Wi-Fiルーターの設定画面を開くと、「WPA2-PSK(AES)」「WPA3-SAE」といった見慣れない文字が並んでいます。どれを選べばいいのか、迷ったことはありませんか?
総務省が2026年2月に行った調査(Webアンケート・複数回答)では、自宅のWi-Fiを暗号化していると答えた437人に方式を聞いたところ、最も多い答えは「わからない」で51%でした。自分の家が何になっているか、答えられない人がいちばん多いということです。
この記事では、Wi-Fiの暗号化について、いま選ぶべきものと、選んではいけないものを、公的な資料に沿って整理します。あわせて、設定を変えるとつながらなくなる機器があるという、変更前に知っておきたい話も書きます。
目次
Wi-Fiの暗号化とは?なぜ必要なの?

Wi-Fiは、目に見えない電波を使ってインターネットに接続する技術です。有線のLANケーブルと違い、電波は届く範囲にいる誰にでも受信できてしまいます。
そこで、電波に乗せる前に通信内容を読めない形に変換しておきます。これが暗号化です。受信されても、鍵を持っていなければ中身は分かりません。
暗号化がされていない、あるいは古い方式のままだと、次のような危険があります。
- 通信内容の盗聴
パスワードやクレジットカード情報、閲覧履歴などを盗み見られてしまう可能性があります。 - 不正な接続
あなたの回線を勝手に使われたり、家の中の機器に近づかれたりする可能性があります。
暗号化は、Wi-Fiルーターが最初から持っている機能です。新しく買う必要はありません。いま何が選ばれているかを確かめて、必要なら変える——やることはそれだけです。
「規格」と「暗号化方式」の2つがある

設定画面の表示が読みにくいのは、2つの別々のものが1つの欄に並んでいるからです。
- セキュリティ規格(WPA / WPA2 / WPA3)… 鍵の受け渡しや相手の確認まで含めた、全体の決まりごと
- 暗号化方式(TKIP / AES)… 通信内容を実際に変換する方法
「WPA2-PSK(AES)」という表示は、規格が WPA2、暗号化方式が AESという意味です。同じ規格でも暗号化方式を選べる場合があるので、2つセットで見る必要があります。
なお、ここでいう「規格」はWi-Fi 6 や Wi-Fi 7 といった通信の世代とは別のものです。同じ「規格」という言葉が2つの意味で使われているので、混乱しやすいところです。通信の世代のほうは次の記事で扱っています。
4つの規格を、いまの位置づけとあわせて並べると次のようになります。
| 規格 | 選べる暗号化方式 | いまの位置づけ |
|---|---|---|
| WPA3 | AES(CCMP)。鍵の受け渡しは SAE | 最新。Wi-Fi CERTIFIED の必須要件になっている |
| WPA2 | TKIP / AES | 現在主流。AES を選ぶ |
| WPA | TKIP / AES | 現在では推奨されない |
| WEP | 固定 | 使わない。短時間で解読する方法が知られている |
この位置づけは、総務省の「自宅Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル(令和7年2月版)」のコラムに沿ったものです。
WPA3 … 2018年に発表された最新のセキュリティ技術を用いた方式。対応するWi-Fiルーターの普及が進んでいる。
WPA … WEPの弱点を補強した方式だが、一部脆弱性があり、現在では推奨されない。
WEP … 暗号を短時間で解読する方法が知られており、現在では容易に解読されてしまう。
暗号化方式のほうも、同じ資料が「『WPA2』を利用する際に『TKIP』と『AES』が選択できる場合は『AES』を選択しましょう」と書いています。理由は、TKIP に脆弱性が発見されているためです。
なお、メーカーの解説には「WPA2とWPAは暗号化方式が同じであればセキュリティーレベルは同等」とするものもあります(後述のバッファローの解説)。暗号の強さだけを比べればそうなりますが、規格全体としては総務省が「WPAは現在では推奨されない」としているため、この記事は後者に従います。
設定画面によっては、AES が「AES(CCMP)」と表示されることがあります。CCMP は AES を使う仕組みの正式な名前で、別のものではありません。同じように、WPA3 の設定が「WPA3-SAE」と出ることがありますが、SAE は WPA3 で使われる鍵の受け渡し方法の名前です。
暗号化方式はどれを選べばいい?

