workspace: アカウントを消したあと、そのアドレスを別の人に付け替える
Microsoft 365 は、消さずに共有メールボックスにしてもらう
Microsoft は「手順 4 – 元従業員のメールを別の従業員に転送するか、共有メールボックスに変換する」で、はっきり「メール転送または共有メールボックスを設定する場合は、元従業員のアカウントを削除しないでください。」と書いています。共有メールボックスも転送も、元のアカウントを土台にして動いているためです。Microsoft の「組織からユーザーを削除する」によると、転送や共有メールボックスを設定したアカウントを削除しようとすると、エラーになります。
共有メールボックスと転送では、料金が違います。
| 形 | 届いたメール | ライセンス |
|---|---|---|
| 共有メールボックスに変換 | これまでのメールと予定表も残り、複数の人が開ける | 50GB 未満なら外せる |
| 転送 | 新しいメールだけが、引き継ぐ人に送られる | 外せない |
共有メールボックスについて、「手順 4」は「共有メールボックスの作成は、メールボックスが 50 GB より小さい限り、ライセンスの支払いを行う必要がないため、コストの低い方法になります。」としています。転送については、Microsoft の「組織からユーザーを削除する」に「アカウントでメール転送を設定している場合は、ライセンスを削除できません。」とあります。転送を選ぶと、辞めた人のライセンスを払い続けることになります。
頼むときの注意が2つあります。
- ライセンスを外すのは、変換のあと。Microsoftはユーザー メールボックスを共有メールボックスに変換するで、変換する前にライセンスが付いている必要があり、先に外した場合は付け直してから変換する、と説明している
- 変換したら、本人が入れないようにする。同じページは、パスワードをリセットしないと、変換のあとも元のユーザー名とパスワードが使えると書き、退職する人のメールボックスを変換するときは、その人がログインできないようにする手順が別に要る、としている。案内の先は「元従業員を削除する – 概要」で、その最初の手順が、パスワードの変更とサインインのブロック(「止めると、データは残る」で説明)
外したライセンスは、それだけでは支払いが減りません。「Microsoft 365 管理センター内のユーザーのライセンスの割り当てまたは割り当て解除」は、使わないライセンスを別の人に回す予定がなければ、サブスクリプションからライセンスを削除することを検討するよう案内しています。つまり、共有メールボックスにしてライセンスを外し、そのライセンスの数を減らすところまでで、辞めた人のぶんの支払いが止まります(年間プランなどの制限は「消すと、移していないデータは消える」で説明しています)。
Google Workspace は、消したあとアドレスを別の人に付け替えてもらう
Google は「組織からユーザーを削除する」で、「ユーザーのアカウントが削除されてから 20 日後に、そのユーザーのメールアドレスが Google Workspace から削除されます。ただし、20 日間の期間が終了する前に、そのアドレスを別の管理対象ユーザーに再割り当てすることはできます。」と書いています。20日を待たずに、別の人に付け替えられるということです。
付け替え先は、引き継ぐ人のエイリアス(予備のメールアドレス)です。Googleは予備のメールアドレス(メール エイリアス)を追加または削除するで、使う場面の例に「従業員が退職したため、アカウントを削除した場合」を挙げ、以前のメールアドレスを今の担当者のエイリアスに足す方法を説明しています。エイリアスは、1人につき30個まで追加料金なしで足せます。
気をつけたいのは、止めてから付け替えるまでのあいだです。止めたアカウントには新しいメールが届かないうえ、消すまでは止めていても料金がかかります。取引先のメールを落としたくないなら、移す作業の段取りを先に決めて止めているあいだを短くし、消したらすぐ付け替えてもらいます。
Google は、届いたメールを別のアドレスに回す設定(リダイレクト)も、Gmail のメールを別のユーザーにリダイレクトまたは転送するで、ユーザーが組織を離れたときの使い方として挙げています。
なお、info@ のような共有メールアドレスで辞めた人にもメールが配られていたなら、そちらからも外します。外す場所は、共有メールアドレスの記事で型ごとに説明しています。
辞める人が、Google・Microsoftの管理者だったとき

止める・残す・消すは、どれも管理画面で管理者が操作します。小さな会社では、辞める人がその管理者だった、ということがあります。
Microsoft 365 では、契約して登録した人が、自動的に管理者になります。MicrosoftはMicrosoft 365 管理センターの管理者ロールについてで、「サブスクリプションを購入し、Microsoft オンライン サービスにサインアップしたユーザーは、自動的にグローバル管理者になります。」と書いています。
管理者は、自分では自分を外せない。辞める前に別の管理者を立てる
Google は「組織からユーザーを削除する」で、「自分の管理者アカウントを削除することはできません。他のユーザーに特権管理者権限を割り当ててから、そのユーザーにあなたのアカウントを削除してもらう必要があります。」と書いています。
Microsoft も、「Microsoft 365 管理センターの管理者ロールについて」で「グローバル管理者は、独自のグローバル管理者の割り当てを削除できません。」としています。管理者が1人もいない状態を防ぐためです。
