「SaaS」「PaaS」「IaaS」――会議の資料やニュースで、こういう言葉を見かけたことはありませんか。
どれも末尾が「aaS」で終わっていて、これは「as a Service(アズ・ア・サービス)」の略です。
この記事では、ITやネットワークの知識がなくてもわかるように、この言い方が何を指しているのかを説明します。そのうえで、3つのうち自分がどれに関わる立場なのか――契約している側なのか、使っているだけなのか――を見分けるところまで扱います。
目次
「as a Service」は、買って持つ代わりに借りて使うという言い方

「as a Service」とは、これまで買って持っていたものを、必要なときに必要なぶんだけ借りて使う形にした、という言い方です。
身近な例で考えてみます。音楽を聴くには、以前はCDを買う必要がありました。いまは月々いくらの音楽配信サービスに入れば、買わなくても聴けます。
手元に残るもの(CD)は無くなりましたが、聴けるという結果は変わりません。この「持たずに、使えるようにする」の形をITの世界に当てはめたのが「as a Service」です。
ですから、この言葉そのものは難しい技術の名前ではありません。買い方・借り方の話だと思ってください。
SaaS・PaaS・IaaSの違いは「どこまで借りるか」

「aaS」で終わる言葉はいくつもありますが、よく出てくるのは次の3つです。この3つには、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)が2011年9月に出した7ページの文書「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145)という、よりどころになる定義があります。
そこに書かれた3つの説明を並べると、面白いことに気づきます。3つとも、同じ書き出しと、同じ一文を持っているのです。
利用者に提供されるのは、…することである。(原文: The capability provided to the consumer is to …)
利用者は、その下にあるクラウドの基盤を管理も制御もしない。(原文: The consumer does not manage or control the underlying cloud infrastructure …)
上の2つは、SaaS・PaaS・IaaS の3つすべてに出てきます。前者は各定義の書き出し、後者は説明の途中です。つまりどれを選んでも、土台そのものは自分では管理も制御もしません。3つの違いは、後者に続く「ただし、○○は自分で決められる」の部分にあります。
| 呼び方 | 借りるもの | 自分で決められること |
|---|---|---|
| SaaS | できあがったサービスをそのまま | 自分用の設定(限られた範囲) |
| PaaS | その上で自分のものを作るための土台 | 自分が配置したもの/(場合によっては)それを動かす環境の設定 |
| IaaS | サーバーそのものに近いところまで | OSから上(保存領域・自分が入れたもの) |
上から下へいくほど、自分で決められることが増えます。そのぶん自分で決めなければならないことも増えます。どちらが良いという話ではなく、引き受ける範囲の違いです。
SaaS(Software as a Service):できあがったソフトを、そのまま使う
SaaS(サース)は、ソフトウェアをインターネット経由で使う形です。GmailやGoogleドキュメント、Microsoft 365、Zoomなどがこれにあたります。
自分のパソコンにインストールする必要はなく、インターネットにつながっていればいつでも使えます。3つのうち、日ごろ目にする機会がいちばん多い形です。
PaaS(Platform as a Service):自分でソフトを作るための土台を借りる
PaaS(パース)は、アプリケーションを作って動かすための場所を借りる形です。サーバーやデータベースを自分で用意しなくても、開発そのものに集中できます。
作る人のための形なので、ソフトを自分で作らない立場なら、PaaSを自分で契約する場面はまず来ません。名前を見かけるのは、社内のシステムやベンダーの提案書の中です。
IaaS(Infrastructure as a Service):機械に近いところまで借りる
IaaS(イアース、アイアースとも読みます)は、サーバーや保存領域といった土台を借りる形です。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud が提供しています。
自社でサーバーを買って置く代わりに借りる、と考えるとわかりやすいと思います。買っていたものを借りる形に置き換えたのがIaaSです。
自分は3つのどれに関わっているのか
ここまでが言葉の説明です。ここからは、この記事でいちばんお伝えしたいことを書きます。
解説記事の多くは「どれを選ぶべきか」という書き方をしています。ただ、この言葉に出会う人が、いつも選ぶ立場にいるとは限りません。会社が契約したものを渡されて使っている、という方もいるはずです。
そこで、選び方ではなく立場で整理してみます。
1. 料金を払っているのは自分(自分の部署)か、会社か
自分で申し込んだなら、あなたが契約者です。会社が用意したものなら、契約者は会社で、あなたは使う人です。
2. 他の人のアカウントを作ったり止めたりできるか
できるなら、あなたは管理する側にいます。できないなら、使う側です。
3. ソフトを自分たちで作っているか
作っていないなら、PaaS と IaaS を自分で契約する場面はまず来ません。名前と、上の表の1行ぶんが分かっていれば足ります。
3つとも「使う側」だったなら、ふだんふれているのはSaaSです。PaaS と IaaS は、社内システムの話や、ベンダーの提案を聞く場面が来たときに、上の各記事を開けば足ります。
借りる形にしても、自分に残るものがある
「借りているのだから、あとは事業者がやってくれる」と考えたくなります。ですが、先ほどの定義を読み直すと、そうではないことがわかります。
いちばん多くを任せられるSaaSの説明にも、こう添えられています。
ただし、その利用者だけに関わる限られたアプリケーションの設定は、その例外となることがある。(原文: with the possible exception of limited user-specific application configuration settings)
「例外となることがある」という書き方ですから、必ず残ると約束されているわけではありません。それでもいちばん多くを任せられるSaaSでさえ、自分で決める部分が残る場合があると定義は書いています。パスワードを何にするか、どのファイルを誰に見せるか。実際の使い方では、こうしたことが自分の側に残ります。
事業者と利用者で何をどう分担するのかは、クラウド全体に共通する考え方です。分担の全体像(責任共有モデル)はこちらで扱っています。
まとめ
「as a Service」は、買って持つ代わりに借りて使う、という言い方でした。
- SaaS・PaaS・IaaS の違いは、借りる範囲の広さ
- NIST の定義では、3つとも「利用者は土台を管理も制御もしない」という一文を含む
- ソフトを自分たちで作らないなら、契約に関わるのはSaaSがほとんど
- SaaS でも、自分用の限られた設定は自分の側に残ることがある
3つのうち、ふだんふれているのはおそらくSaaSです。契約が終わったときにデータがどうなるかまで含めて、1本目のカードにまとめました。2本目は「そもそも身のまわりのどれがクラウドなのか」を見分ける記事です。
参考: The NIST Definition of Cloud Computing(SP 800-145)(アメリカ国立標準技術研究所・PDF・英語)