結論から書きます。
WPA3(ルーターと、つなぐ機器の両方が対応しているなら)。対応していない機器があるなら WPA2 の AES。
WEP と WPA は選ばない。設定画面がいまそうなっていたら、変更を検討してください。
総務省の資料も、注記で「Wi-Fiルーターと接続機器がどちらもWPA3に対応している場合は、WPA3に設定しましょう」としています。両方が対応していることが条件になっている点が大事です。
「WPA3 は対応機器が少ないのでは」と思われるかもしれませんが、Wi-Fi Alliance(Wi-Fiの認証を行っている団体)は、公式サイトで次のように書いています。
WPA3 is mandatory for Wi-Fi CERTIFIED devices
(WPA3 は Wi-Fi CERTIFIED の機器にとって必須である)
ここで言っているのは「これから認証を受ける機器の要件」であって、世の中のすべての機器が対応しているという意味ではありません。家にある古い機器は対応していない可能性があります。普及の状況については、先の総務省の資料が WPA3 について「対応するWi-Fiルーターの普及が進んでいる」としています。
いま自分の家が何になっているかは、ルーターの管理画面(設定画面)で確かめられます。開き方は次の記事にまとめました。
暗号化方式を変える前に:つながらなくなる機器があります
ここが、設定を変える前にいちばん知っておいてほしいところです。
Wi-Fiは、ルーターとつなぐ機器の両方が対応している方式でしか接続できません。バッファローは公式の解説で、このことを次のように説明しています。
Wi-FiルーターとWi-Fiに接続する機器同士で暗号化方式が異なる場合は、お互いの機器が対応している方式でのみ接続が可能です。
つまり、ルーターを新しい方式に切り替えると、その方式に対応していない機器はつながらなくなります。Wi-Fi Alliance も、WPA3 のネットワークについて「Disallow outdated legacy protocols(古い方式を許可しない)」と書いています。
実際、先ほどの総務省の調査で、WEP や WPA を使っていると答えた人に理由を聞くと、17%が「古い端末が非対応」と答えています(最も多かったのは「課題を知らなかった」で42%)。
そこで、変える前に家の中でWi-Fiにつながっているものを数えておいてください。スマホとパソコンだけではありません。テレビ、プリンター、スマートスピーカー、ゲーム機、掃除機、体重計。数えると思ったより多いはずです。
- つなぎ直す機器を数える(数えた台数ぶん、パスワードを入れ直すことになります)
- いまの設定を控えておく(つながらない機器が出たときに、元へ戻せます)
- 時間に余裕のあるときにする(家族が使っている最中に変えない)
「その機器が WPA3 に対応しているか」を先に調べたい場合は、取扱説明書か、メーカーのサイトの仕様表を見ることになります。ただし、テレビや体重計のような機器では書かれていないこともあります。
調べきれない機器が1台でもあるなら、古い方式と新しい方式の両方を受け付ける設定を使う手があります。設定画面では「WPA2/WPA3」のように2つ並んだ表示になります。先ほどのバッファローの説明のとおり、機器はお互いが対応している方式でつながるので、この設定なら古い機器も残せます。
先ほどの「WPA3 のネットワークは古い方式を許可しない」は、WPA3 だけを選んだときの話です。2つ並んだ設定はそれとは別で、古い機器を残せる代わりに、その機器の通信は WPA2 のままになります。全部を新しくしたいなら、いずれ機器の側を入れ替えることになります。
接続先が2つ以上ある家は、片方だけ古いままになりがち
もう1つ、見落としやすい点があります。Wi-Fiルーターの中には接続先の名前(SSID)を2つ以上持つものがあり、そのうちの一部は古いゲーム機などのために用意されていて、そこだけ古い暗号化方式が設定されている場合があります。総務省の資料が注意を促している点です。
つまり、1つの接続先だけを直しても、隣に古い設定の接続先が残っていることがあるということです。設定画面では接続先ごとに方式が並んでいるので、使っていない接続先も含めて全部を見てください。名前が複数ある理由は次の記事にまとめています。
まとめ
この記事では、Wi-Fiの暗号化について、規格と暗号化方式の違い、いま選ぶべきもの、そして変更前に知っておきたいことを解説しました。
選ぶのは WPA3、対応していない機器があるなら WPA2 の AES。WEP と WPA は選びません。設定画面の表示が「WPA2-PSK(AES)」のように見えるのは、規格と暗号化方式が並んでいるからです。
変えるときは、つなぎ直す機器を先に数えてから。古い機器のために用意された接続先が残っていないかも、あわせて見ておいてください。変えた直後に特定の機器だけつながらなくなったときは、その機器が新しい方式に対応していない可能性がまず疑われます。
参考: Wi-Fiの安全を守るセキュリティー | バッファロー