つまり、辞める人が唯一の管理者なら、辞める前に、残る人を管理者にしてもらう必要があります。これが、片付けのいちばん最初の作業です。
IPA(情報処理推進機構)も中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインで、「ユーザーIDや管理者ID(管理者権限を保持するID)を漏れなく管理し」、発行から削除までの手続きを決めておくよう求めています。
辞めた管理者に連絡がつかないとき
もう辞めてしまい、連絡もつかない場合の道は、2社で違います。
Google Workspace では、社員が自分で管理者の権限を申し込めます。Googleは管理者としてのアクセスを復元するで、「Google Workspace アカウントまたは Cloud Identity アカウントの管理者に連絡できない場合は、ご自身のユーザー アカウントをドメインの所有権を証明する特権管理者ロールに昇格することができます。」と書いています。
そのためには、会社のドメイン(メールアドレスの @ より後ろ)の設定である DNS に、Google が指定する記録を足して、ドメインの持ち主だと証明します。申し込むと Google から今の管理者に連絡が行き、返信がなければ昇格されます。DNS を自分で触れなければ、ドメインの設定を任せている人や業者に頼みます。
Microsoft 365 では、マイクロソフトのサポートに問い合わせます。日本マイクロソフトの Azure Identity サポートチームはグローバル管理者ロールを持つユーザーでサインインできない!(2022年)で、管理者が1人だけの状態について「引き継ぎなくそのアカウントの管理者が退職するなどすると、だれもそのテナントを管理できなくなります。」と書いています。
同じ記事は、こうした問い合わせでは本人確認などのやり取りが多くなり、「回復にお時間を要すことが一般的です。」とし、回復できない場合もある、としています。本人確認には、事前に登録してある会社名や住所、連絡先を使い、「上記情報が登録されていない場合や正確でない場合は、テナントの回復ができなくなりますので十分ご注意ください。」とも書いています。いま管理者がいるうちに、管理者を2人以上にしておくのが確実です。
退職者のアカウントを片付ける順番と、業者に伝えること
辞めた人のアカウントの片付けを、順番に並べます。消すのは最後です。Microsoft で共有メールボックスにするアカウントは、消しません。
- STEP
辞める人が管理者なら、別の管理者を立てる
いつ: 在職中 誰が: 辞める本人(管理者)
管理者は自分では自分を外せません。残る人を管理者にしてもらってから、次へ進みます。できれば2人以上にします。Microsoft なら、登録してある会社名や住所、連絡先が正しいかも、このとき確かめてもらいます。
- STEP
辞める前に、主催している会議を片付けてもらう
いつ: 在職中 誰が: 辞める本人
主催している今後の会議を、Google なら別の人に譲るか取り消し、Microsoft なら取り消してもらいます。社内の予定をまとめたカレンダーを作っていたら、それも譲ってもらいます。
- STEP
止める
いつ: 辞めたあと 誰が: 管理者か業者
Google なら停止、Microsoft ならパスワードのリセットとサインインのブロックです。止めても、データはまだ残っています。
- STEP
メール・ファイル・会議を、引き継ぐ人に移す
いつ: 止めたあと、消す前 誰が: 管理者か業者
Google なら、ファイルは持ち主を替えるか共有ドライブへ、メールはデータ移行サービスで引き継ぐ人のアカウントへ移します。Microsoft なら、OneDrive のファイル(Teams の会議の録画を含む)を、管理者が SharePoint などへ移すか、引き継ぐ人に開く権限を付けて移してもらいます。残っている会議は、Google なら譲り、Microsoft なら取り消して作り直します。
- STEP
メールアドレスの扱いを決める
いつ: 消す前に決めておく 誰が: 会社で決めて、管理者か業者に頼む
Microsoft なら、アカウントを消さずに共有メールボックスへ変換してもらいます。Google なら、消したらすぐ、引き継ぐ人のエイリアスへ付け替えてもらいます。
- STEP
共有メールアドレスから外し、ほかのサービスの ID も書き出す
いつ: 止めたあと 誰が: 会社で書き出し、設定は管理者か業者
info@ などの共有メールアドレスから外します。会社で使っているほかのサービス(たとえば会計ソフトや、ネットショップの管理画面)にも、その人の ID があれば書き出して、止める先を決めます。IPA のガイドラインも「退職/任期満了時に情報や機器・ID・鍵等を回収し」と書いています。
- STEP
消す、または残す。料金まで確かめる
いつ: 移し終えて、引き継ぐ人が開けることを確かめたあと 誰が: 管理者か業者
Google なら消します(アーカイブで残すなら、アーカイブ ユーザーのサブスクリプションなどが要ります)。年間/定期プランでは、消してもライセンス数は減りません。Microsoft で共有メールボックスにしたアカウントは、消さずにライセンスを外し、使わないライセンスの数を減らすところまでが片付けです。共有メールボックスにしないアカウントは消します(削除の画面で、ライセンスをサブスクリプションから外す選択もできます。年間プランなどでは外せないことがあります)。
