IOWN(アイオン)とは?3つの数字はどこまで実現したのかをわかりやすく解説

4 min 1,416 views

ニュースや広告で「IOWN(アイオン)」という言葉を見かけたことはありませんか。

「電力効率100倍」「遅延200分の1」といった数字と一緒に紹介されることが多く、すごそうだけれど、それがいつの話なのかが分からない——そう感じた方も多いと思います。

この記事では、IOWNが何をしようとしている構想なのかを説明したうえで、よく並ぶ3つの数字のうち、どれがすでに達成され、どれがこれからの目標なのかを、NTTの公表資料で分けて確認します。

IOWN(アイオン)とは?電気を光に置き換える構想

上下2本の帯の図。上の帯は3か所で「電気」と書かれた四角に分断され、下の帯は端から端まで途切れていない(IOWNは電気に戻すのをやめる)

IOWNは「Innovative Optical and Wireless Network」の略で、NTTが進めている次世代の通信基盤の構想です。

ひとことで言うと、これまで電気で行っていた処理を、できるところまで光のまま行おうという考え方です。

今までのインターネットは「電気」だった

意外に思われるかもしれませんが、光ファイバーはすでに広く使われています。家庭に引く光回線がまさにそれです。

ただし、光で運ばれてきた信号は、途中の機器でいったん電気に戻されます。NTTは機能と特性のページで、その理由をこう説明しています。宛先を確認するために、ネットワークの各ポイント(ルータ)で「一旦電気に戻す必要があります」。

電気に戻すたびに、時間と電力がかかります。しかも扱うデータが増えるほど、その負担は大きくなります。

この負担が、いま問題になっています。NTTは同じページで、電気は伝送する量が増えるほど「短区間の伝送でも多大なエネルギーを消費します」と説明し、扱うデータが増えた結果、コンピューター内部のデータ転送でさえ光に見直す価値が出てきたとしています。

APNの解説ページでは、データセンターの電力消費量の増加を、IOWNが解こうとしている課題の1つに挙げています。IOWNが注目されている背景には、この「増え続けるデータと電力」があります

IOWNはすべてを「光」にする

そこでIOWNは、通信の端から端までを一度も電気に戻さずに、光のまま届けることをめざしています。これが「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」と呼ばれる部分です。

NTTはAPNがめざすものを「圧倒的な低消費電力、高品質・大容量低遅延の伝送を実現」と書いています。あとで出てくる3つの数字は、この3点にそれぞれ対応しています。

さらに、コンピューターの内部にまで光を広げる「光電融合」という取り組みも進んでいます。

NTTの資料より

単に電気を光に置き換えるだけでは、IOWNの高い目標を実現できません。

NTT自身がこう書いているとおり、IOWNは「光ファイバーを使う」という話ではなく、ネットワークとコンピューターの作り方そのものを見直す構想です。だからこそ、実現には段階があります。

IOWNの3つの数字のうち、達成されたのは「遅延200分の1」だけ

遅延200分の1の箱だけが塗りつぶされて達成済みと書かれ、伝送容量125倍と電力効率100倍の箱は輪郭だけでこれからの目標と書かれた図

IOWNの紹介では、次の3つの数字がセットで出てきます。

  • 電力効率 100倍
  • 伝送容量 125倍
  • 遅延 200分の1

3つが並んでいると、どれも同じように実現済みだと読めてしまいます。しかしNTTの資料を読むと、この3つは達成の段階が違います

機能と特性のページには、次のように書かれています。

NTTの資料より

IOWN1.0ではAPN(All-Photonics Network)サービスを開始し、遅延の目標値1/200を達成しました。(中略)IOWN3.0で容量の目標値125倍を、IOWN4.0は電力効率の目標値100倍の実現をめざします。

整理すると、こうなります。

段階数字の目標状態
IOWN 1.0遅延 200分の1達成済み(2023年3月にAPNサービス開始)
IOWN 2.0(数字の目標なし)コンピューターの領域へ広げる段階
IOWN 3.0伝送容量 125倍これからの目標
IOWN 4.0電力効率 100倍これからの目標

つまり「機能と特性」のページに沿って整理すると、すでに手に入っているのは「遅延の小ささ」で、電力と容量の数字はこれから先の目標ということになります。

2.0 に数字が無いのは、この段階が性能の数値ではなく適用範囲を広げることを目標にしているからだと読めます。NTTは2.0について、数値ではなく「IOWN2.0はボード接続型の光電融合デバイスにより、IOWNはコンピュータの領域へ進展していきます」と書いています。

記事や広告を読むときの手がかり

3つの数字が並んでいたら、それが「もうできること」なのか「めざしていること」なのかを確かめる。
IOWNの場合、いま使えるのは遅延の部分で、残りはこれからです。

なお、この数字はネットワークやコンピューターについてのものです。スマートフォンのバッテリーが100倍長持ちする、という意味ではありません。

なぜ世界中がIOWNに注目しているのか?

