あなたは毎日、知らないうちに大量のデータを残しています。
スマートフォンの位置情報、SNSの投稿、オンラインショッピングの購入履歴。こうしたものが集まった巨大なデータのかたまりが「ビッグデータ」です。
ニュースでは「活用が進んでいます」と語られることが多い言葉ですが、読んでいる側からすると気になるのは自分のデータも入っているのか、入っているとしたら何ができるのかのほうではないでしょうか。
この記事では、ビッグデータの意味と使われ方に加えて、自分のデータがどう扱われる決まりになっているかまでを整理します。
目次
ビッグデータとは?扱いきれないほど大きなデータの集まり

ビッグデータとは、従来のデータベース管理システムなどでは処理が難しいほど、巨大で複雑なデータの集まりのことです。
例えば、次のようなものが含まれます。
- インターネット上の検索履歴
- SNSの投稿
- オンラインショッピングの購入履歴
- スマートフォンの位置情報
- 交通機関の利用履歴
- 電気のメーターや工場のセンサーなど、機械が自動で送っているデータ
ビッグデータの3つのVとは
「大きい」といっても、量だけの話ではありません。ビッグデータは、頭文字をとって3つのVで説明されることが多くあります。
| 3つのV | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| Volume(量) | これまでの仕組みでは扱いきれない量 | 全国の利用者が毎日残す履歴 |
| Variety(多様性) | 種類がばらばらで、表に整理しにくい | 文章・画像・位置情報・数値が混ざる |
| Velocity(速さ) | 次々に生まれ、次々に処理される | 今この瞬間の混雑状況 |
この3つのうちどれか1つでも従来の方法で追いつかなくなると、扱いに専用の技術が要る——という説明のされ方をします。「ビッグデータ」という言葉は、そうした扱いにくさをまとめて指しているわけです。
なお、Vを5つ数える説明もあります(正確さや価値を足したもの)。数が資料によって違うので、「3つでなければならない」と考えなくて構いません。
なぜビッグデータが重要なのか?

ビッグデータが注目されるのは、1件ずつでは見えないことが、まとめると見えてくるからです。
1人が何時にどの駅を通ったかを見ても、分かることはほとんどありません。しかし何十万人分をまとめると、どの時間にどこが混むのかが分かります。
この「まとめると見えてくる」という性質は、便利さと引き換えに、あとで出てくる不安の元にもなっています。
ビッグデータの活用事例

身近なところで、どう使われているのかを見ていきます。
買い物のおすすめ
通販サイトで表示される「おすすめ」は、自分の閲覧・購入履歴だけで決まっているわけではありません。似た買い方をした大勢の履歴と照らし合わせて選ぶ仕組みが、広く使われています。
見覚えのない商品が出てくるのはそのためで、自分の行動が読まれているというより、自分と似た人の行動が反映されていると考えるほうが実態に近くなります。
道路の混雑と経路案内
地図アプリが渋滞を色で示せるのは、道路に付いたセンサーの情報に加えて、走行中の多数の端末から位置と速度が集まっているからです。「今どこが遅いか」は、そこを走っている人たち自身も作り出している情報です。
人の流れの把握
携帯電話の位置情報をもとにした人の流れのデータは、観光地の混雑対策や、災害時にどこへ人が集まっているかの把握などに使われています。
この種のデータの多くは、一人ひとりが分からない形に集計してから使われます。個人のデータを加工して使うときの決まりは、次の節で扱います。
クレジットカードの不正検知
ふだんの使い方から大きく外れた取引が起きたときに止められるのは、「その人にとって普通の使い方」を大量の履歴から割り出しているからです。海外での利用が急に弾かれるのは、この仕組みが働いたときです(カード会社の海外利用の設定など、別の理由で止まることもあります)。
自分のデータは入っているのか
ここまで挙げた例のうち、位置情報・購入履歴・利用履歴は、どれも個人から出たデータです。当然、自分のぶんも含まれます。
ただし、名前がついたまま自由にやり取りされているわけではありません。個人情報保護法には、個人が分からないように加工したデータを扱うための仕組みがあります。
個人情報保護委員会は、その「匿名加工情報」を次のように説明しています。
特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないようにした情報のことをいいます。
同じページは、この仕組みが導入された理由も説明しています。匿名加工情報は「一定のルールの下で、本人同意を得ることなく」データの取引や連携に使えるようにするために、法改正で新たに設けられたものです。
つまり、匿名加工情報については、一定のルールを守れば、一人ひとりに同意を取り直さずに使える決まりになっています。「知らないうちに使われている」と感じる背景には、この制度があります。
⚠ 加工したものが何でもこの扱いになるわけではありません。同じ法律には仮名加工情報という別の区分もあり、そちらは原則として第三者に提供できません。
ただし、事業者が好きにできるわけではありません。同じページは、加工が不十分な場合についても触れています。個人データを単にマスキングしただけで法令に定める適切な加工を行っていない場合は、匿名加工情報ではなく個人データのままだとしています。
匿名加工情報を作成した事業者は、作成後遅滞なく、ホームページ等を利用してそこに含まれる個人に関する情報の項目を公表しなければならないとされています。気になるサービスがあれば、そのサイトで公表されている項目を読むと、何が使われているのかを確かめられます。
⚠ ただし、統計を作るための加工や、社内の安全管理のための加工は公表の対象外です。公表が見つからない=何もしていない、ではありません。
自分のデータの利用は断れるのか
ここまで読むと、「では自分のぶんを外してもらえるのか」が気になります。
正直に書くと、法律には、匿名加工情報について本人が利用の停止を求める規定は置かれていません。本人の同意なく使えるようにするための制度で、そもそも一人ひとりを取り出せない形になっているからです。応じるかどうかは、事業者の自主的な判断ということになります。
できるのは、加工される前の段階で減らしておくことです。個人情報のまま扱われているデータについては、利用目的の通知や、本人からの請求の仕組みが別に定められています。使っているサービスの設定で、位置情報や履歴の取得を切れる場合もあります。
ビッグデータのメリットとデメリット
ここまでを、使う側と、データを出している側の両方から整理します。
- 1件ずつでは見えない傾向が分かる
- 混雑や不正など、起きる前に手を打てる場面がある
- 利用者は、特別な操作をしなくても案内の精度が上がる
- 自分のデータがどこで使われたかは、個別には見えない
- 加工が不十分だと、個人が分かってしまう余地が残る
- 集めて保管する側には、コストと漏えいの責任がかかる
まとめ
ビッグデータとは、これまでの仕組みでは扱いきれないほど巨大で複雑なデータの集まりのことです。
- 量(Volume)・多様性(Variety)・速さ(Velocity)の3つのVで説明されることが多い
- おすすめ表示・渋滞情報・不正検知など、すでに身の回りで動いている
- 法令の定めどおりに加工した「匿名加工情報」は、一定のルールの下で、本人の同意なく取引や連携に使える(マスキングしただけのものは含まれない)
- 作成した事業者には項目を公表する義務があるので、気になるサービスは自分で確かめられる(ただし統計や社内管理のための加工は公表の対象外)
ここまでの話は、データが集まったあとの話です。そのデータがどこから来てどこに置かれているのかは、次の記事で扱っています。