もう消してしまったら、戻せる期間のうちに戻して移す
移す前に消してしまっても、アカウントを戻せる期間のうちなら、いったん戻してから移せます。アカウントは、期間を過ぎるとどちらも戻せません。気づいたら、消した日を確かめて、すぐ管理者か業者に連絡してください。
Google は「組織からユーザーを削除する」で、「削除されたユーザーのデータを移行する前に、削除後 20 日以内にそのユーザーを復元する必要があります。」と書いています。ただし「最近削除したユーザーを復元する」によると、20日以内でも、そのユーザーが使っていたサービスやエディションのライセンスに空きがないと戻せません。年間/定期プランで、消した人のライセンスをもう別の人に割り当てていたら、戻すには別のライセンスが要ります。
Microsoft は「組織からユーザーを削除する」で、「アカウントを既に削除した場合は、30 日以内であれば、復元してメール データを移動し、アカウントを削除できます。」としています。取引先のメールを受け取り続けたいなら、「ユーザー メールボックスを共有メールボックスに変換する」が、削除したユーザーのアカウントを戻してから共有メールボックスに変換する手順も案内しています(変換したアカウントは消さずに残します)。
残った会議が会議室をふさいでいるときは、会議室のカレンダーから消します。Google は「削除したユーザーの予定をカレンダーから削除する」で、「その予定が表示されているリソースのカレンダーから予定を削除します」と案内しています。参加者のカレンダーに残った予定は、同じページが「すべての招待者のカレンダーから個々の予定を手動で削除します。」としています。
Microsoft では、日本マイクロソフトの Exchange と Outlook のサポートチームが「退職者が開催者となっている予定のキャンセル方法の紹介」で、会議室のようなメールボックスが参加者になっている予定は「権限を持つユーザーが代理で削除する必要があります」としています。会議ごと取り消すには、アカウントを戻せる期間のうちに戻す必要があります(「その人が主催した会議は2社とも残り、会議室もふさがる」で説明しました)。
業者に頼むときに伝えること
管理画面を触るのが業者なら、次のことをまとめて伝えると、行き違いが減ります。画面での呼び名も添えておくと確実です。
- 辞める人の名前と会社のアドレス、辞める日
- もう消してしまったなら、消した日と、戻したいもの(メール・ファイル・会議)
- その人が管理者か(Google の「特権管理者」、Microsoft の「グローバル管理者」)。そうなら、誰を代わりの管理者にするか。Microsoft なら、登録してある会社名や住所、連絡先が正しいか
- 止めるか、残すか、消すか(Google なら「停止」「アーカイブ」「削除」、Microsoft なら「サインインのブロック」「共有メールボックスへの変換」「ユーザーの削除」)
- メールとファイルを、誰に移すか
- その人宛てのメールを、誰が受け取るか(Microsoft なら共有メールボックスか転送か、Google ならどの人のエイリアスに付け替えるか)
- その人が主催した今後の会議と、社内で使っているカレンダーをどうするか
- 契約が年間か月ごとか、どこから買ったか。いつライセンスの数を減らせるか、減らすところまで頼むか
まとめ
この記事では、辞めた人の Google Workspace と Microsoft 365 のアカウントを、止める・残す・消すのどれで片付けるかと、その順番を説明しました。
- 止めてもデータは残る。ただし Google では、新しいメールは受け取れず、料金も同じだけかかる
- 残す形は、Google はアーカイブ(ライセンス料がかかる)、Microsoft はメールなら共有メールボックス(50GB 未満ならライセンスを外せる)。Microsoft でライセンスを外すだけだと、メールなどは30日後に消え、OneDrive も93日でアーカイブされる
- 消すと、移していないデータは消える。アカウントを戻せるのは Google 20日・Microsoft 30日まで。1人消しても、料金がすぐ減るとは限らない(Google は年間/定期プランなら減らない。Microsoft は、削除の画面でライセンスをサブスクリプションから外す選択をするか、ライセンスの数を減らすまで払い続ける)
- もう消してしまっても、アカウントを戻せる期間のうちなら、戻してから移せる(Google はライセンスの空きも要る)
- 持ち主が消えた共有ファイルは、ほかの社員も開けなくなる(Google は消した時点から。Microsoft は、保持期間が終わってごみ箱に移ると開けなくなる、と案内)。Google の共有ドライブ、Microsoft の SharePoint のファイルは移さなくてよい
- 辞めた人が主催した会議は、2社とも残り、会議室もふさがる。Google は譲れる。Microsoft は取り消して作り直すよう案内している。Google Workspace の予備カレンダーは、2026年10月5日から持ち主と一緒に消える
- 辞めた人宛てのメールを受け取り続けるなら、Microsoft はアカウントを消さずに共有メールボックスへ、Google は消したあとアドレスを別の人に付け替える
- 管理者は自分では自分を外せない。辞める人が唯一の管理者なら、辞める前に別の管理者を立てる
「消していい?」と聞かれたら、まず管理者を確かめ、会議とデータを移してから、最後に消してください(Microsoft で共有メールボックスにしたアカウントは、消さずに残します)。