中央のIOWNと書かれた円から8本の線が伸び、周囲の8つの箱につながっている図(決めているのはNTT1社ではない)

「NTTが言っているだけではないのか」と思われるかもしれません。しかしIOWNは、NTT1社の製品名ではなく、国際的な団体で仕様が検討されている構想です。

NTTは普及活動のページで、「IOWN Global ForumはIOWNの構想を実現することをめざして設立された国際団体です」と説明しています。同じページによれば、参加しているのはICT事業者だけでなく、それを使う側の企業・団体も多数とのことです。

読者にとって意味があるのは、1社だけの独自方式ではないので、対応する機器やサービスが将来増えやすいという点です。

ただし、参加している企業の数や顔ぶれは時期によって変わります。最新の状況は、上の普及活動のページから確認してください。

IOWNの実用化はどこまで来ているのか

「事業者」と「施設」の箱が太い線でつながり、離れた場所に「家庭」の家がつながらずに立っている図(いまつながっているのは大きな拠点どうし)

「構想」と聞くと机上の話に思えますが、遅延の部分はすでにサービスとして始まっています(上の表の IOWN 1.0)。

大阪・関西万博に向けた実証

分かりやすい例が、2025年の大阪・関西万博に向けて行われた実証です。NTTはIOWN×Perfume 特設サイトで、次のように書いています。

NTTの特設サイトより

2025年4月2日に、スペシャルパフォーマーPerfumeによる、IOWNを活用した世界初のパフォーマンスを実施&生配信しました。

離れた場所どうしをつないで1つの舞台にする、という使い方です。遅延の小ささが効く領域だということが分かります。

なお、この実験が行われたのは2025年4月2日で、万博の開幕(4月13日)より前です。会期中については、NTTが活用事例のページで、夢洲会場の光ファイバーネットワークとして「IOWN APN」の装置を提供したと書いています

私たちの家に届くのはこれから

一方で、家庭の回線がIOWNに置き換わる、という段階にはまだありません。いま使われているのは、事業者どうしや施設のあいだをつなぐ用途が中心です。

では、残りの2つはいつなのでしょうか。NTTは、オールフォトニクス・ネットワークの解説ページ(APN)で、3つの数字をまとめて「2030年の目標性能」と書いています。

ただし、この「2030年」も1つの書き方にすぎません。同じ「機能と特性」のページに載っているロードマップの図には、進展の目標としてIOWN3.0が2029年、IOWN4.0が2032年と書かれています。年についても、資料の中で書き方に幅があります

⚠ 数字そのものも同じです。「機能と特性」のページは遅延1/200を「IOWN1.0で達成した」としていますが、APNのページは3つとも2030年の目標性能として掲げています

これは矛盾しているのではなく、構想全体の到達点(2030年)と、いま提供されている1.0とを別々に書いていると読むのが自然です。実際、APNのページにも「2023年3月16日、APNサービスとして…提供を開始しました」と書かれています。

まとめ

IOWNは、電気で行っていた処理を光のまま行おうというNTTの構想です。

  • NTTによれば、よく並ぶ3つの数字のうち達成済みは「遅延200分の1」だけ(IOWN 1.0・2023年3月にサービス開始)
  • 伝送容量125倍は IOWN 3.0、電力効率100倍は IOWN 4.0 の目標。時期は「2030年の目標性能」とも、ロードマップの図では3.0が2029年・4.0が2032年とも書かれており、幅がある
  • この数字はネットワークやコンピューターについてのもので、手元の端末の電池の話ではない
  • 実証は進んでいるが、家庭の回線が置き換わる段階ではない

数字そのものより、それが「もうできること」なのか「めざしていること」なのかを見分けられるほうが、ニュースを読むときに役立ちます。

IOWNに限らず、新しい技術の紹介では実現済みのことと、めざしていることが同じ調子で並ぶことがよくあります。数字が並んでいたら、「それはいつの話か」を1つずつ確かめる。この記事で使った手がかりは、そのまま他の技術にも使えます。

いま実際に家庭で使われている光の技術については、次の記事で扱っています。

関連記事